事業場外労働のみなし労働時間制を適用するにあたっての注意点を教えてください。
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みなし労働時間制を適用しても割増賃金の支払義務はなくならない 事業場外労働のみなし労働時間制を適用しても、時間外・休日・深夜に労働させれば割増賃金(残業代)の支払義務は変わりません。みなし制の適用だけでは残業代請求対策として不十分です。 |
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労使協定・定額残業代の活用で、万が一の追加支払を抑制するのがポイント みなし労働時間に関する労使協定を締結し、定額残業代制度で支払済みにしておくことで、万が一みなし制の適用が否定されても追加支払額を抑制できます。 |
事業場外労働のみなし労働時間制を適用しても、時間外・休日・深夜に労働させれば、割増賃金(残業代)の支払義務はなくなりません。みなし制はあくまで「労働時間の算定」に関する制度であり、割増賃金の支払義務そのものをなくす制度ではないため、みなし制の適用だけでは残業代請求対策として不十分です。
そのため、みなし労働時間に関する労使協定を締結してみなし時間を確定し、定額残業代制度で残業代を支払済みにしておくことが重要です。会社側専門の弁護士の立場から、適用にあたっての注意点を解説します。
01時間外・休日・深夜割増賃金の支払義務
事業場外労働のみなし労働時間制を適用したとしても、時間外・休日・深夜に労働させれば、時間外・休日・深夜割増賃金(残業代)の支払が必要なことに変わりありません。みなし制は労働時間の「長さ」を算定するための制度であり、深夜・休日の割増賃金の支払義務を免除するものではないためです。
02所定労働時間を超える労働
所定労働時間内に事業場外労働が終わらない場合は、当該業務の遂行に通常必要とされる時間(たとえば10時間といった時間)労働したものとみなされ、使用者にはみなされた労働時間に基づき算定された時間外割増賃金(残業代)を支払う義務が生じます。
つまり、所定労働時間内に事業場外労働が終わらず、1日8時間を超えて労働することが必要となるケースでは、事業場外みなし制を適用できてもできなくても、時間外割増賃金(残業代)を支払わなければなりません。そのため、みなし制を適用するだけでは残業代請求対策として不十分であり、何らかの形で時間外割増賃金を支払済みにしておく必要があります。
03労使協定の締結
後になってからみなし労働時間を争われて残業代請求を受けないようにするためには、労働者代表等との間で、実態に合致したみなし労働時間が何時間なのかを協議し、その結果に基づいてみなし労働時間に関する労使協定を締結し、みなし労働時間を確定しておく必要があります。
業務の遂行に通常必要とされる時間を労使協定で定めた場合には、その協定を所轄労働基準監督署長に届け出る必要があります(労基法38条の2第2項・3項)。届出を怠ると協定の効力に影響するため、注意が必要です。
04定額(固定)残業代制度の利用
時間外・休日・深夜割増賃金(残業代)を支払済みにしておく方法としては、定額(固定)残業代制度の利用も有効です。ただし、制度設計や実際の運用を誤ると、時間外・休日・深夜割増賃金の支払として認められなくなる可能性があります。定額残業代制の有効要件(判別可能性・対価性・法定額以上・超過分の別途支払)を満たすよう設計することが不可欠です。
05金額の抑制/よくある質問(FAQ)
みなし労働時間に基づき計算された時間外割増賃金を支払済みにしておけば、万が一、事業場外みなし制の適用が否定された場合であっても、使用者が追加で支払わなければならない時間外割増賃金(残業代)の金額を抑制することができます。みなし制・労使協定・定額残業代を組み合わせて備えておくことが、会社側にとって現実的なリスク管理となります。
Q. 事業場外みなし労働時間制を導入すれば残業代を支払わなくて済みますか。
いいえ、そうはなりません。みなし制は労働時間の算定が困難な場合に、所定労働時間または業務遂行に通常必要な時間を労働時間とみなす制度です。みなした時間が1日8時間・週40時間を超えれば割増賃金は必要ですし、休日・深夜に労働させれば休日・深夜割増賃金も必要です。導入だけで残業代ゼロにはなりません。
Q. みなし労働時間に関する労使協定は労基署への届出が必要ですか。
みなし労働時間を所定労働時間とする場合は届出は不要ですが、「業務の遂行に通常必要とされる時間」を労使協定で定めた場合は、所轄労働基準監督署長への届出が必要です(労基法38条の2第2項・3項)。届出を怠ると協定の効力に影響しますので注意が必要です。
Q. 定額残業代制度を使う場合、何時間分を設定すればよいですか。
実態に合った時間数を設定することが重要です。みなし労働時間に基づいて計算される時間外労働時間数を参考に設定するのが合理的です。時間数が実態より大幅に少ないと、固定残業代を超える割増賃金の支払義務が生じます。また、固定残業代として認められるためには、基本給と残業代部分を明確に区別し、対応する時間数・金額を明示するなどの要件を満たす必要があります。
Q. みなし制の適用が後で否定されると、どうなりますか。
実労働時間に基づいて計算された割増賃金を支払う必要が生じます。ただし、労使協定で定めたみなし時間分の残業代を定額残業代として支払済みにしておけば、その分を充当でき、追加で支払う金額を抑制できます。
監修者
弁護士法人四谷麹町法律事務所 代表弁護士 藤田 進太郎
東京大学法学部卒業。2003年弁護士登録。日本弁護士連合会会員労働法制委員会委員・事務局次長・最高裁行政局との労働審判制度に関する協議会協議員、第一東京弁護士会労働法制委員会委員・研修部会副部会長、経営法曹会議会員・第112回経団連労働法フォーラム報告担当者、労働審判員連絡協議会特別会員、日本労働法学会会員、東京麹町ロータリークラブ会員・2023-24年度幹事。
講演・著作 / 「会社経営者のための問題社員対応講座」(YouTube)
日本全国各地の会社経営者の皆様へ
弁護士法人四谷麹町法律事務所代表弁護士の藤田進太郎です。私は、労働問題のストレスから会社経営者の皆様を解放したいという強い思いを持っており、日本全国各地の会社経営者のために、問題社員、退職勧奨、労働審判、残業代トラブルなどの労働問題の予防解決に当たっています。事業場外みなし制の設計や労使協定・定額残業代の整備でお悩みでしたら、弁護士法人四谷麹町法律事務所にご相談ください。事務所会議室での経営労働相談のほか、ZoomやTeamsでのオンライン経営労働相談を実施しています。
最終更新日:2026年7月13日