- ✓「経営者と一体的な立場」は①経営参画、②労務管理権限、③職務内容の3点で総合判断
- ✓経営会議への出席だけでは不十分で、実際の発言力・影響力が必要
- ✓採用担当・意見具申だけでは労務管理権限なしとされ、実質的な人事決定権が必要
- ✓部下と同様の現場作業に多く従事している場合は管理監督者性が否定される傾向
- ✓3要素の実態整備なしに管理監督者扱いをすると未払残業代リスクが発生する
01「経営者と一体的な立場」の法的定義
「経営者と一体的な立場にある者」とは、事業主の経営上の決定に参画し、労務管理上の決定権限を有している等、経営者と一体的な立場にあると評価できる者のことをいいます。このような者は、労基法上の労働時間等の規制の枠を超えて活動することが要請されざるを得ない重要な職責を担うものと考えられています。
管理監督者の3要件(①経営参画・労務管理権限、②労働時間の自律性、③相応の処遇)のうち、①の「経営参画・労務管理権限」の具体的な判断内容がここで問われます。形式的な肩書や出席ではなく、実態として経営・労務管理に関与しているかどうかが重要です。
02判断の3要素の概要
裁判例では、「経営者と一体的な立場」かどうかを判断する際に、以下の3要素を総合的に検討しています。
| 要素 | 判断内容 | 問われるポイント |
|---|---|---|
| ① | 経営への参画状況 | 経営会議等への関与度合い・実際の発言力・影響力 |
| ② | 労務管理上の指揮監督権 | 採用・解雇・人事考課・勤務割等の決定権限の実態 |
| ③ | 実際の職務内容 | 管理業務と現場業務の割合・一般社員との職務差異 |
03①経営への参画状況の判断基準
経営への参画状況については、会社の経営会議等の事業経営に関する決定過程に関与し、どの程度の発言力・影響力を有しているかが問題になります。
「経営参画あり」と認められやすいケース
- 経営会議・役員会・幹部会に出席し、実際に重要事項の意思決定に関与している
- 事業戦略・人事方針・労務管理方針について自らの意見が採用・反映される
- 経営幹部として会社の重要な方針を策定・実行する立場にある
- 予算・人員計画等の重要な経営事項について承認・決裁権限を有する
「経営参画なし」と判断されやすいケース
- 経営会議に出席しているが、実際の意思決定権はトップ等の限られた人物のみにある
- 経営会議に関与していない、または単なる情報共有・報告の場への出席にとどまる
- 経営上の重要事項について自らの発言が意思決定に影響しない
- 会議出席は形式的で、実質的な参加権・発言権がない
04②労務管理上の指揮監督権の判断基準
労務管理上の指揮監督権については、部下に関する採用・解雇・人事考課などの人事権限、部下の勤務割等の決定権限の有無・内容が重視されます。
権限の実態チェック表
| 権限の種類 | 認められやすい実態 | 否定されやすい実態 |
|---|---|---|
| 採用権限 | 採否を実質的に決定できる | 採用担当として面接・意見具申するだけ |
| 解雇・懲戒権限 | 解雇・懲戒処分の発議・決定に関与 | 問題社員の報告・意見具申のみ |
| 人事考課権限 | 部下の評価・査定を実質的に決定 | 評価は上位者が行い、意見を聞かれるだけ |
| 勤務割・シフト決定 | 部署全体の勤務割・シフトを自己裁量で決定 | 上司の承認なしにシフトを変更できない |
単に採用担当者であったり、人事上の意見を述べる機会が与えられているだけの場合は、管理監督者性が否定される傾向があります。実質的な決定権限の有無が重要です。
05③実際の職務内容の判断基準
実際の職務内容については、当該労働者の職務内容が管理監督者としてのマネージャー業務に特化しているか、それとも部下と同様の現場業務にも相当程度従事しているかが検討されます。
職務内容の判断基準
| 職務実態 | 管理監督者性への影響 |
|---|---|
| 管理・監督業務が業務の大半 | 管理監督者性が認められやすい(プラス要素) |
| 現場業務が相当程度を占める | 管理監督者性が否定されやすい(マイナス要素) |
| 一般社員との業務差異が明確 | 管理監督者性を支持する根拠となる |
