この記事の結論
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高年法上、継続雇用後の賃金に特別な定めはなく、強行法規・公序良俗に反しない限り自由に定められる

定年前後の賃金差は直ちに不当ではありません(長澤運輸事件・最高裁平成30年6月1日判決)。

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再雇用は新たな労働契約の締結であるため労働条件の不利益変更の問題にはならないが、就業規則の定めを下回ることはできない

就業規則で再雇用後の労働条件を定めて周知させている場合は、それが労働条件となります。

 継続雇用後の賃金水準に対する法的規制とは、高年法上の特別な定めがない中で、パートタイム・有期雇用労働法8条・最低賃金法等の強行法規および公序良俗の範囲内で、継続雇用後の賃金等の労働条件を就業規則・個別労働契約により自由に設定できるという法的枠組みをいいます。「定年後に再雇用する社員の賃金を、定年前より下げてもよいのか」というご相談は、経営者の方から非常に多くいただきます。

 本ページでは、継続雇用後の賃金水準に対する法的規制について、会社側専門の弁護士が解説します。

01継続雇用後の賃金水準に関する法的規制の基本

 結論:高年法上、継続雇用後の賃金等の労働条件については特別の定めがなく、年金支給開始年齢の65歳への引上げに伴う安定した雇用機会の確保という同法の目的、パートタイム・有期雇用労働法8条、最低賃金法等の強行法規、公序良俗に反しない限り、就業規則・個別労働契約等において自由に定めることができます。

02定年前後の賃金差は直ちに不当ではない(長澤運輸事件)

 結論:定年後に再雇用された社員の賃金水準が定年退職前よりも下がることはむしろ通常のことであり、社会通念に照らし直ちに不当ということはできません。長澤運輸事件最高裁判決(最高裁第二小法廷平成30年6月1日判決)は、有期雇用労働者が定年に達した後に継続雇用された者であることは、通常の労働者と当該有期雇用労働者との間の待遇の相違が不合理と認められるか否かを判断するに当たり、パートタイム・有期雇用労働法8条にいう「その他の事情」として考慮され得る事情に当たるとしています。

 定年後再雇用者は、定年退職に伴い一定の労務からの解放が予定されていること・老齢厚生年金の受給や高年齢雇用継続給付等の公的給付を受給できる場合があること等の事情も踏まえ、賃金水準の相違が直ちに不合理となるわけではないとされています。ただし、業務内容・責任の程度が定年前とほとんど変わらないにもかかわらず、賃金を大幅に引き下げる場合は、不合理な待遇差として問題になるリスクがある点には注意が必要です。

03労働条件の不利益変更の問題にはならない理由

 結論:定年の延長や継続雇用の場合は手順を誤ると労働条件の不利益変更(労契法9条・10条参照)の問題となるリスクがありますが、再雇用の場合はいったん定年退職し新たな労働契約を締結するため、定年退職前の労働条件との関係では労働条件の不利益変更の問題とはならないと考えられます。定年の延長(定年年齢そのものを引き上げる場合)は、既存の労働契約を維持したまま条件を変更することになるため、労働条件の不利益変更の手続を踏む必要があります。

 これに対し、再雇用は、いったん定年退職により従前の労働契約を終了させた上で、新たに労働契約を締結するものであるため、定年退職前の労働条件との関係では、労働条件の不利益変更の問題とはならないと考えられています。この点は、再雇用制度を選択する実務上のメリットの一つといえます。

04就業規則に定めた労働条件を下回ることはできない

 結論:就業規則で再雇用後の賃金等の労働条件を定めて周知させている場合はそれが労働条件となるため、再雇用後の労働条件を就業規則に定められている労働条件に満たないものにすることはできません。就業規則に具体的な賃金水準・算定方法を明記して周知している場合、その内容が労働契約の内容となります。

