この記事の結論
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3年契約でも1年半経過後の退職希望は原則として拒絶できない

労基法137条により、1年を超える有期契約では契約開始から1年経過後はいつでも退職申出が可能です。1年半が経過している本件は、法的に退職拒絶が難しい状況です。

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会社が優先すべきは、退職拒絶への固執ではなく引継ぎの確保

適用除外(特定事業完了型・高度専門職・60歳以上)に該当しない限り、退職拒絶は解雇認定リスクと紛争拡大を招きます。退職届の受理・退職日の確定・引継ぎ要請を迅速に進めることが経営判断として重要です。

01問題の所在(3年契約でも途中退職は許されるのか)

 「契約期間を3年と定めた以上、期間途中に辞めることはできないはずだ」。そう考える会社経営者は少なくありません。確かに、有期労働契約は期間満了まで就労を継続することを前提として締結されるものであり、民法628条の原則によれば、「やむを得ない事由」がなければ期間中の一方的解除は認められません。しかし、労働基準法137条が適用される局面では、この原則は大きく修正されます。

 3年契約で勤務開始から1年半が経過している本件では、原則として労基法137条の適用が問題になります。以下、有期労働契約の途中退職をめぐる法律論と、実務対応・リスク管理の要点を解説します。

02労基法137条の内容(1年経過後はいつでも退職可能)

 労働基準法137条は、契約期間が1年を超える有期労働契約(一定の事業の完了に必要な期間を定めるものを除く)について、契約締結日から1年を経過した日以後は退職できると規定しています。3年契約であっても、1年が経過していれば、社員は「やむを得ない事由」を示すことなく退職を申し出ることができます。

 本件では勤務開始から1年半が経過しているため、原則として労基法137条の適用を受け、会社側から退職を拒絶することは法的に難しい状況にあります。実務上は、1年を超える有期契約においては1年経過後にいつでも退職の申出が可能という運用がなされており、「退職を制限できる」という主張は認められません。

よくある誤解・危険な対応

 「3年契約なのだから退職を拒絶できるはずだ」→ 誤りです。1年経過後は労基法137条により、退職の申出が可能です。

 「退職届を受け取らなければ退職を阻止できる」→ 危険です。退職届の不受理は退職の効力を止めず、解雇認定のリスクと紛争の拡大を招きます。

 「損害賠償で脅せば退職を思いとどまらせられる」→ 実務上は難しいです。脅迫的な言動は、かえって会社側のリスクになります。

03適用除外となるケース

 労基法137条の適用除外に該当する場合は、民法628条の枠組みに戻り、「やむを得ない事由」がなければ途中退職は原則として認められません。適用除外の主な類型は、次の3点です。

①一定の事業の完了に必要な期間を定めた契約
特定プロジェクトの完了型の契約は、適用除外となります。

②高度専門職
年収1,075万円以上等の基準を満たす者も、適用除外となります。

③60歳以上の労働者
60歳以上の労働者との契約も、適用除外となります。

 これらに該当しない通常の契約社員については、1年経過後は退職自由が認められることを前提に対応を検討する必要があります。自社の有期契約社員が適用除外に該当するかどうかを確認したい場合は、会社側専門の弁護士に相談することをお勧めします。

04退職拒絶のリスクと現実的対応

 退職を不当に拒絶した場合、社員が出社しなくなった際に解雇と認定されるリスクがあります。また、就労の強制が社員の自由を侵害するとして、損害賠償請求や労働審判に発展する可能性もあります。退職届の不受理も法的には無意味であり、退職の効力発生を止めることにはなりません。

 現実的な対応としては、①退職届を受け取り退職日を確定させる、②引継ぎを書面で要請する、③後任者の手配・業務の再配分を早急に進める、④引継ぎ不十分による損害の記録・証拠化を進める、という4点を速やかに実施することが重要です。対応に迷う場面では、会社側専門の弁護士に早期に相談することが得策です。感情的に食い止めようとするより、実務を前に進める方が結果的に会社の損失を抑えます。

