この記事の結論
1

計画年休は「年5日の消化義務」を果たす有力な手段

労使協定に基づき計画的に付与した有給休暇は、法的に義務付けられた「年5日の時季指定義務」に充当できます。

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労使協定の締結と就業規則の整備が前提条件

導入には、過半数労働組合(または過半数代表者)との書面による労使協定と、就業規則への規定が不可欠です。手続を欠くと無効となるリスクがあります。

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労働者に残すべき「5日の留保」に注意

すべての有給休暇を計画的付与で指定することはできません。労働者が個人的な事情で使えるよう、最低5日は自由に取得できる枠として残す必要があります。

01計画年休制度(計画的付与)とは

 計画年休制度(正式には「年次有給休暇の計画的付与制度」)とは、労働基準法第39条第6項に基づき、年次有給休暇のうち「5日を超える部分」について、労使協定を締結することで、会社が計画的に休暇日を指定できる制度です。

 本来、有給休暇の取得日は労働者が指定するもの(時季指定権)です。しかし、この制度を導入することで、会社主導で休暇日を確定させることが可能になります。適法に導入された場合、たとえ個別の労働者が反対したとしても、その日は法的にも年次有給休暇として扱われます。「従業員がなかなか有給を取ってくれない」「未消化分の管理が煩雑である」といった課題への対応策として、有効な制度です。

02導入に不可欠な労使協定と手続

 計画年休を導入するためには、次の2点が必要です。

計画年休の導入に必要な手続

① 就業規則への規定
「労使協定の定めに従って計画的に付与することがある」旨の条文を設ける必要があります。

② 労使協定の締結
事業場の過半数労働組合、または過半数代表者と、書面による協定を締結しなければなりません。協定には、対象となる労働者の範囲、付与の対象となる有給休暇の日数、具体的な付与方法などを明記します。

 ここで特に注意したいのは、過半数代表者の選出プロセスの適正性です。過半数代表者は、管理監督者でないこと、計画年休の労使協定を締結する者を選出することを明らかにして、投票・挙手等の民主的な方法で選ばれる必要があります。選出方法が不適切であれば労使協定自体が無効となり、計画年休そのものが法的根拠を失うおそれがあるため、細心の注意が必要です。なお、この労使協定は、就業規則と異なり、労働基準監督署への届出は要件とはされていませんが、協定書は適切に作成・保管しておく必要があります。

03計画的付与の3つの主要方式

 事業の特性に合わせて、実務上は主に次の3つの方式で運用されます。

① 事業場全体による一斉付与方式

製造ラインの停止時や、夏季休暇・年末年始に合わせて全社一斉に休む方式です。最も管理が簡便で、製造業などに適しています。

② グループ別の交替制付与方式

部署やチームごとに交替で休暇日を設定する方式です。営業を継続する必要があるサービス業などに適しています。

③ 計画表による個人別付与方式

年度初めに個別の休暇計画表を作成・提出させる方式です。個々の労働者の希望を尊重しつつ、取得の偏りを防ぐことができます。

 自社の業種・業務の繁閑や、休暇取得の実態に合わせて、適した方式を選択することが重要です。

04「5日の留保」ルールと年5日消化義務

 計画年休制度で最も注意しなければならないのが、労働者の自由枠(5日)の確保です。労働基準法は、計画的付与の対象とできるのは「5日を超える部分」に限り、急な病気や個人的な用事のために使える有給休暇を最低5日は労働者の自由に委ねるよう定めています。

5日の自由枠を超えて指定はできない

例えば、有給休暇の残日数が10日の従業員に対して、計画年休として指定できるのは、5日を超える部分、すなわち最大5日までです。有給休暇が6日しかない新入社員などの場合、計画年休として指定できるのは1日(6日のうち5日を除いた部分)にとどまります。このような従業員に一律で5日の計画年休を強制することはできません。この場合、別途、特別休暇(有給)を与えるなどの配慮が必要になることもあり、実務上の難しさがあります。

