この記事の結論
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出勤停止「最長7日」では、解雇との間に大きなギャップが生じる

出勤停止の上限を7日程度に限定すると、7日の出勤停止でも改善しない場合に次の処分が諭旨解雇・懲戒解雇しかなくなり、「軽すぎる処分」と「重すぎる処分」しか選べなくなります。

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懲戒処分は段階的・比例的であるべきで、出勤停止はその中間段階を担う

懲戒処分は非違行為の内容・程度に応じて段階的に重くすることが原則です。出勤停止は「減給では軽すぎるが解雇は重すぎる」場面で機能する重要な中間的処分であり、日数の幅で重さを調整できます。

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最長6か月程度の無給出勤停止を定めておくことが現実的な落としどころ

国家公務員の停職は最長1年です。1年が長すぎると感じる場合でも、最長6か月程度の無給出勤停止を可能とする規定を設けておくことで、解雇に直結しない範囲で十分に重い処分を選択できます。

01出勤停止は解雇前の重要な懲戒処分

 就業規則を見直す際、「懲戒処分としての出勤停止の日数を、どれくらいに定めておくのが適切なのか」と悩む会社経営者は少なくありません。短すぎると抑止力に欠け、長すぎると重すぎる処分になってしまうため、判断が難しい項目です。

 出勤停止は、懲戒処分の中でも位置付けが非常に重要な処分です。戒告・けん責・減給といった比較的軽い処分よりも重く、退職の効果を伴う諭旨解雇・懲戒解雇よりは一段軽い処分として、いわば「中間」に位置します。

 会社経営者の中には「出勤停止は単に数日間休ませる処分」と捉えている方もいますが、実務上はそう単純ではありません。出勤停止は、一定期間、労務の提供を禁止し、原則として賃金も支払わない処分であり、社員に与える影響は決して小さくありません。だからこそ、出勤停止は、解雇に踏み切る前に選択できる極めて重要な懲戒処分です。非違行為の内容や程度によっては、「減給では軽すぎるが、いきなり解雇は重すぎる」という場面が必ず生じます。その際に適切な選択肢として機能するのが出勤停止です。

02国家公務員の懲戒規定が参考になる理由

 出勤停止の日数をどの程度に設定すべきかを考える際、実務上よく参考にされるのが、国家公務員の懲戒について定めた「人事院規則一二―〇(職員の懲戒)」です。この規則では、停職の期間について「1日以上1年以下」と明確に定められています。

 民間企業が国家公務員の規定にそのまま従う必要はありません。しかし、長年の運用を前提として制度設計されている点を踏まえると、「出勤停止という処分は、最大1年程度まで想定し得る」という考え方自体は十分に参考になります。

 特に重要なのは、「停職期間を一律に短期間に限定していない」という点です。非違行為の内容・悪質性・改善の可能性は事案ごとに大きく異なります。そのため、懲戒処分の重さを日数で調整できるよう一定の幅を持たせている点に、制度設計上の合理性があります。

 ここで重要なのは、「実際に1年の出勤停止を科すかどうか」ではなく、「それに近い重さの処分を選択できる余地を残しておくかどうか」です。

03出勤停止「最長7日」の就業規則が抱える問題点

 実務上、出勤停止の日数について「最長7日程度」と定めている就業規則をよく見かけます。一見すると現実的で使いやすい規定のようにも思えますが、会社経営者の立場から見ると、この設定には注意すべき問題があります。

 多くの就業規則では、出勤停止よりも重い懲戒処分として規定されているのは、降格・諭旨解雇(退職)・懲戒解雇程度に限られています。そのため、7日間の出勤停止を科してもなお非違行為が改善されない場合、次に選択できる処分が、いきなり退職の効果を伴う重大な懲戒処分になってしまうことがあります。

出勤停止と解雇系処分との間に生じるギャップ

7日間の出勤停止と、諭旨解雇・懲戒解雇との間には、処分の重さとして大きな隔たりがあります。「直ちに退職させるほどではない」と感じる事案であっても、就業規則上は他に選択肢がなく、不本意でも解雇系の処分に踏み切らざるを得ない状況に追い込まれることになります。これは会社にとっても社員にとっても望ましい状態ではありません。

 7日という数字自体に合理性があるわけではなく、単に「昔からそうしている」「何となく決めた」という理由で設定されているケースも多い点には、特に注意が必要です。就業規則は、実際にトラブルが起きたときに会社経営者を縛るルールになります。出勤停止を最長7日とする規定が、本当に将来の事案に対応できる内容になっているのか、一度立ち止まって見直すことが重要です。

04懲戒処分は段階的・比例的であるべき

 懲戒処分を検討する際、会社経営者が常に意識すべきなのは、「非違行為の内容や程度に応じて、処分の重さが比例しているか」という点です。軽微な非違行為に対して重すぎる処分を行えば、懲戒権の濫用として無効と判断されるリスクが高まります(労契法15条)。

 そのため、懲戒処分は一足飛びに重くするのではなく、段階的に重くしていくことが原則となります。注意・けん責・減給・出勤停止といった処分を経て、それでも改善が見られない場合に、初めて解雇系の処分を検討するという流れが、実務上も合理的です。

 この段階構造がきちんと機能するためには、それぞれの処分が「実質的な意味」を持っていなければなりません。出勤停止が数日程度に限定されている場合、「減給と大差がない」「抑止力として弱い」と評価され、処分の段階として十分に機能しないおそれがあります。

