この記事の結論
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通勤時間は使用者の指揮命令下にないため原則として労働時間に該当しない

通勤は労務提供以前の持参行為であり、使用者の指揮命令下に入っていない段階です。会社バスによる通勤でも単に通勤方法に制約があるだけでは指揮命令下とは認められません(高栄建設事件・阿由葉工務店事件)。

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出張移動時間・直行直帰の移動時間も原則として労働時間に該当しない

出張の移動時間も業務性を欠き自由が保障されているため原則として労働時間に該当しません(昭和23年通達)。ただし、物品の監視等の業務指示がある場合は例外です。直行・直帰の移動も同様です。

01労働時間とは

 労働時間とは、労働者が使用者の指揮命令下に置かれている時間のことをいいます。しかし、このような定義のみでは具体的な事例において労働時間にあたるか否かを判断することが難しく、裁判例でも、使用者による拘束の程度や具体的な活動内容を総合的に考慮し、使用者の指揮命令下に置かれていると評価できるか否かを実質的に判断しています。

02通勤時間の労働時間性

 通勤は、労働者が労働力を使用者のもとへ持参するための債務の履行の準備行為であって、使用者の指揮命令下に入っていない労務提供以前の段階に過ぎないことから、通勤時間は労働時間に該当しません。

 裁判例では、労働者が会社の提供するバスに乗って寮と就業場所を往復していた時間について、「寮から各工事現場までの往復の時間はいわゆる通勤の延長ないしは拘束時間中の自由時間ともいうべきものである以上、これについては原則として賃金を発生させる労働時間にあたらないものというべきである」と述べられており、単に通勤方法について一定の拘束を受けていたというだけでは、使用者の指揮命令下に置かれているとは認められないのが通常です(高栄建設事件東京地裁平成10年11月16日判決)。

 また別の裁判例でも、会社事務所と工事現場の往復は通勤としての性格を有しているため労働時間に当たらないとしたものがあります(阿由葉工務店事件東京地裁平成14年11月15日判決)。

 このように、通勤時間の性質・使用者の指揮命令・労働者に対する拘束の程度のいずれの点からも、通勤時間は原則として労働時間には該当しません。

03休日に出張先に移動した場合の移動時間の労働時間性

 休日に出張先に移動した場合の移動時間が労働時間に該当するかについて、行政解釈は「出張中の休日はその日に旅行する等の場合であっても、旅行中における物品の監視等別段の指示がある場合の外は休日労働として取り扱わなくても差し支えない」としており、出張前後の移動時間は業務性を欠き通常は自由が保障されているから労働時間には該当しないとしています(昭和23年3月17日基発461号、昭和33年2月13日基発90号)。

 移動時間の労働時間性が認められるのは、例えば出張の目的が物品の運搬であり、移動中もその物品を監視しなければならない等、出張の移動そのものが業務性を有するような場合に限られます。

出張移動時間の労働時間性の整理

原則:労働時間に該当しない(業務性を欠き、移動中の過ごし方は自由)
例外:移動中に物品の監視等の業務上の指示がある場合は労働時間に該当

04直行・直帰の移動時間の労働時間性

 直行・直帰とは、いったん会社に出勤しそこから使用者の業務命令により作業現場や得意先等の目的地に移動すべきところを、会社を経由することによる無駄を省くため、直接自宅から目的地に移動し、また目的地から直接自宅に移動することをいいます。

 実際の労務提供は目的地で開始されるものであり、目的地までの移動は持参行為と考えられ、労働者は移動時間中の過ごし方を自由に決めることができます。使用者の指揮命令が全く及んでいない状態にあるため、直行・直帰の移動時間は労働時間には当たらないと考えます。

経営上のポイント 通勤時間・出張の移動時間・直行直帰の移動時間はいずれも原則として労働時間に該当しません。会社バスで通勤させている場合も単に通勤方法に制約があるだけでは指揮命令下とはなりません(高栄建設事件等)。出張移動中に物品の監視等の業務上の指示がある場合は例外として労働時間となります。自社の通勤・出張・直行直帰の運用について不明な点がある場合は弁護士に相談することをお勧めします。アドバイスします。
監修者 弁護士 藤田 進太郎

監修者

弁護士法人四谷麹町法律事務所 代表弁護士 藤田 進太郎

東京大学法学部卒業。2003年弁護士登録。日本弁護士連合会会員労働法制委員会委員・事務局次長・最高裁行政局との労働審判制度に関する協議会協議員、第一東京弁護士会労働法制委員会委員・研修部会副部会長、経営法曹会議会員・第112回経団連労働法フォーラム報告担当者、労働審判員連絡協議会特別会員、日本労働法学会会員、東京麹町ロータリークラブ会員・2023-24年度幹事。
講演・著作 / 「会社経営者のための問題社員対応講座」(YouTube)

日本全国各地の会社経営者の皆様へ

弁護士法人四谷麹町法律事務所代表弁護士の藤田進太郎です。私は、労働問題のストレスから会社経営者の皆様を解放したいという強い思いを持っており、日本全国各地の会社経営者のために、問題社員、労働審判、残業代トラブルなどの労働問題の予防解決に当たっています。問題社員、労働審判、残業代トラブルでお悩みでしたら、弁護士法人四谷麹町法律事務所にご相談ください。事務所会議室での経営労働相談のほか、ZoomやTeamsでのオンライン経営労働相談を実施しています。

Q&Aよくある質問

Q1. 出張前日に移動した場合、宿泊中の時間や翌日の移動時間は労働時間になりますか。

A. 宿泊中の自由時間・翌日の移動時間は、業務上の特別な指示がない限り原則として労働時間にはなりません(昭和23年通達)。ただし、移動中に物品の監視等の業務上の指示がある場合は例外となります。出張旅費(交通費・宿泊費等)は業務上の経費として精算されますが、それとは別に、実際に業務を行った時間(取引先との打ち合わせ時間等)については労働時間として処理する必要があります。

Q2. 「直行・直帰」の移動時間中に上司から業務の電話指示があった場合、その時間は労働時間になりますか。

A. 電話対応の時間(実際に電話で指示を受け業務について対応した時間)については労働時間に該当する可能性があります。一方、移動時間全体が労働時間になるわけではなく、実際に指揮命令に従って業務を行った時間分が労働時間として評価されます。携帯電話での業務対応時間については629番ではなく630番・633番も参照してください。

Q3. 会社の送迎バスで通勤させています。乗車中の時間は労働時間になりますか。

A. 原則として労働時間にはなりません。高栄建設事件(東京地裁平成10年)では、会社バスで寮と工事現場を往復した時間について「通勤の延長ないし拘束時間中の自由時間」として労働時間に当たらないとされています。ただし、バス乗車中に業務上の指示に従い作業等を行っている場合は、その部分が労働時間となる可能性があります。

最終更新日:2026年2月25日


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