労働問題630 手待ち時間や仮眠時間は労働時間に該当しますか?
1.労働時間とは
労基法が規制の対象とする労働時間とは、現に労働させる実労働時間をいいます。実労働時間は、労働者の労務提供債務の履行行為であるため、①労務提供義務を負っているかどうか(指揮命令ないし明示・黙示の指示の有無等)、②債務の本旨に従った労務(業務性・職務性の有無等)の提供といえるかどうかという観点から実質的に判断します。
2.手待ち時間の労働時間性
就業時間の中で休憩時間とされている時間であっても、実質的に手待ち時間と認められれば、労働時間になります。
たとえば店舗内で休憩することを要し、客が来店し次第対応しなければならない場合は、手待ち時間となり、実際に客が来店しなかったとしても労働時間と認められます。
3.仮眠時間の労働時間性
就業時間中に仮眠時間が与えられている場合、仮眠時間中に何の業務上の指示も与えられておらず、休憩時間と同様に使用者の指揮命令下から離脱している場合は、休憩時間と考えることができます。
しかし、仮眠時間中であっても緊急時には対応しなければならないなど、一定の業務上の指示がなされている場合、仮眠時間が労働時間にあたる可能性があります。
参考裁判例として、大星ビル管理事件は、「当該時間に労働者が労働から離れることを保障されていて初めて、労働者が使用者の指揮命令下に置かれていないものと評価することができる。」との一般論を示し、その上で、「本件仮眠時間中、労働契約に基づく義務として、仮眠室における待機と警報や電話等に対して直ちに相当の対応をすることを義務付けられているのであり、実作業への従事がその必要性が生じた場合に限られるとしても、その必要が生じることが皆無に等しいなど実質的に上記のような義務付けがされていないと認めることができるような事情も存しない」ことから、本件仮眠時間は労働時間にあたると判断しました(最高裁平成14年2月28日判決)。
弁護士法人四谷麹町法律事務所
勤務弁護士作成