試用期間14日以内なら自由に解雇できるのか ― 解雇予告義務と解雇の有効性は別問題
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14日以内なら解雇予告は不要だが、自由に解雇できるわけではない 雇入れから14日以内の試用期間中の労働者には、解雇予告義務・解雇予告手当支払義務は生じません(労基法21条)。しかし、これは手続的な義務が免除されるにすぎず、解雇の有効性は別途問われます。 |
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解雇権濫用法理は試用期間中も適用される 試用期間中であっても、解雇には客観的に合理的な理由と社会通念上の相当性が必要です(労契法16条)。抽象的な理由や指導不足のまま解雇すると無効と判断されるリスクがあります。 |
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解雇が無効になれば、地位確認・バックペイのリスクがある 試用期間中・短期間の雇用であっても、解雇が無効と判断されれば労働契約が継続していたことになり、地位確認や未払賃金(バックペイ)の請求に発展します。 |
目次
01試用期間14日以内の解雇を巡る誤解
「試用期間中で、しかも雇入れから14日以内なのだから、解雇予告義務もなく、自由に解雇できるはずだ」と考える会社経営者は少なくありません。確かに、労働基準法上、試用期間中の労働者で雇入れから14日以内であれば、解雇予告義務および解雇予告手当支払義務は生じません(労基法21条)。
しかし、この点だけを捉えて「14日以内であれば、どのような理由でも解雇できる」と理解してしまうのは、典型的な誤解です。解雇予告義務がないということと、解雇が常に有効であるということは、全く別の問題だからです。
解雇予告制度は、あくまで解雇に際しての手続的・金銭的な義務を定めたものであり、解雇の有効性そのものを判断する基準ではありません(528番参照)。実務上、「試用期間だから問題ない」「まだ14日経っていないから大丈夫だ」と考えて安易に解雇した結果、後になって解雇無効を主張され、紛争に発展するケースも見受けられます。解雇予告義務が免除される場面ほど、かえって誤った安心感を持ってしまいがちです。
まず「14日以内であれば解雇予告は不要だが、解雇の有効性は別途問われる」という基本構造を正しく理解しておくことが重要です。
02解雇予告義務がないことと解雇が自由であることは別
試用期間中の労働者については、労基法21条により、雇入れの日から14日以内であれば、30日前の解雇予告や解雇予告手当の支払いは不要とされています。この規定は、試用期間が本採用に向けた見極め期間であることを踏まえ、短期間での雇用終了について使用者の負担を一定程度軽減する趣旨で設けられています。
しかし、この点をもって「試用期間中は特別扱いされており、通常の労働者とは全く異なる」と理解するのは適切ではありません。免除されるのは、解雇予告制度という一部の制度に限られます。
14日以内であれば「予告なしで解雇できる」だけであって、「理由がなくても解雇できる」わけではありません。解雇が有効かどうかは、労働契約法16条に定められているとおり、客観的に合理的な理由があり、社会通念上相当であるかによって判断されます。この判断枠組みは試用期間中であっても変わりません。「解雇予告が不要である」という事実に安心するのではなく、「解雇予告制度の適用がないにすぎない」という位置付けを正確に押さえておく必要があります。
03解雇権濫用法理は試用期間中も適用される
試用期間中の労働者であっても、解雇が許されるかどうかは解雇権濫用法理によって判断されます。これは、解雇が「客観的に合理的な理由を有し、社会通念上相当であること」を満たさない場合には解雇は無効になるという考え方です(労契法16条)。
もっとも、試用期間中の解雇(本採用拒否)については、判例上、通常の解雇よりも広い範囲で解雇の自由が認められると解されています(最高裁昭和48年12月12日・三菱樹脂事件判決)。試用期間は労働者の適性を観察・評価する期間であり、本採用後では知ることができなかった事実を理由として本採用を拒否することは、一定の合理性が認められます。
ただし、これは「広い範囲で認められる」というだけであって、「自由に解雇できる」という意味ではありません。本採用拒否も、客観的に合理的な理由があり社会通念上相当である場合にのみ認められます。実務上、試用期間中の解雇が問題となるのは、「能力不足」「勤務態度不良」といった理由を掲げて解雇したものの、その内容が抽象的であったり、十分な評価や指導が行われていなかったりするケースです。単に「期待していた水準に達していない」というだけでは、合理的な理由があるとは評価されにくくなります。
04個別法令・就業規則等による解雇制限
試用期間中であっても、解雇に関する制限は解雇権濫用法理だけにとどまりません。個別の法令や、労働協約、就業規則といったルールも引き続き適用されます。
例えば、労働基準法・男女雇用機会均等法・育児介護休業法などでは、一定の事由を理由とする解雇が禁止または制限されています(530番参照)。試用期間中であっても、これらの法令による解雇制限が外れることはありません。解雇理由が法令に抵触する場合には、14日以内であっても解雇は無効となります。
