この記事の結論
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通常の通勤時間は労働時間に含まれない

自宅から職場までの一般的な通勤時間は、労働者が自己の裁量で行うものであり、使用者の指揮命令下にあるとはいえないため、労基法上の労働時間には含まれません。

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業務命令による移動は、労働時間と評価される場合がある

営業職の顧客訪問のための移動や、出張先への往復移動など、使用者の指示による移動は、業務遂行の一環として指揮命令下にあると評価され、労働時間となる場合があります。

 830の記事で解説した労働時間の基本的な考え方を踏まえ、実務上判断に迷うことが多いのが「移動時間」の扱いです。通勤なのか、出張なのか、移動中に何をしているかによって、結論が変わってきます。

 会社側専門の弁護士の立場から、移動時間が労基法上の労働時間に当たるかを解説します。

01労働基準法における労働時間の定義

 移動時間が労働基準法上の「労働時間」に該当するかどうかは、移動の目的や状況によって異なります。労基法では労働時間を「労働者が使用者の指揮命令下に置かれている時間」と定義しており(772の記事で解説した三菱重工業長崎造船所事件等参照)、単純な移動時間が労働時間に該当するかは、ケースごとに判断する必要があります。

02労働時間に該当しないケース:通勤時間

 一般的な通勤、すなわち自宅から職場までの移動時間については、労働者が自己の裁量で行うものであり、労基法上の労働時間には含まれません。通勤は業務の一部とは見なされず、使用者の指揮命令下にあるわけでもないため、通常は給与や時間管理の対象外となります。

03労働時間に該当するケース:業務命令による移動

 一方で、使用者の指示による移動、たとえば営業職が顧客を訪問するための移動時間や、出張で目的地に向かう移動時間などは、労働時間と見なされる場合があります。これらの移動は、業務遂行の一環であり、使用者の指揮命令下にあると判断されるためです。たとえば、営業職が複数の顧客を訪問するために移動している場合、その移動時間は業務の一部と考えられます。

04移動中の活動内容による違い

 移動中の活動内容が、労働時間としての該当性に影響を与える場合もあります。移動中に上司から業務指示を受けてそれに対応する、または移動中に業務資料を作成している場合は、移動が単なる移動にとどまらず、労働時間と見なされる可能性が高くなります。

 一方で、移動中に読書や音楽鑑賞など、労働者が自由に時間を使える状態であれば、その移動時間は労働時間に含まれないと判断される可能性が高くなります。830の記事で解説した「指揮命令下に置かれているかどうか」という客観的な判断基準が、ここでも適用されるということです。

05出張に伴う移動時間の取扱い

 出張の場合、移動時間が労働時間に該当するかどうかは、さらに具体的な状況を考慮する必要があります。たとえば、出張先への往復移動は業務命令によるものであり、労働時間と見なされるのが一般的です。しかし、出張先での自由時間、たとえば業務開始前後に自分の裁量で過ごす時間については、労働時間に該当しません。この区別を明確にするためには、移動時間の性質と、移動中の活動内容をよく検討する必要があります。

06会社側が押さえておくべき視点

 労働時間に該当する移動時間を適切に管理するためには、タイムカードやアプリ等を活用して、正確な記録を残すことが重要です。また、就業規則に移動時間の取扱いを明記し、従業員に事前に説明しておくことで、認識のずれによるトラブルを防ぐことができます。

 特に出張などの場合には、移動時間と自由時間を明確に区別し、労働時間に該当する部分について、正確に記録することが大切です。831〜834の記事で解説した労働時間適正把握ガイドラインの考え方に沿って、移動時間についても客観的な記録に基づく管理を行うことにより、労働時間の過少申告や、不適切な時間管理による法的リスクを回避することができると考えます。

07よくある質問(FAQ)

Q. 自宅から会社までの通勤時間は、残業代の対象になりますか。

なりません。一般的な通勤時間は、労働者が自己の裁量で行うものであり、使用者の指揮命令下にあるとはいえないため、労働時間には含まれません。

Q. 営業職が客先を回る際の移動時間は、労働時間になりますか。

なる場合が多いです。使用者の指示による顧客訪問のための移動は、業務遂行の一環として指揮命令下にあると評価され、労働時間と見なされることが一般的です。

Q. 出張先で業務開始前に自由に過ごしている時間も、労働時間になりますか。

なりません。出張先への往復移動自体は労働時間となるのが一般的ですが、業務開始前後の自分の裁量で過ごす自由時間は、労働時間に該当しません。

経営上のポイント 移動時間が労働時間に該当するかは、使用者の指揮命令下に置かれているかで判断されます。自宅から職場までの一般的な通勤時間は労働者の裁量による移動であり労働時間に含まれませんが、営業職の顧客訪問や出張先への往復移動など、業務命令による移動は労働時間と評価される場合があります。移動中に業務指示への対応や資料作成をしている場合は労働時間性が強まり、読書等自由に過ごしている場合は労働時間性が弱まります。出張先での業務開始前後の自由時間は労働時間に該当しません。会社側としては、移動時間の取扱いを就業規則に明記し、タイムカードやアプリ等で正確に記録する体制を整えることが、残業代トラブルの予防につながります。移動時間の取扱いについては、会社側・使用者側専門の弁護士にご相談ください。具体的な事情に応じて、実務で使える方針をアドバイスします。
監修者 弁護士 藤田 進太郎

監修者

弁護士法人四谷麹町法律事務所 代表弁護士 藤田 進太郎

東京大学法学部卒業。2003年弁護士登録。日本弁護士連合会会員労働法制委員会委員・事務局次長・最高裁行政局との労働審判制度に関する協議会協議員、第一東京弁護士会労働法制委員会委員・研修部会副部会長、経営法曹会議会員・第112回経団連労働法フォーラム報告担当者、労働審判員連絡協議会特別会員、日本労働法学会会員、東京麹町ロータリークラブ会員・2023-24年度幹事。
講演・著作 / 「会社経営者のための問題社員対応講座」(YouTube)

日本全国各地の会社経営者の皆様へ

弁護士法人四谷麹町法律事務所代表弁護士の藤田進太郎です。私は、労働問題のストレスから会社経営者の皆様を解放したいという強い思いを持っており、日本全国各地の会社経営者のために、問題社員、退職勧奨、労働審判、残業代トラブルなどの労働問題の予防解決に当たっています。移動時間の取扱いでお困りでしたら、弁護士法人四谷麹町法律事務所にご相談ください。事務所会議室での経営労働相談のほか、ZoomやTeamsでのオンライン経営労働相談を実施しています。

最終更新日:2026年7月13日


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