この記事の結論
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基本給部分は通常の計算(×1.25等)、歩合給部分は特則で計算する

基本給は月給を所定労働時間で割った単価に割増率を掛けます。歩合給は総額を総労働時間で割った額に0.25を掛けます(労働基準法37条・施行規則19条1項6号)。

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歩合給が0.25なのは通常賃金が既に含まれるため。月60時間超は0.50・時効3年に注意

歩合給には残業時間中の業務の対価が既に含まれるため、割増分(0.25)のみを追加します。月60時間超は0.50となり、2023年4月から中小企業も対象です。

 営業職などで、月給制の基本給に加えて成果に応じた歩合給(出来高払い)が支給される場合、残業代の計算は二つの部分に分けて行います。基本給と歩合給を併用する賃金体系の残業代とは、基本給部分を通常の時間給換算で計算し、歩合給部分を出来高払制の特則で計算して、両者を合算したものをいいます。

 それぞれ計算式が異なるため、片方の計算を誤ると未払い残業代が発生しやすくなります。会社側専門の弁護士の立場から、基本給と歩合給が併用される場合の残業代の計算方法を、具体例を用いて解説します。

01基本給と歩合給が併用される場合の残業代の考え方

 基本給と歩合給を併用している場合、残業代は基本給部分と歩合給部分の二つに分けて計算します。一つ目の基本給部分は、通常の時間給換算による残業代計算と同じです。月の基本給を所定労働時間で割った1時間あたりの単価に、割増率(法定時間外は1.25など)を掛けます。

 二つ目の歩合給部分は、計算方法が異なります。歩合給は仕事の出来高に応じて支払われるものであり、その中には残業時間中に行った業務の対価も既に含まれています。そのため、歩合給から改めて時間単価を計算し、割増分(通常は0.25相当)のみを追加で支払えばよいとされています(労働基準法37条および同施行規則19条1項6号)。

02歩合給部分の割増賃金の計算方法と具体例

 歩合給部分から生じる時間外割増賃金は、「その月の歩合給総額÷その月の総労働時間×0.25×法定時間外労働時間」で計算します。基本給部分と歩合給部分を分けて計算し、合算するのが正しい方法です。具体例で見てみましょう。

計算例|基本給25万円・歩合給10万円/所定170時間・時間外20時間・総労働190時間
基本給の時間単価 250,000円 ÷ 170時間 ≒ 1,470円
基本給部分の時間外割増 1,470円 × 1.25 × 20時間 = 36,750円
歩合給の割増賃金単価 100,000円 ÷ 190時間 × 0.25 ≒ 131円
歩合給部分の時間外割増 131円 × 20時間 = 2,620円
合計の時間外割増賃金 36,750円 + 2,620円 = 39,370円

 なお、上記の金額は端数処理の方法(1時間あたりの賃金額に生じる50銭未満は切捨て、50銭以上は切上げ等)によって前後します。実際の計算では、給与規程で定めた端数処理の方法に従って算出してください。

03月60時間超の50%割増が歩合給にも適用される

 月の法定時間外労働が60時間を超えた場合、歩合給部分についても超過分は50%割増で計算します。この場合、上記計算式の「0.25」が「0.50」に変わります。歩合給が高い社員ほど、超過分の割増賃金も大きくなります。

 この月60時間超の50%割増は、2023年4月1日から中小企業にも適用されています。歩合給制を採用している中小企業は、計算方法の見直しが必要です。

経営者が見落としやすいポイント歩合給制の残業代計算は月ごとに変動するため、毎月の計算が複雑になりがちです。また、歩合給の支払いタイミング(翌月払いなど)によって計算基礎となる月が変わる場合があります。計算方法が誤っていると、退職後に差額を請求されるリスクがあります。自社の計算方法が正確かどうか、一度弁護士または社会保険労務士に確認することをお勧めします。

04歩合給制で起きやすい残業代トラブルと会社側の対応

 歩合給制の職場では、残業代請求にあたって特有のトラブルが起きやすい傾向があります。第一に、実際の労働時間の把握が難しいことです。営業職では外出・直帰が多く、タイムカードがない会社も少なくありません。退職者が「実際の労働時間はもっと長かった」と主張した際に、会社側で反証する記録がなければ、社員側の主張が採用されやすくなります。