また、就業規則に解雇や本採用拒否に関する要件や手続が定められている場合には、試用期間中であってもその内容に従う必要があります。「試用期間中は自由に解雇できる」といった包括的な規定があったとしても、具体的な判断基準や手続が不明確であれば、会社側に不利に解釈されることがあります。労働協約が存在する場合には、その内容によって解雇の要件や手続が制限されていることもあります。「試用期間だから特別扱いされる」という発想ではなく、通常の労働者と同様に、法令や社内ルールの枠内で判断しなければならないという点を意識することが重要です。
05解雇が無効と判断される典型的なケース
試用期間中で雇入れから14日以内であっても、解雇が無効と判断されるケースは少なくありません。実務上問題となりやすいのは、解雇理由や判断過程が不十分なまま解雇に踏み切っている場合です。
解雇が無効と判断されやすい典型例
・「能力不足」「社風に合わない」「期待していた人物像と違った」など、抽象的な理由だけで解雇した
・業務内容や求められる役割を十分に説明していなかったのに「思っていた仕事ができていない」として解雇した
・短期間で一度も指導や注意を行わず、改善の機会を与えないまま解雇した
・何をもって不十分と判断したのか、その基準が曖昧なまま解雇した
これらの理由自体が直ちに否定されるわけではありませんが、具体的な事実や評価の経過が示されていなければ、客観的に合理的な理由があるとは評価されにくくなります。「14日以内だから大丈夫だろう」「まだ本採用前だから問題にならないだろう」と考えるのではなく、第三者から見て納得できる理由と経過があるかを意識することが重要です。試用期間中であっても、必要に応じて指導や助言を行い、その結果を踏まえて判断する姿勢が求められます。
06解雇無効となった場合の会社側リスク
試用期間中で雇入れから14日以内に解雇した場合であっても、解雇が無効と判断されると、会社側には重大な法的・経済的リスクが生じます。
解雇が無効とされた場合、法的には「解雇は存在しなかった」ものとして扱われます。その結果、当該労働者は解雇後も引き続き労働契約上の地位を有していたことになり、実際に就労していなかった期間についても賃金の支払義務(いわゆるバックペイ)が発生します。この賃金請求は、解雇から紛争解決までの期間が長引くほど金額が膨らみやすく、「短期間しか雇っていないから問題ない」という認識は通用しません。
また、賃金請求にとどまらず、「労働者としての地位確認」を求められるケースもあります。この場合、会社は復職を前提とした対応を迫られ、職場環境や人間関係に新たな問題が生じることもあります。解雇が無効となった場合のリスクは、「解雇予告手当を払うかどうか」といったレベルの問題ではありません。試用期間中であっても、解雇の判断を誤れば結果的に会社に大きな不利益をもたらす可能性があることを、十分に認識しておくべきです。
監修者
弁護士法人四谷麹町法律事務所 代表弁護士 藤田 進太郎
東京大学法学部卒業。2003年弁護士登録。日本弁護士連合会会員労働法制委員会委員・事務局次長・最高裁行政局との労働審判制度に関する協議会協議員、第一東京弁護士会労働法制委員会委員・研修部会副部会長、経営法曹会議会員・第112回経団連労働法フォーラム報告担当者、労働審判員連絡協議会特別会員、日本労働法学会会員、東京麹町ロータリークラブ会員・2023-24年度幹事。
講演・著作 / 「会社経営者のための問題社員対応講座」(YouTube)
日本全国各地の会社経営者の皆様へ
弁護士法人四谷麹町法律事務所代表弁護士の藤田進太郎です。私は、労働問題のストレスから会社経営者の皆様を解放したいという強い思いを持っており、日本全国各地の会社経営者のために、問題社員、労働審判、残業代トラブルなどの労働問題の予防解決に当たっています。問題社員、労働審判、残業代トラブルでお悩みでしたら、弁護士法人四谷麹町法律事務所にご相談ください。事務所会議室での経営労働相談のほか、ZoomやTeamsでのオンライン経営労働相談を実施しています。
Q&Aよくある質問
Q1. 試用期間中の解雇(本採用拒否)は、本採用後の解雇よりも認められやすいと聞きました。本当ですか。
A. 判例(三菱樹脂事件最高裁昭和48年12月12日)は、試用期間は労働者の適性を観察・評価する期間であり、本採用後では知り得なかった事実を理由とする本採用拒否は、通常の解雇よりも広い範囲で認められるとしています。ただし、「広く認められる」だけであって「自由にできる」わけではありません。本採用拒否にも客観的に合理的な理由と社会通念上の相当性が必要で、抽象的な理由や指導不足のまま行うと無効とされます。
Q2. 試用期間中の解雇でも、解雇理由を書面で示す必要がありますか。
A. 労働者から解雇理由証明書の交付を求められた場合は、試用期間中であっても交付する義務があります(労基法22条)。また、後の紛争に備える観点からも、解雇に至った具体的な事実・評価・指導の経過を記録に残しておくことが重要です。「抽象的な理由しか説明できない」状態での解雇は、無効と判断されるリスクが高くなります。解雇理由を客観的に説明できるよう、日頃から評価・指導の記録を残しておくことをお勧めします。
Q3. 試用期間中に適性がないと感じた場合、解雇以外にどのような対応がありますか。
A. まず、必要な指導・教育を行い、改善の機会を与えることが基本です。そのうえで、本人と話し合い、適性や本人の希望を踏まえて、配置転換や担当業務の変更を検討する余地もあります。また、双方が納得すれば、合意による退職(合意退職)という選択肢もあります。いずれの場合も、指導や話合いの経過を記録に残しておくことが、後のトラブル防止につながります。解雇は最後の手段と考え、慎重に対応することをお勧めします。
最終更新日:2026年2月25日