| 一般社員とほぼ同じ業務内容 | 管理監督者性の否定につながる |
小売業や飲食業では、「店長」でありながら実際には販売・接客・調理等の現場業務の大部分を担っているケースがよくあります。このような場合、職務内容が一般スタッフと大差ないとして管理監督者性が否定される傾向にあります(日本マクドナルド事件等)。
063要素の総合判断と実務上の落とし穴
「経営者と一体的な立場」かどうかは、①経営参画、②労務管理権限、③職務内容を総合的に評価します。ただし、実務上は以下のような「落とし穴」にはまるケースが多く見られます。
実務上よくある誤解・落とし穴
- 「役職名が部長・課長だから管理監督者」という思い込み→実態がなければ否定される
- 「経営会議に出席しているから経営参画あり」という誤解→発言力・影響力がなければ否定される
- 「採用面接に参加しているから人事権あり」という誤解→採否の決定権がなければ否定される
- 「役職手当を払っているから処遇OK」という思い込み→金額が残業代を補う水準でなければ否定される
- 「タイムカードを押させているが管理監督者」という矛盾→労働時間裁量なしとして否定される
07管理監督者性を高めるための実務整備
管理監督者として適正に扱うためには、3要素の実態を整備し、証拠として示せる形で記録しておくことが重要です。
実務整備のポイント
| 整備項目 | 具体的な対応 |
|---|---|
| 職務権限の明確化 | 職務権限規程で採用・解雇・人事考課等の決定権を明文化する |
| 経営参画の実態確保 | 経営会議・幹部会への出席と実質的参加・発言の機会を確保する |
| 勤怠管理からの除外 | タイムカードによる厳格管理をやめ、出退勤の自律性を実態として確保する |
| 処遇の優遇 | 役職手当を含む賃金が一般社員より明確に優遇される水準に設定する |
| 現場業務の見直し | 管理職の現場業務比率を引き下げ、管理・監督業務が主体となる体制にする |
08実務上の注意点と弁護士への相談
「経営者と一体的な立場」の判断は、会社側が主観的に「管理監督者だ」と考えていても、実態が伴わなければ裁判所・労働基準監督署で否定されます。特に多店舗展開の小売業・飲食業・サービス業では、店長職の管理監督者性が問題となるケースが多発しています。
- 管理監督者として扱っている従業員について、3要素すべての実態を定期的に確認する
- 要件充足が疑わしい場合は、速やかに弁護士によるリスク評価を受ける
- 実態整備が困難な場合は、割増賃金を適正支払いする体制に切り替える
- 元従業員から未払残業代を請求された場合は、早期に使用者側専門弁護士に相談する
管理監督者の実態確認・整備、名ばかり管理職問題への対応については、使用者側専門の労働問題弁護士にご相談ください。当事務所は会社経営者の立場から労働問題の予防・解決を支援しています。
監修者
弁護士法人四谷麹町法律事務所 代表弁護士 藤田 進太郎
東京大学法学部卒業。2003年弁護士登録。日本弁護士連合会会員労働法制委員会委員・事務局次長・最高裁行政局との労働審判制度に関する協議会協議員、第一東京弁護士会労働法制委員会委員・研修部会副部会長、経営法曹会議会員・第112回経団連労働法フォーラム報告担当者、労働審判員連絡協議会特別会員、日本労働法学会会員、東京麹町ロータリークラブ会員・2023-24年度幹事。
日本全国各地の会社経営者の皆様へ
弁護士法人四谷麹町法律事務所代表弁護士の藤田進太郎です。私は、労働問題のストレスから会社経営者の皆様を解放したいという強い思いを持っており、日本全国各地の会社経営者のために、問題社員、退職勧奨、労働審判、残業代トラブルなどの労働問題の予防解決に当たっています。管理監督者の経営参画要件の整備、名ばかり管理職問題の予防・解決でお悩みでしたら、弁護士法人四谷麹町法律事務所にご相談ください。事務所会議室での経営労働相談のほか、ZoomやTeamsでのオンライン経営労働相談を実施しています。アドバイスします。
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最終更新日:2026年5月22日