 出勤停止という処分には、日数の幅によって重さを調整できる余地があることが重要です。同じ「出勤停止」でも、数日間と数か月とでは社員に与える影響は大きく異なります。この調整幅が確保されていれば、「今回は○日間の出勤停止とするが、次に同様の行為があればより長期間の出勤停止を検討する」という形で、段階的な対応と明確な警告が可能になります。

05現実的な落としどころ:最長6か月程度の無給出勤停止

 出勤停止の日数について「最長1年」と定めることに対し、「さすがに長すぎるのではないか」「そこまでの処分は想定していない」と感じる会社経営者も多いでしょう。その感覚自体は決して不自然なものではありません。

 もっとも、就業規則に定めるのはあくまで選択肢の上限であり、必ず使わなければならないわけではありません。最長1年が長すぎると感じる場合の現実的な落としどころとして実務上お勧めできるのが、最長6か月程度の無給出勤停止を可能とする規定です。

6か月程度の無給出勤停止を定めておく意味

・数日の出勤停止とは明確に重さが異なり、かつ直ちに解雇に踏み切るほどではない事案に対応できる
・「今回は1か月」「次は3か月」「それでも改善しなければ6か月」と段階的に処分を重くする運用が可能
・解雇系処分に進む前の、実質的な最終警告として機能させられる
・社員に対して「次に同様の行為があれば退職を含めた判断になる」というメッセージを明確に伝えられる

 就業規則における出勤停止の日数設定は、「厳しく罰するため」ではなく、「解雇しか選択肢が残らない事態を避けるため」に行うものです。最長1年に抵抗がある場合であっても、少なくとも6か月程度まで対応できる規定を設けておくことが、会社経営者にとって現実的で安全な選択だといえます。

 なお、就業規則はトラブルが起きてから都合よく変更できるものではなく、事前にどれだけ想定して設計されているかがすべてです。「今は使わないかもしれない規定」こそが、将来のリスクを左右することを意識する必要があります。

経営上のポイント 出勤停止を最長7日程度に限定すると、出勤停止と解雇系処分の間に大きなギャップが生じ、「軽すぎる処分」か「重すぎる処分」しか選べなくなります。懲戒処分を段階的・比例的に行えるようにするため、最長6か月程度の無給出勤停止を可能とする規定を就業規則に設けておくことをお勧めします。これは社員を厳しく罰するためではなく、不必要に解雇を迫られる事態を避けるための備えです。アドバイスします。
SUPERVISOR 弁護士 藤田 進太郎

監修者

弁護士法人四谷麹町法律事務所 代表弁護士 藤田 進太郎

東京大学法学部卒業。2003年弁護士登録。日本弁護士連合会会員労働法制委員会委員・事務局次長・最高裁行政局との労働審判制度に関する協議会協議員、第一東京弁護士会労働法制委員会委員・研修部会副部会長、経営法曹会議会員・第112回経団連労働法フォーラム報告担当者、労働審判員連絡協議会特別会員、日本労働法学会会員、東京麹町ロータリークラブ会員・2023-24年度幹事。
講演・著作 / 「会社経営者のための問題社員対応講座」(YouTube)

日本全国各地の会社経営者の皆様へ

弁護士法人四谷麹町法律事務所代表弁護士の藤田進太郎です。私は、労働問題のストレスから会社経営者の皆様を解放したいという強い思いを持っており、日本全国各地の会社経営者のために、問題社員、労働審判、残業代トラブルなどの労働問題の予防解決に当たっています。問題社員、労働審判、残業代トラブルでお悩みでしたら、弁護士法人四谷麹町法律事務所にご相談ください。事務所会議室での経営労働相談のほか、ZoomやTeamsでのオンライン経営労働相談を実施しています。

Q&Aよくある質問

Q1. 出勤停止期間中の賃金は支払わなくてよいですか。

A. 懲戒処分としての出勤停止は、就業規則にその旨を定めていれば、その期間中の賃金を支払わない(無給とする)ことが認められます。これは、出勤停止が労務提供を禁止する処分であり、賃金が発生しない(ノーワーク・ノーペイの原則)ためです。ただし、長期間の無給出勤停止は社員への経済的影響が大きいため、処分の相当性(非違行為の重さと処分のバランス)が問われます。長期間の出勤停止を科す場合は、その合理性を慎重に検討してください。

Q2. 長期間(6か月など)の出勤停止が「重すぎる」として無効とされることはありませんか。

A. 出勤停止の日数を就業規則に定めていても、実際に科す処分が非違行為の内容・程度に照らして重すぎる場合は、懲戒権の濫用として無効とされるリスクがあります(労契法15条)。6か月の出勤停止を科すには、それに見合う重大な非違行為があることが必要です。就業規則に上限を6か月と定めること自体は問題ありませんが、実際の運用では、個々の事案ごとに処分の相当性を慎重に判断する必要があります。重い処分を科す場合は弁護士に相談することをお勧めします。

Q3. 現在の就業規則の出勤停止が「最長7日」になっています。これを「最長6か月」に変更することはできますか。

A. 就業規則の変更により、出勤停止の上限日数を延長することは可能です。ただし、懲戒に関する規定の変更は労働条件の不利益変更にあたる面があるため、変更の合理性・必要性を備え、適正な手続き(労働者代表からの意見聴取・周知・労基署への届出)を踏むことが必要です。また、変更後の規定は変更後の非違行為にのみ適用され、過去の行為に遡って適用することはできません。就業規則の変更は弁護士または社会保険労務士に相談のうえ進めることをお勧めします。

最終更新日:2026年2月25日


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