この記事の結論
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懲戒解雇事由があっても普通解雇を選択できる。最高裁(高知放送事件)も明確に認めている

本人の再就職など将来を考慮して懲戒解雇に処することなく普通解雇を選択することは、最高裁(昭和52年1月31日・高知放送事件)が許容しています。ただし普通解雇としての有効要件(客観的合理的理由・社会通念上の相当性)は別途必要です。

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普通解雇を選択すると退職金不支給・減額規定が使えなくなる点に注意

懲戒解雇であれば退職金を不支給・減額できたケースでも、普通解雇を選択することで退職金全額の支払いが必要になる場合があります。解雇形式の選択前に就業規則・退職金規程を必ず確認してください。

01懲戒解雇事由があっても普通解雇は選択できる(高知放送事件)

 懲戒解雇事由に該当する事実がある場合でも、普通解雇を選択することは原則として可能です。最高裁判所は、高知放送事件(昭和52年1月31日判決)において次のように判示しています。

高知放送事件(最高裁昭和52年1月31日判決)

「就業規則所定の懲戒事由にあたる事実がある場合において、本人の再就職など将来を考慮して懲戒解雇に処することなく、普通解雇に処することは、それがたとえ懲戒の目的を有するとしても、必ずしも許されないわけではない。」

 この判決は、使用者が懲戒解雇事由に該当する事実を把握しながらも、あえて懲戒解雇という制裁手段を選ばず、普通解雇という形式を取ることを認めています。本人の将来(再就職への影響など)を考慮した上での普通解雇選択は、法的に許容されるということです。

02懲戒解雇と普通解雇の違い

 懲戒解雇と普通解雇は、性質の異なる別個の制度です。懲戒解雇は、就業規則に定める懲戒事由に基づき、使用者が労働者に対して制裁として行う解雇です。これに対して普通解雇は、労働契約の解消を目的として行う解雇であり、懲戒的な性格を必ずしも持ちません。

 両者は有効要件も異なります。懲戒解雇では、就業規則への懲戒事由の規定、懲戒手続の遵守、懲戒権濫用の有無(最も重い処分としての相当性)などが問われます。普通解雇では、客観的に合理的な理由と社会通念上の相当性(解雇権濫用法理・労働契約法16条)が問われます。懲戒解雇の方が、一般に法的ハードルが高いとされています。

03普通解雇を選択しても有効要件は別途必要

 懲戒解雇事由に該当する事実があっても普通解雇を選択できるとはいえ、普通解雇としての有効要件を満たさなければなりません。懲戒解雇事由に該当するという事実は、普通解雇の客観的合理的理由の根拠にはなり得ますが、それだけで普通解雇の有効性が自動的に認められるわけではありません。

 解雇権濫用法理(労働契約法16条)に基づき、①その解雇に客観的に合理的な理由があるか、②社会通念上相当な処分といえるか、という審査を受けます。例えば、比較的軽微な懲戒事由に該当するにすぎない場合、それを理由とした普通解雇が社会通念上相当と認められないケースもあります。「懲戒解雇事由に該当するから普通解雇も自動的に有効になる」は誤りです。

04退職金の取り扱いに注意する

 懲戒解雇と普通解雇では、退職金の取り扱いが大きく異なることがあります。多くの就業規則・退職金規程では、懲戒解雇の場合に退職金の全部または一部を不支給・減額できると定めています。一方、普通解雇の場合は、原則として退職金が支払われます。

 懲戒解雇事由に該当する事実があるにもかかわらず普通解雇を選択した場合、退職金の不支給・減額ができなくなる可能性があります。「普通解雇を選んでも、懲戒解雇事由がある以上、退職金は払わなくてよい」は誤りです。退職金の不支給・減額は、就業規則・退職金規程に懲戒解雇時の規定がある場合に「懲戒解雇」を選択したときにのみ適用できます。

 弁護士として会社側の解雇事案に関わる中でよく見られるのは、次のようなパターンです。

・「懲戒解雇事由があるから退職金を払わなくていいと思い普通解雇したが、後から退職金の全額請求を受けた」
・「懲戒解雇の有効性に自信がなかったため普通解雇を選んだが、普通解雇の有効要件も十分に検討しておらず、結果として解雇無効と判断された」

 いずれも、解雇形式の選択前に弁護士への相談があれば防げたケースです。この点を踏まえた上で、どちらの解雇形式を選択するかを慎重に判断することが重要です。

05普通解雇を選択する場面:実務上の判断基準

 高知放送事件判決が示すように、「本人の再就職など将来を考慮して」普通解雇を選択することは法的に認められています。懲戒解雇は社会的な制裁としての意味合いが強く、本人の転職・再就職に深刻な影響を与えます。非違行為の内容・程度・本人の勤続年数・今後の更生可能性などを総合的に考慮した上で、あえて普通解雇を選択するという判断は、使用者の合理的な裁量の範囲内と評価されます。

 また、懲戒解雇の有効性に不安がある場合に、普通解雇としての有効要件を満たす形での解雇を検討するという判断もあります。懲戒解雇は普通解雇より厳格な要件が求められる場面があるためです。ただしこの判断は、個別の事実関係や就業規則の内容によって大きく変わります。

経営上のポイント 懲戒解雇事由があっても普通解雇を選択することは法的に認められています(高知放送事件)。ただし普通解雇の有効要件(客観的合理的理由・社会通念上の相当性)は別途必要です。また普通解雇を選択すると就業規則上の退職金不支給・減額規定が使えなくなる場合があります。どちらの解雇形式を選択するかは個別の事情によって異なるため、解雇を検討している場合は弁護士に相談することをお勧めします。アドバイスします。
監修者 弁護士 藤田 進太郎

監修者

弁護士法人四谷麹町法律事務所 代表弁護士 藤田 進太郎

東京大学法学部卒業。2003年弁護士登録。日本弁護士連合会会員労働法制委員会委員・事務局次長・最高裁行政局との労働審判制度に関する協議会協議員、第一東京弁護士会労働法制委員会委員・研修部会副部会長、経営法曹会議会員・第112回経団連労働法フォーラム報告担当者、労働審判員連絡協議会特別会員、日本労働法学会会員、東京麹町ロータリークラブ会員・2023-24年度幹事。
講演・著作 / 「会社経営者のための問題社員対応講座」(YouTube)

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弁護士法人四谷麹町法律事務所代表弁護士の藤田進太郎です。私は、労働問題のストレスから会社経営者の皆様を解放したいという強い思いを持っており、日本全国各地の会社経営者のために、問題社員、退職勧奨、労働審判、残業代トラブルなどの労働問題の予防解決に当たっています。問題社員、労働審判、残業代トラブルでお悩みでしたら、弁護士法人四谷麹町法律事務所にご相談ください。事務所会議室での経営労働相談のほか、ZoomやTeamsでのオンライン経営労働相談を実施しています。

最終更新日:2026年6月28日


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