労働問題784 定額残業代の最近の裁判例を教えてください。

1.X社事件東京高裁平成28年1月27日判決
 36協定の延長限度額に関する基準において上限とされる月45時間を大幅に超える業務手当を残業代の支払として認めました(上告棄却・不受理)。

2.アクティリンク事件東京地裁平成24年8月28日判決
 周知されている賃金規定上「時間外労働割増賃金で月30時間相当分として支給する」と定められている「営業手当」について、「固定残業代の支払が許されるためには、実質的に見て、当該手当が時間外労働の対価としての性格を有していることは勿論、支給時に支給対象の時間外労働の時間数と残業手当の額が労働者に明示され、固定残業代によってまかなわれる残業時間数を超えて残業が行われた場合には別途清(ママ)算する旨の合意が存在するか、少なくともそうした取扱いが確立していることが必要不可欠であるというべきである」とした上で、「営業手当は、営業活動に伴う経費の補充または売買事業部の従業員に対する一種のインセンティブとして支給されていたものとみるのが相当であり、実質的な時間外労働の対価としての性格を有していると認めることはできない。」等として、営業手当は残業手当ではないとしました。

3.トレーダー愛事件京都地裁平成24年10月16日判決
 成果給を時間外手当とし、割増賃金を計算する基礎賃金には含まれないことが明記されている就業規則及び給与規定について、成果給は前年度の成果に応じて人事考課によって決められ、他方、時間外手当は労働者を法定労働時間を超えて労働させた場合に使用者が労働時間に比例して支払う手当であって、両者の性質は異なり、本件給与体系は、時間外手当を支払わないための便法であって不合理なものであるとした上で、本件の場合、成果給が全て時間外手当であるということはできず、成果給の中に基本給と時間外手当が混在しており、成果給は割増賃金計算の基礎賃金に含まれるとしました。

4.ザ・ウィンザー・ホテルズインターナショナル事件札幌高裁平成24年10月19日判決
 使用者が基本給とは別に支給されていた定額の職務手当が95時間分の時間外賃金であると主張したのに対し、職務手当の受給に合意した労働者が95時間の時間外労働義務を負うことになり、このような長時間の時間外労働を義務付けることは、労働基準法36条の規定を無意味なものとするばかりでなく、安全配慮義務に反し、公序良俗に反する恐れさえあるとして、職務手当は労働基準法36条の上限として周知されている月45時間分の通常残業の対価として合意され、支払われたものと認めるのが相当として、月45時間を超える時間外労働時間及び深夜労働時間につき、残業代の支払を命じました。

5.マーケティングインフォメーションコミュニティ事件東京高裁平成26年11月26日判決、原審横浜地裁平成26年4月30日判決
 おおむね100時間に相当する時間外手当について、割増賃金に相当する部分とそれ以外の部分についての区別が明確となっていないことのほか、36協定の延長限度額に関する基準において月45時間が労働時間の上限と定められていることに照らし、「100時間という長時間の時間外労働を恒常的に行わせることが上記法令の趣旨に反するものである」こと等を理由として、営業手当の支払が割増賃金の支払であることを否定しました。

6.有限会社空事件東京地裁平成27年2月27日判決
 月額賃金の一部は残業代として支払われていた旨の会社の主張について、会社から労働者に交付されていた給与支払明細書には「基本給330、000」と記載されているのみであり、通常の労働時間の賃金に当たる部分と割増賃金に当たる部分とを判別できないから、前述の主張は理由がないとしました。

7.穂波事件岐阜地裁平成27年10月22日判決
 10万円、83時間相当であるみなし残業手当について、83時間の残業は、36協定で定めることができる労働時間の上限の月45時間の2倍近い長時間であり、相当な長時間労働を強いる根拠となるものであって、公序良俗に違反するといわざるを得ず、管理者手当(管理定額残業)は時間外労働に対する手当として扱うべきではなく、月によって定められた賃金として時間外労働等の割増賃金の基礎とすべきであるとしました。

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