この記事の結論
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明確な説明と労働者の署名押印があれば、有効性が認められやすい

不更新条項について、事前に説明会を実施し、労働者がこれを了承した上で署名押印・確認印を押印している場合は、意思表示が明確かつ客観的なものとして、合意による契約終了が認められる傾向にあります。

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説明が曖昧だと、その有効性が否定されることもある

更新限度に関する説明会を実施していても、その説明内容が曖昧である場合には、不更新条項・更新限度特約の有効性が認められないことがあります。

 821の記事で解説した雇止め法理のリスクを軽減する実務的な手法として、不更新条項や更新限度特約があります。これらがどのような場合に有効と認められるかを、裁判例から確認しておく必要があります。

 会社側専門の弁護士の立場から、不更新条項・更新限度特約の有効性に関する裁判例を解説します。

01不更新条項・更新限度特約とは

 雇止めの有効性に関連して問題となっているのが、不更新条項や更新限度特約です。不更新条項とは、有期労働契約について当該契約期間が満了した場合には更新しないことをあらかじめ合意しておくことをいいます。更新限度特約とは、有期労働契約を結ぶ際に、更新の回数の限度についてあらかじめ合意しておくことをいいます。裁判例では、ある程度の更新がなされている場合でも、更新限度特約などから解雇権濫用法理の類推適用が行われないケースがあります。

02有効性が認められた例

 近畿コカ・コーラボトリング事件(大阪地裁平成17年1月13日判決)や本田技研工事事件(東京地裁平成24年2月17日判決、東京高裁平成24年9月20日判決)は、次回を不更新とすること等について、「事前に説明会を聞いて了承した上で、不更新条項の記載のある本件各契約書を原告らに交付し、原告らはこれに署名押印した上、確認印も押印しているのであるから、その意思表示は明確かつ客観的なものというべき」として、会社と労働者との契約は合意により終了していると判示しました。

03有効性が認められなかった例

 一方、京都新聞COM事件(京都地裁平成22年5月18日判決)は、更新限度が3年であることについて説明会を実施したものの、その説明が曖昧であるとして、その有効性を認めませんでした。上記の有効例と対比すると、単に説明会を実施したという事実だけでなく、説明の内容が具体的かつ明確であったかが、決定的な違いを生んでいることが分かります。

04更新回数限度特約の有効性が認められた例

 報徳学園事件(最高裁第一小法廷平成22年9月9日決定)は、更新回数限度特約の有効性を認めた上で、専任教諭への登用の期待も合理性が乏しいとして雇止めを認めた原審を支持しています。この事件は、更新限度特約自体の有効性に加え、労働者側が主張する「更新への合理的期待」(本件では正規登用への期待)も否定された点で、会社側にとって参考になる事例です。

05制度の運用面が評価された例

 ダイキン工業事件(大阪地裁平成24年11月1日判決)は、有期労働契約の更新について、会社が明確な意思をもって2年6か月を更新の限度とすることとしていたことや、就業規則にもその旨の規定を設けていたこと、その代わりに無期の正社員として登用するための試験を実施していたことなどを指摘した上で、労働契約が2年6か月を超えて更新されることに対する合理的期待を有する余地はなかったと判示しました。この事例は、更新限度の明確化に加え、代替的な正社員登用の道筋を用意していたことが、会社側に有利な事情として評価された点が特徴的です。

06会社側が押さえておくべき視点

 これらの裁判例を踏まえると、会社側が不更新条項・更新限度特約を実効的に機能させるには、以下の点が重要です。第一に、単に契約書に条項を記載するだけでなく、説明会等で具体的かつ明確に説明し、労働者の理解と了承を得ることです。第二に、労働者から署名押印・確認印など、明確な意思表示の証拠を取得することです。第三に、更新限度の運用を制度として一貫させ、就業規則にも明記することです。第四に、可能であれば、正社員登用試験などの代替的なキャリアパスを用意し、更新限度が一方的な打ち切りではないことを示すことです。

 「説明会を実施した」という事実だけでは不十分であり、京都新聞COM事件のように、説明内容が曖昧であれば無効とされるリスクがある点に、特に注意が必要です。

07よくある質問(FAQ)

Q. 契約書に不更新条項を記載しておけば、それだけで有効ですか。

それだけでは不十分な場合があります。事前の説明会での明確な説明と、労働者の署名押印・確認印など、明確かつ客観的な意思表示の証拠が重要です。

Q. 説明会を実施していれば、更新限度特約は必ず有効ですか。

必ずしも有効とはなりません。説明会を実施していても、その説明内容が曖昧であれば、有効性が認められないことがあります(京都新聞COM事件)。

Q. 更新限度特約の有効性を高めるために、何をすればよいですか。

明確な意思をもって更新限度を定め、就業規則にも規定すること、可能であれば正社員登用試験等の代替パスを用意することが有効です(ダイキン工業事件参照)。

経営上のポイント 不更新条項・更新限度特約は、事前の説明会で明確に説明し、労働者が署名押印・確認印を押印している場合には、明確かつ客観的な意思表示として有効性が認められる傾向にあります(近畿コカ・コーラボトリング事件、本田技研工事事件)。他方、説明会を実施していても内容が曖昧であれば無効とされることもあります(京都新聞COM事件)。更新回数限度特約自体の有効性を認めた最高裁決定もあります(報徳学園事件)。会社が明確な意思をもって更新限度を定め、就業規則に明記し、正社員登用試験等の代替キャリアパスを用意していた事案では、更新への合理的期待自体が否定されています(ダイキン工業事件)。会社側としては、条項の記載だけでなく、具体的な説明と明確な意思表示の証拠取得、制度の一貫した運用が重要です。不更新条項・更新限度特約の整備は、会社側・使用者側専門の弁護士にご相談ください。具体的な事情に応じて、実務で使える方針をアドバイスします。
監修者 弁護士 藤田 進太郎

監修者

弁護士法人四谷麹町法律事務所 代表弁護士 藤田 進太郎

東京大学法学部卒業。2003年弁護士登録。日本弁護士連合会会員労働法制委員会委員・事務局次長・最高裁行政局との労働審判制度に関する協議会協議員、第一東京弁護士会労働法制委員会委員・研修部会副部会長、経営法曹会議会員・第112回経団連労働法フォーラム報告担当者、労働審判員連絡協議会特別会員、日本労働法学会会員、東京麹町ロータリークラブ会員・2023-24年度幹事。
講演・著作 / 「会社経営者のための問題社員対応講座」(YouTube)

日本全国各地の会社経営者の皆様へ

弁護士法人四谷麹町法律事務所代表弁護士の藤田進太郎です。私は、労働問題のストレスから会社経営者の皆様を解放したいという強い思いを持っており、日本全国各地の会社経営者のために、問題社員、退職勧奨、労働審判、残業代トラブルなどの労働問題の予防解決に当たっています。不更新条項・更新限度特約の整備でお困りでしたら、弁護士法人四谷麹町法律事務所にご相談ください。事務所会議室での経営労働相談のほか、ZoomやTeamsでのオンライン経営労働相談を実施しています。

最終更新日:2026年7月13日


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