労働問題418 裁判官(労働審判官)1名と労働関係に関する専門的な知識経験を有する労働審判員2名により権利義務関係を踏まえた調停が試みられることが重要なのはどうしてですか。
この点は、労働審判を民事調停と比較して考えると分かりやすいでしょう。
民事調停を利用した場合、裁判官が調停期日の全ての時間に同席するとは限らず、ほとんどの時間は裁判官は調停の場に同席せず、調停が成立することになったとき等、わずかな時間しか調停の場に現れないということも珍しくありません。必ずしも労働問題の専門的な知識経験を有するとはいえない調停委員が、調停をまとめることばかりに熱心になってしまい、権利義務関係を十分に踏まえずに、言うことを聞きやすそうな当事者の説得にかかることもあります。当然のことですが、権利義務を踏まえた調停を行わないと、調停が不調に終わった場合に訴訟を提起した場合、調停委員から言われていたのとは異なる結論となる可能性が高くなってしまいます。
他方、労働審判手続では、裁判官(労働審判官)1名が、常時、期日に同席しており、労働関係に関する専門的な知識経験を有する労働審判員2名とともに、権利義務関係を踏まえた調停を行うため、調停内容は合理的なもの(社内で説明がつきやすいもの、労働者が納得しやすいもの)となりやすくなります。また、調停をまとめず、労働審判に対し異議を出して訴訟で争っても、労働審判は裁判官(労働審判官)1名と労働関係に関する専門的な知識経験を有する労働審判員2名により権利義務関係を踏まえて出されたものですから、労働審判の内容よりも自分に大幅に有利に解決する見込みが大きい事案はそれほど多くはありません。
弁護士法人四谷麹町法律事務所
代表弁護士 藤田 進太郎