みなし労働時間制の種類と近時の主な裁判例を教えてください。
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みなし労働時間制には3種類あり、要件・手続の充足が争点になる みなし労働時間制には、事業場外労働のみなし労働時間制、専門業務型裁量労働制、企画業務型裁量労働制があります。制度が適法に導入されているかが、実務上頻繁に争われます。 |
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「労働時間を算定し難いとき」の該当性は厳格に判断される 旅行添乗員の事業場外労働について、使用者の指揮監督が及んでいるとして「労働時間を算定し難いとき」に当たらないとした裁判例があります(阪急トラベルサポート第2事件、最高裁平成26年1月24日)。 |
目次
みなし労働時間制は、実労働時間の管理負担を軽減できる一方、適法な導入・運用がされていなければ、後に多額の未払残業代の請求につながるリスクがあります。近時の裁判例からは、裁判所がこの制度の適用要件を厳格に審査する傾向がうかがえます。
会社側専門の弁護士の立場から、みなし労働時間制の種類と、近時の主な裁判例を解説します。
01みなし労働時間制の3つの種類
実際の労働時間にかかわらず、一定の時間労働したものとみなして労働時間を計算する制度として、事業場外労働のみなし労働時間制、専門業務型裁量労働制(765・766・744の記事参照)、企画業務型裁量労働制(745・746の記事参照)の3種類があります。これらの制度が適法に導入されている場合、実労働時間の計算方法が、通常の計算方法とは異なることになります。
02制度の導入要件が争われる理由
使用者側がこれらの労働時間制を主張する場合、労働者側は、制度の導入に必要な要件・手続が充足されているかどうかを確認してくるのが通常です。みなし労働時間制は、実労働時間による計算という原則の例外にあたるため、導入要件を満たしていなければ、通常どおりの実労働時間に基づく残業代請求を受けることになります。この意味で、みなし労働時間制の適用の有無は、残業代トラブルにおける重要な争点となります。
03事業場外労働のみなし労働時間制の裁判例
事業場外労働のみなし労働時間制が争われた近時の裁判例としては、次のものがあります。
旅行添乗員について、事業場外業務開始前、事業場外業務実施中、事業場外業務終了後の3つの観点から使用者の指揮監督の態様を検討し、「労働時間を算定し難いとき」に当たるとはいえないとした、阪急トラベルサポート第2事件(最高裁第二小法廷平成26年1月24日判決)があります。携帯電話による指示・報告や、詳細な旅程管理が行われている場合には、事業場外にいても使用者の指揮命令が及んでいると評価され、みなし制の適用が否定されやすいことを示しています。
他方、旅費規定で出張・直行・直帰について所定労働時間労働したものとみなす旨が規定されている場合の出張・直行・直帰について、労働時間を算定し難い場合に当たるとして、事業場外みなし労働時間制の適用を肯定したヒロセ電機事件(東京地裁平成25年5月22日判決)もあります。事案ごとの指揮監督の実態によって、結論が分かれることが分かります。
04裁量労働制の裁判例
裁量労働制が争われた近時の裁判例としては、税理士事務所の従業員の業務が、専門業務型裁量労働制の対象業務である「税理士の業務」に該当するかが争われた事案において、「税理士の業務」とは、税理士法3条所定の税理士の資格を有し、税理士法18条所定の税理士名簿への登録を受けた者自身を主体とする業務をいうと判示したレガシィ事件(東京地裁平成25年9月26日判決)があります。税理士資格を持たない補助者的な立場の従業員には、この対象業務が及ばない可能性を示唆する重要な判断です。
05会社側が押さえておくべき視点
これらの裁判例から分かるのは、みなし労働時間制は、制度を導入しただけで安泰というものではなく、実際の運用実態が厳しく審査されるという点です。事業場外労働については、携帯電話やITツールによる指示・報告体制が、事実上の指揮監督とみなされないかを検証する必要があります。裁量労働制についても、対象業務該当性を、業務の名称ではなく実質から判断する必要があります(765・745の記事参照)。
なお、継続審議中の労働基準法改正法案では、企画業務型裁量労働制の対象業務に「課題解決提案営業」と「裁量的にPDCAを回す業務」を追加すること、特定高度専門業務・成果型労働制の創設が検討されています。制度の対象範囲が今後変わる可能性があるため、最新の法改正の動向にも注意しておく必要があります。
06よくある質問(FAQ)
Q. 外回りの営業社員には、常に事業場外みなし労働時間制が適用されますか。
当然には適用されません。携帯電話等で細かい指示・報告を求めている場合、使用者の指揮監督が及んでいるとして「労働時間を算定し難いとき」に当たらないとされることがあります(阪急トラベルサポート第2事件)。
Q. 税理士事務所の職員には、すべて専門業務型裁量労働制が適用できますか。
できません。「税理士の業務」は、税理士資格を有し税理士名簿に登録を受けた者自身を主体とする業務をいうとされており(レガシィ事件)、無資格の補助者的な業務には及ばない可能性があります。
Q. みなし労働時間制を導入していれば、残業代は一切発生しませんか。
発生しないとは限りません。制度が適法に導入・運用されていない場合には、実労働時間に基づく通常の割増賃金の支払義務が生じます。要件・手続の充足は重要な争点になります。
監修者
弁護士法人四谷麹町法律事務所 代表弁護士 藤田 進太郎
東京大学法学部卒業。2003年弁護士登録。日本弁護士連合会会員労働法制委員会委員・事務局次長・最高裁行政局との労働審判制度に関する協議会協議員、第一東京弁護士会労働法制委員会委員・研修部会副部会長、経営法曹会議会員・第112回経団連労働法フォーラム報告担当者、労働審判員連絡協議会特別会員、日本労働法学会会員、東京麹町ロータリークラブ会員・2023-24年度幹事。
講演・著作 / 「会社経営者のための問題社員対応講座」(YouTube)
日本全国各地の会社経営者の皆様へ
弁護士法人四谷麹町法律事務所代表弁護士の藤田進太郎です。私は、労働問題のストレスから会社経営者の皆様を解放したいという強い思いを持っており、日本全国各地の会社経営者のために、問題社員、退職勧奨、労働審判、残業代トラブルなどの労働問題の予防解決に当たっています。みなし労働時間制の導入や運用でお困りでしたら、弁護士法人四谷麹町法律事務所にご相談ください。事務所会議室での経営労働相談のほか、ZoomやTeamsでのオンライン経営労働相談を実施しています。
最終更新日:2026年7月13日