 一方で、この計画年休制度は、2019年4月から義務化された「年5日の確実な取得」と組み合わせると、有効なコンプライアンス対策になります。年10日以上の有給休暇が付与される労働者に対し、年5日の確実な取得が義務化されていますが、計画年休制度を導入し、あらかじめ労使協定で5日間の休暇日を決めておけば、それだけで会社としての年5日の時季指定義務を満たすことが可能になります(年5日消化義務と繰り越しの関係は555番参照)。「従業員がなかなか有給を取ってくれない」という会社にとって、計画年休は、コンプライアンスの遵守と計画的な休暇取得の促進を両立させる有効な手段といえます。適正な労使協定の作成や制度設計については、使用者側弁護士・社会保険労務士に相談することをお勧めします。

経営上のポイント 計画年休制度は、労使協定に基づき会社が有給休暇の取得日を計画的に指定できる制度で、年5日の確実な取得義務にも充当できます。導入には、就業規則への規定と、過半数代表者等との書面による労使協定が必要で、代表者の選出が不適切だと無効になります。計画的付与の対象は「5日を超える部分」に限られ、最低5日は労働者の自由枠として残す必要があります。制度設計や労使協定の作成は弁護士・社会保険労務士に相談することをお勧めします。アドバイスします。
SUPERVISOR 弁護士 藤田 進太郎

監修者

弁護士法人四谷麹町法律事務所 代表弁護士 藤田 進太郎

東京大学法学部卒業。2003年弁護士登録。日本弁護士連合会会員労働法制委員会委員・事務局次長・最高裁行政局との労働審判制度に関する協議会協議員、第一東京弁護士会労働法制委員会委員・研修部会副部会長、経営法曹会議会員・第112回経団連労働法フォーラム報告担当者、労働審判員連絡協議会特別会員、日本労働法学会会員、東京麹町ロータリークラブ会員・2023-24年度幹事。
講演・著作 / 「会社経営者のための問題社員対応講座」(YouTube)

日本全国各地の会社経営者の皆様へ

弁護士法人四谷麹町法律事務所代表弁護士の藤田進太郎です。私は、労働問題のストレスから会社経営者の皆様を解放したいという強い思いを持っており、日本全国各地の会社経営者のために、問題社員、労働審判、残業代トラブルなどの労働問題の予防解決に当たっています。問題社員、労働審判、残業代トラブルでお悩みでしたら、弁護士法人四谷麹町法律事務所にご相談ください。事務所会議室での経営労働相談のほか、ZoomやTeamsでのオンライン経営労働相談を実施しています。

Q&Aよくある質問

Q1. 労使協定を結べば、計画年休に反対する社員にも休暇日を強制できますか。

A. 適法に労使協定を締結し、就業規則の整備など必要な手続を踏んでいれば、個別の労働者が反対しても、計画的付与で指定した日は年次有給休暇として扱われます。これが計画年休制度の効果です。ただし、対象とできるのは「5日を超える部分」に限られ、自由枠の5日まで奪うことはできません。また、労使協定が無効であれば強制力も失われますので、過半数代表者の選出を含む手続の適正性が前提となります。

Q2. 計画年休を5日設定すれば、年5日の取得義務は果たしたことになりますか。

A. 計画年休制度により取得させた日数は、年5日の確実な取得義務の日数に充当できます。したがって、労使協定で5日分の計画年休を設定し、実際に取得させれば、その分について会社の時季指定義務を果たしたことになります。なお、労働者が自ら取得した日数や、会社が個別に時季指定した日数も、年5日に算入されます。重複して5日を取得させる必要はなく、合計で年5日が確保されていれば足ります。

Q3. 入社直後で有給休暇が10日未満の社員も、計画年休の対象にできますか。

A. 計画的付与の対象とできるのは「5日を超える部分」に限られます。有給休暇が5日以下の社員には、計画年休を設定する余地がありません。例えば付与日数が6日の社員では、計画年休に充てられるのは1日のみです。一斉付与方式を採る場合、有給休暇が足りない社員については、特別休暇(有給)を与えるなどの配慮が必要になることがあります。対象者の付与日数を確認したうえで制度設計することが重要です。

最終更新日:2026年3月1日


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