この記事の結論
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労働契約は合意により成立するのが原則で、会社が承諾しない限り契約は成立しない

拒絶された高年齢者は、原則として損害賠償請求をする余地があるにとどまります(労契法6条)。

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津田電気計器事件最高裁判決は、基準を満たす労働者の拒絶に客観的合理的理由がなければ雇用関係の存続を認めた

損害賠償請求のリスクに加え、継続雇用契約の成立が認められ賃金請求を受けるリスクがあります。

 継続雇用基準を満たす高年齢者の拒絶リスクとは、就業規則等で定めた継続雇用基準を満たしているにもかかわらず会社が客観的合理的理由なく継続雇用を拒否した場合に、津田電気計器事件最高裁判決により再雇用されたのと同様の雇用関係の存続が認められ得るという法的リスクをいいます。「就業規則に定めた継続雇用基準を満たしていない社員を再雇用しなかったが、後になって基準を満たしていたことが判明した」というケースは、会社にとって重大な法的リスクを伴います。

 本ページでは、継続雇用基準を満たす高年齢者を拒絶した場合の法的リスクについて、津田電気計器事件最高裁判決を踏まえて、会社側専門の弁護士が解説します。

01労働契約成立の原則|承諾がなければ契約は成立しない

 結論:労働契約は、労働者が使用者に使用されて労働し、使用者がこれに対して賃金を支払うことについて労使双方が合意することによって成立するものであるため(労契法6条)、会社が再雇用を承諾していない以上、労働契約は成立せず、再雇用を拒絶された高年齢者は会社に対し損害賠償請求をする余地があるにとどまるのが原則です。

 労働契約法6条は「労働契約は、労働者が使用者に使用されて労働し、使用者がこれに対して賃金を支払うことについて、労働者及び使用者が合意することによって成立する」と規定しています。したがって、会社が再雇用の承諾をしなければ、労働契約は理論上成立しないというのが原則的な考え方です。

02津田電気計器事件最高裁判決の判示内容

 結論:津田電気計器事件最高裁判決(平成24年11月29日第一小法廷判決)は、継続雇用基準を満たす労働者の継続雇用を客観的合理的理由なく拒否したことについて、他にやむを得ないとみるべき特段の事情がない限り、嘱託雇用契約の終了後も継続雇用規程に基づき再雇用されたのと同様の雇用関係が存続しているとみるのが相当であると判示しました。同判決は、定年に達した後引き続き1年間の嘱託雇用契約により雇用されていた労働者の継続雇用に関し、東芝柳町工場事件最高裁判決・日立メディコ事件最高裁判決を参照判例として引用しています。

 同判決は、「本件規程所定の継続雇用基準を満たすものであったから、被上告人において嘱託雇用契約の終了後も雇用が継続されるものと期待することには合理的な理由があると認められる一方、上告人において被上告人につき上記の継続雇用基準を満たしていないものとして本件規程に基づく再雇用をすることなく嘱託雇用契約の終期の到来により被上告人の雇用が終了したものとすることは、他にこれをやむを得ないものとみるべき特段の事情もうかがわれない以上、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められないものといわざるを得ない」と判示しました。その上で、「上告人と被上告人との間に、嘱託雇用契約の終了後も本件規程に基づき再雇用されたのと同様の雇用関係が存続しているものとみるのが相当であり、その期限や賃金、労働時間等の労働条件については本件規程の定めに従うことになる」としています。

03判決の射程|無期契約労働者にも及ぶ可能性

 結論:津田電気計器事件は定年退職後の有期契約労働者(嘱託)が継続雇用されなかった事案ですが、無期契約労働者を継続雇用しなかった事案についても、この判決の射程が及ぶ可能性があります。同事件は雇止め法理(東芝柳町工場事件・日立メディコ事件)を参照して理論構成しているため、有期契約の更新拒絶という構造に親和的な判断枠組みではあります。

 しかし、無期契約労働者の定年後の継続雇用拒絶についても、同様の趣旨(継続雇用基準を満たしているにもかかわらず拒絶することの不当性)が及ぶ可能性は否定できません。理論的には相当無理をして結論を導いているようなところがありますが、実務上はこの判決の射程を広く捉えて対応することが安全です。