 したがって、個別の労働契約でそれを下回る条件を提示することは、就業規則違反として無効となるリスクがあります。継続雇用後の賃金制度の設計・就業規則への規定方法については、弁護士法人四谷麹町法律事務所にご相談ください。会社側専門の弁護士として、会社側の立場から実務的なアドバイスを提供しています。

賃金設定の比較|適切な対応/NGな対応

○ 適切な対応 ✕ NGな対応(不合理な待遇差のリスク)
再雇用の賃金水準は市場相場・自社の実態を踏まえて合理的に設定する 根拠のない大幅な引下げを一方的に行う
就業規則に再雇用後の労働条件を明記し周知する 就業規則と実際の運用に齟齬がある状態を放置する
「新たな労働契約の締結」という法的性質を踏まえて手続を設計する 定年延長と再雇用の手続を混同する
賃金設定の根拠を説明できるよう準備する 説明なく一方的に低い賃金を提示する

05よくある質問(FAQ)

Q. 定年前と比べてどの程度賃金を下げても問題ないですか。

一律の基準があるわけではありませんが、実務上は定年前の50%~70%程度に設定する企業が多く見られます。ただし、極端に低い水準(最低賃金を下回る、業務内容に見合わない著しい低額等)は、公序良俗違反や不合理な待遇差として問題視されるリスクがあります。具体的な設定は弁護士に相談することをお勧めします。

Q. 「労契法20条」という条文をよく見かけますが、まだ存在するのですか。

労働契約法20条は、令和2年(大企業)・令和3年(中小企業)の法改正により削除されており、現在は存在しません。その内容は、パートタイム・有期雇用労働法8条に統合されています。同条は、通常の労働者と短時間・有期雇用労働者との間の不合理な待遇差を禁止しており、定年後再雇用者もこの適用対象に含まれます。

Q. 就業規則に再雇用後の賃金を定めていない場合、どうなりますか。

就業規則に定めがない場合は、個別の労働契約で自由に賃金水準を設定することができます。ただし、トラブル防止の観点からは、あらかじめ再雇用後の賃金体系・労働条件を就業規則に明記しておくことをお勧めします。

経営上のポイント 高年法上、継続雇用後の賃金に特別な定めはなく、パートタイム・有期雇用労働法8条・最低賃金法等の強行法規と公序良俗に反しない限り自由に定められます。定年前後の賃金差は直ちに不当ではありませんが(長澤運輸事件)、就業規則で労働条件を定めて周知している場合はそれを下回ることはできません。赤字・債務超過でも高年齢者を再雇用しなければならないかとあわせて、継続雇用後の賃金設計について会社側専門の弁護士にご相談ください。具体的な事情に応じて、実務で使える方針をアドバイスします。
監修者 弁護士 藤田 進太郎

弁護士法人四谷麹町法律事務所 代表弁護士 藤田 進太郎

東京大学法学部卒業。2003年弁護士登録。日本弁護士連合会会員労働法制委員会委員・事務局次長・最高裁行政局との労働審判制度に関する協議会協議員、第一東京弁護士会労働法制委員会委員・研修部会副部会長、経営法曹会議会員・第112回経団連労働法フォーラム報告担当者、労働審判員連絡協議会特別会員、日本労働法学会会員、東京麹町ロータリークラブ会員・2023-24年度幹事。
講演・著作 / 「会社経営者のための問題社員対応講座」(YouTube)

日本全国各地の会社経営者の皆様へ

弁護士法人四谷麹町法律事務所代表弁護士の藤田進太郎です。私は、労働問題のストレスから会社経営者の皆様を解放したいという強い思いを持っており、日本全国各地の会社経営者のために、問題社員、退職勧奨、労働審判、残業代トラブルなどの労働問題の予防解決に当たっています。継続雇用後の賃金設計・待遇差のリスク管理でお悩みでしたら、弁護士法人四谷麹町法律事務所にご相談ください。事務所会議室での経営労働相談のほか、ZoomやTeamsでのオンライン経営労働相談を実施しています。

最終更新日:2026年7月11日


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