 第二に、歩合給の計算方法が就業規則・雇用契約書に明記されていないケースです。計算の根拠が不明確な場合、どの月の歩合給を計算基礎にするかで争いになることがあります。

 会社側の予防策としては、労働時間の客観的な記録(スマートフォンの業務アプリの記録、メール送信時刻など)を整備すること、歩合給の計算方法を就業規則・雇用契約書に明確に記載することが重要です。また、2020年改正により時効が3年に延長されたため、記録の保存期間も3年以上とする必要があります。

05よくある質問(FAQ)

Q. 歩合給の割増賃金計算で「0.25倍」するのは、なぜ「1.25倍」ではないのですか。

歩合給は仕事の出来高(成果)に対して支払われるものであり、残業時間中に行った業務に対する賃金も既に出来高の中に含まれています。そのため、通常賃金部分は既払いとみなされ、割増分(0.25相当)のみを追加で支払えばよいと解されています(労基法施行規則19条1項6号)。

Q. 歩合給の計算基礎となる「その月の総労働時間」はどう把握すればよいですか。

タイムカード・業務日報・入退館記録など、客観的な記録に基づいて把握します。外勤が多い営業職では、業務アプリのログやスマートフォンの位置情報記録なども活用できます。記録がなければ、退職後に「実際の労働時間はもっと長かった」と主張された際に会社側が反証できなくなります。

Q. 歩合給が翌月払いの場合、残業代の計算基礎はどの月の歩合給になりますか。

原則として、その残業が発生した月の歩合給を計算基礎とします。ただし歩合給の支払いが翌月以降になる場合は計算が複雑になります。就業規則や雇用契約書に計算方法を明確に定めておくことが重要です。不明な点は弁護士または社会保険労務士に相談してください。

Q. 退職した営業社員から未払い残業代を請求されました。どう対応すればよいですか。

まず当時の労働時間記録・歩合給の支払い記録・賃金台帳・雇用契約書を収集し、会社側専門の弁護士に相談してください。請求額の計算が正確か、固定残業代(みなし残業代)の合意があったか、時効の起算点はいつかなどを法的に検証したうえで対応方針を決めます。

経営上のポイント 基本給と歩合給を併用している場合の残業代は、基本給部分(月給÷所定労働時間×割増率)と歩合給部分(歩合給総額÷総労働時間×0.25)を分けて計算し、合算します。歩合給部分が0.25でよいのは、残業時間中の業務の対価が既に歩合給に含まれているためですが、月60時間を超える部分は0.50となり、2023年4月から中小企業にも適用されています。歩合給制はもともと労働時間の把握が難しく、計算基礎となる月も歩合給の支払いタイミングで変わり得るため、就業規則・雇用契約書に計算方法を明記し、客観的な労働時間記録を3年以上保存しておくことが、退職後の未払い請求への最大の備えになります。出来高払(歩合給)制の残業代の計算方法とあわせて、賃金規程の整備について会社側・使用者側専門の弁護士にご相談ください。具体的な事情に応じて、実務で使える方針をアドバイスします。
監修者 弁護士 藤田 進太郎

監修者

弁護士法人四谷麹町法律事務所 代表弁護士 藤田 進太郎

東京大学法学部卒業。2003年弁護士登録。日本弁護士連合会会員労働法制委員会委員・事務局次長・最高裁行政局との労働審判制度に関する協議会協議員、第一東京弁護士会労働法制委員会委員・研修部会副部会長、経営法曹会議会員・第112回経団連労働法フォーラム報告担当者、労働審判員連絡協議会特別会員、日本労働法学会会員、東京麹町ロータリークラブ会員・2023-24年度幹事。
講演・著作 / 「会社経営者のための問題社員対応講座」(YouTube)

 

日本全国各地の会社経営者の皆様へ

弁護士法人四谷麹町法律事務所代表弁護士の藤田進太郎です。私は、労働問題のストレスから会社経営者の皆様を解放したいという強い思いを持っており、日本全国各地の会社経営者のために、問題社員、退職勧奨、労働審判、残業代トラブルなどの労働問題の予防解決に当たっています。基本給・歩合給併用の残業代計算や賃金規程の整備でお悩みでしたら、弁護士法人四谷麹町法律事務所にご相談ください。事務所会議室での経営労働相談のほか、ZoomやTeamsでのオンライン経営労働相談を実施しています。

最終更新日:2026年7月13日


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