この記事の要点
  • 労基法41条は農業・畜産業等従事者、管理監督者・機密事務取扱者、許可を受けた監視・断続的労働従事者の3類型を労働時間規制の適用除外としている
  • 適用除外でも年次有給休暇・深夜割増賃金の規定は適用され、深夜業をさせた場合は割増賃金の支払いが必要
  • 管理監督者の認定は役職名ではなく実質的な職務内容・権限・待遇によって判断されるため、安易な適用は危険

1労働時間規制の適用除外制度とは

労働基準法は、法定労働時間(1日8時間・1週40時間)や休憩・休日に関する規制を設け、これを超えて労働させた場合には割増賃金(残業代)の支払いを義務付けています

一方、労基法第41条では、業務の性質や職務の実態から、これらの規制になじまない3類型の労働者について、労働時間・休憩・休日に関する規制の適用除外を認めています。

【労基法41条の適用除外3類型】

  • ① 農業、畜産業、養蚕業、水産業に従事する者
  • ② 管理監督者の地位にある者または機密の事務を取り扱う者
  • ③ 監視または断続的労働に従事する者で、使用者が行政官庁の許可を受けた者
【重要】適用除外3類型であっても、年次有給休暇(労基法39条)および深夜業の割増賃金(労基法37条)の規定は除外されません。これは会社側として必ず押さえておくべき点です。

2①農業・畜産業・養蚕業・水産業に従事する者

農業や畜産業等は、天候・季節・自然条件などの外的要因に業務内容が大きく左右されるため、画一的な法定労働時間・週休制の規制にはなじまないとして、適用除外とされています(労基法41条1号)。

【注意点】
林業は対象外であり、農業・畜産業・養蚕業・水産業のみが対象です。農業関連事業を営む会社においても、農業以外の部門(製造・販売・事務)の従業員には通常の労働時間規制が適用されます。

3②管理監督者・機密事務取扱者

管理監督者や機密事務取扱者は、経営者と一体的な立場にある者と考えられ、法定労働時間・休日の規制を超えて働くことが本来的に予定されているため、適用除外とされています(労基法41条2号)。

管理監督者の認定基準

管理監督者の範囲は役職名で決まるのではなく、以下の実質的基準で判断されます(昭和22年9月13日基発17号、昭和63年3月14日基発150号)。

  • 経営者と一体的な立場にあること(経営方針の決定等への関与)
  • 勤務時間について厳格な制限を受けていないこと(出退勤の自由)
  • 賃金等の待遇において、一般労働者に比べ管理職手当等の優遇措置が講じられていること

機密事務取扱者の範囲

通達(昭和22年9月13日基発17号)では、機密事務を取り扱う者について以下のように定義しています。

「機密の事務を取り扱う者とは、秘書その他職務が経営者又は管理監督者若しくは管理の地位にある者の活動と一体不可分であって、出社退社などについて厳格な制限を受けない者であること。」

4③監視または断続的労働に従事する者

監視・断続的労働に従事する者は、通常の労働者と比較すると労働密度が薄く、労働時間や休日・休憩の規制を除外しても労働者保護に欠けることはないと考えられるため、行政官庁(労働基準監督署)の許可を条件に適用除外とされています(労基法41条3号)。

監視業務の定義

通達(昭和63年3月14日基発150号)では、監視業務について「原則として一定の部署にあって監視することを本来の業務とし、常態として身体又は精神的緊張の少ない労働」とされています。ビル管理の守衛・施設の夜間警備員などが典型例です。

【行政官庁の許可が必要】
この類型は、必ず所轄労働基準監督署の許可を事前に取得することが必要です。許可なく適用した場合、労基法違反となります。

5適用除外でも残る規制

労基法41条の適用除外者であっても、以下の規制は引き続き適用されます。会社側として見落としやすいポイントです。

規制の種類 適用の有無
法定労働時間・休憩・休日規制 適用除外
年次有給休暇(労基法39条) 適用あり
深夜割増賃金(午後10時〜午前5時) 適用あり
年少者・妊産婦の深夜業禁止 適用あり

SUPERVISOR 弁護士 藤田 進太郎

監修者

弁護士法人四谷麹町法律事務所 代表弁護士 藤田 進太郎

東京大学法学部卒業。2003年弁護士登録。日本弁護士連合会会員労働法制委員会委員・事務局次長・最高裁行政局との労働審判制度に関する協議会協議員、第一東京弁護士会労働法制委員会委員・研修部会副部会長、経営法曹会議会員・第112回経団連労働法フォーラム報告担当者、労働審判員連絡協議会特別会員、日本労働法学会会員、東京麹町ロータリークラブ会員・2023-24年度幹事。
講演・著作 / 「会社経営者のための問題社員対応講座」(YouTube)

 

日本全国各地の会社経営者の皆様へ

弁護士法人四谷麹町法律事務所代表弁護士の藤田進太郎です。私は、労働問題のストレスから会社経営者の皆様を解放したいという強い思いを持っており、日本全国各地の会社経営者のために、問題社員、退職勧奨、労働審判、残業代トラブルなどの労働問題の予防解決に当たっています。就業規則・変形労働時間制の導入・整備でお悩みでしたら、弁護士法人四谷麹町法律事務所にご相談ください。事務所会議室での経営労働相談のほか、ZoomやTeamsでのオンライン経営労働相談を実施しています。

FAQよくある質問

Q1. 管理職手当を支払っていれば管理監督者として残業代を支払わなくてよいですか?

A. 管理職手当の支払いだけでは管理監督者とは認められません。管理監督者の認定は、経営への関与・出退勤の自由・賃金等の待遇など実質的な基準で判断されます。要件を満たさない場合、残業代の支払い義務が生じます。

Q2. 管理監督者に該当する場合でも深夜割増賃金は支払う必要がありますか?

A. 必要です。労基法41条の適用除外は、労働時間・休憩・休日規制の適用を除外するものですが、深夜割増賃金(労基法37条)の規定は除外されません。深夜(午後10時〜午前5時)に労働させた場合は、2割5分以上の割増賃金が必要です。

Q3. 監視・断続的労働の適用除外は、届出だけで認められますか?

A. 届出ではなく、所轄労働基準監督署の「許可」が必要です。許可を受けずに適用した場合は労基法違反となります。許可申請にあたっては、業務の実態を詳細に説明する必要があります。

Q4. 農業以外の業種の会社でも、農作業を行う社員には農業の適用除外が使えますか?

A. 業種ではなく、その従業員が実際に農業・畜産業・養蚕業・水産業の業務に従事しているかどうかで判断されます。ただし、農業以外の業務も担当している場合は、業務の実態に応じた慎重な判断が必要です。

最終更新日:2025年5月