04実務上の教訓|運用の誤りを正す必要性

 結論:就業規則の継続雇用基準を満たしているにもかかわらず継続雇用を拒否することは、再雇用制度の誤った運用であり、そのような事態が生じないよう、継続雇用の可否判断プロセスを見直す必要があります。継続雇用基準を満たしているにもかかわらず、継続雇用を拒絶した場合、損害賠償請求を受けるリスクのほか、継続雇用契約の成立が認められ、賃金請求が認められてしまうリスクがあることに留意する必要があります。

 継続雇用の可否判断・就業規則の継続雇用規程の整備については、弁護士法人四谷麹町法律事務所にご相談ください。会社側専門の弁護士として、会社側の立場から実務的なアドバイスを提供しています。

継続雇用可否判断の比較|適切な対応/NGな対応

○ 適切な対応 ✕ NGな対応(賃金請求等のリスク)
継続雇用基準の充足を客観的に確認した上で判断する 基準を満たしているのに恣意的な理由で拒否する
拒否の「やむを得ない特段の事情」を客観的証拠で示せるようにする 根拠のない主観的判断のみで拒否を強行する
継続雇用の運用状況を定期的に点検する 運用の誤りに気づかないまま放置する
拒否を検討する場合は事前に弁護士へ相談する 相談なく独自の判断で拒否を実行する

05よくある質問(FAQ)

Q. 津田電気計器事件は、どのような事案でしたか。

定年に達した後、引き続き1年間の嘱託雇用契約により雇用されていた労働者について、会社が定めた継続雇用規程所定の基準を満たしていたにもかかわらず、会社が継続雇用しなかった事案です。最高裁は、他にやむを得ないとみるべき特段の事情がない限り、規程に基づき再雇用されたのと同様の雇用関係が存続しているとみるのが相当であると判断しました。

Q. 賃金請求を受けるリスクとは、具体的にどのようなものですか。

継続雇用契約の存在が認められた場合、会社は当該労働者に対して、継続雇用規程所定の労働条件に従った賃金を、拒否時点から遡って支払う義務を負う可能性があります。継続雇用を拒否してから紛争が長期化するほど、未払い賃金の額も増大するリスクがあります。

Q. 継続雇用基準を満たしているかどうかの判断はどのように行うべきですか。

就業規則・継続雇用規程に定めた基準の内容を明確にした上で、健康状態・勤務成績・懲戒歴等の客観的な事実に基づいて判断することが重要です。判断に迷う場合や、拒否を検討する場合は、必ず事前に弁護士に相談し、リスクを評価した上で対応することをお勧めします。

経営上のポイント 労働契約は合意により成立するのが原則ですが、津田電気計器事件最高裁判決は、継続雇用基準を満たす労働者の拒絶に客観的合理的理由がなければ、再雇用されたのと同様の雇用関係が存続するとしています。損害賠償請求のリスクに加え、賃金請求を受けるリスクがあるため、継続雇用の運用を誤りなく行うことが重要です。定年後再雇用をめぐる近時の紛争傾向とあわせて、継続雇用の可否判断について会社側専門の弁護士にご相談ください。具体的な事情に応じて、実務で使える方針をアドバイスします。
監修者 弁護士 藤田 進太郎

弁護士法人四谷麹町法律事務所 代表弁護士 藤田 進太郎

東京大学法学部卒業。2003年弁護士登録。日本弁護士連合会会員労働法制委員会委員・事務局次長・最高裁行政局との労働審判制度に関する協議会協議員、第一東京弁護士会労働法制委員会委員・研修部会副部会長、経営法曹会議会員・第112回経団連労働法フォーラム報告担当者、労働審判員連絡協議会特別会員、日本労働法学会会員、東京麹町ロータリークラブ会員・2023-24年度幹事。
講演・著作 / 「会社経営者のための問題社員対応講座」(YouTube)

日本全国各地の会社経営者の皆様へ

弁護士法人四谷麹町法律事務所代表弁護士の藤田進太郎です。私は、労働問題のストレスから会社経営者の皆様を解放したいという強い思いを持っており、日本全国各地の会社経営者のために、問題社員、退職勧奨、労働審判、残業代トラブルなどの労働問題の予防解決に当たっています。継続雇用基準の運用・再雇用拒絶リスクでお悩みでしたら、弁護士法人四谷麹町法律事務所にご相談ください。事務所会議室での経営労働相談のほか、ZoomやTeamsでのオンライン経営労働相談を実施しています。

最終更新日:2026年7月11日


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