05再発防止のための有期労働契約設計

 今後同様の問題を防ぐためには、有期労働契約の設計段階から法的リスクを意識することが重要です。1年超の有期契約を締結する場合は、引継ぎ条項・守秘義務条項・競業避止条項等を契約書に盛り込むことが有効です。高度専門職等の適用除外要件を満たす可能性がある場合は、その要件を充足した契約設計を会社側専門の弁護士に依頼することで、退職制限の実効性を確保することができます。

 会社側専門の弁護士への相談を通じて、自社の実態に合った契約設計・就業規則の整備を進めることが、長期的な労務リスク管理の基本になります。早い段階での相談が、次回以降の有期契約リスクを大きく下げます。

06よくある質問(FAQ)

Q. 3年契約の契約社員が1年半で退職したいと言ってきました。会社は拒否できますか。

原則として拒否は難しいです。労働基準法137条により、1年を超える有期労働契約では契約開始から1年経過後はいつでも退職の申出が可能とされています。本件では1年半が経過しているため、会社側から退職を拒絶することは法的に難しい状況です。退職を認めたうえで、引継ぎの確保を優先することをお勧めします。

Q. 退職届を受け取らなければ退職を阻止できますか。

受け取り拒否は法的に無効であり、退職の効力発生を止めることにはなりません。社員が出社しなくなった場合、会社側が解雇したと認定されるリスクが生じます。退職届は受け取り、退職日の確定と引継ぎの確保に注力することが適切な対応です。

Q. 引継ぎをせずに退職した場合、損害賠償を請求できますか。

請求自体は可能ですが、認められるためには、引継ぎ不十分が退職者の義務違反に当たること、会社に具体的な損害が生じていること、その損害額を立証できることが必要であり、要件は厳格です。実務的には、引継ぎの書面による要請と業務上の損害の記録・証拠化を、退職前から進めておくことが重要です。

Q. 今後、同様のリスクを防ぐために有期労働契約の設計で注意すべき点は何ですか。

1年超の有期労働契約を締結する場合、引継ぎ条項・守秘義務条項・競業避止条項を契約書に盛り込むことが有効です。また、高度専門職等の適用除外要件を満たす場合は、要件を充足した契約設計を会社側専門の弁護士に依頼することで、退職制限の実効性を確保できます。

経営上のポイント 3年契約の契約社員が1年半で退職を希望した場合、原則として退職を拒絶することはできません。優先すべきは、①退職届の受理と退職日の確定、②引継ぎの書面による要請、③後任者手配・業務再配分の迅速な実施、④引継ぎ不十分による損害の記録・証拠化、⑤弁護士への相談による今後の契約設計の見直し、という順序です。退職拒絶への固執は、法的リスクと紛争の拡大を招くだけです。現実的な対応への切り替えが、経営判断として重要です。有期労働契約の途中退職への対応や契約設計の見直しについて、早めに会社側専門の弁護士にご相談ください。具体的な事情に応じて、実務で使える方針をアドバイスします。
監修者 弁護士 藤田 進太郎

監修者

弁護士法人四谷麹町法律事務所 代表弁護士 藤田 進太郎

東京大学法学部卒業。2003年弁護士登録。日本弁護士連合会会員労働法制委員会委員・事務局次長・最高裁行政局との労働審判制度に関する協議会協議員、第一東京弁護士会労働法制委員会委員・研修部会副部会長、経営法曹会議会員・第112回経団連労働法フォーラム報告担当者、労働審判員連絡協議会特別会員、日本労働法学会会員、東京麹町ロータリークラブ会員・2023-24年度幹事。
講演・著作 / 「会社経営者のための問題社員対応講座」(YouTube)

日本全国各地の会社経営者の皆様へ

弁護士法人四谷麹町法律事務所代表弁護士の藤田進太郎です。私は、労働問題のストレスから会社経営者の皆様を解放したいという強い思いを持っており、日本全国各地の会社経営者のために、問題社員、退職勧奨、労働審判、残業代トラブルなどの労働問題の予防解決に当たっています。有期労働契約の途中退職・引継ぎ対応・契約設計の見直しでお悩みでしたら、弁護士法人四谷麹町法律事務所にご相談ください。事務所会議室での経営労働相談のほか、ZoomやTeamsでのオンライン経営労働相談を実施しています。

最終更新日:2026年7月1日


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