就業規則を定めていなくても懲戒解雇できますか。
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懲戒処分には就業規則に懲戒事由を定め、周知していることが必要 懲戒解雇などの懲戒処分をするためには、就業規則に懲戒事由を定め、かつこれを周知していなければなりません。これらを欠く懲戒処分は無効となります。 |
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常時10人未満で就業規則の作成義務がない会社でも、定めがなければ懲戒処分は不可 労基法上、就業規則の作成・届出義務が課せられていない会社(常時10人未満)であっても、就業規則に懲戒事由を定めていなければ懲戒処分はできません。 |
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普通解雇は就業規則に解雇事由の定めがなくても可能 懲戒処分とは異なり、普通解雇は就業規則に解雇事由を定めていなくても可能です。ただし、客観的に合理的な理由があり、社会通念上相当であることが必要です。 |
01懲戒処分には就業規則の定めと周知が必要
懲戒解雇といった懲戒処分をするためには、就業規則に懲戒事由を定め、かつ、これを周知していなければなりません。懲戒処分は、会社が労働者に対して制裁を科すという重大な不利益処分であるため、あらかじめ「どのような行為がどのような懲戒処分の対象となるのか」を就業規則に明示し、労働者に周知しておくことが求められます。
これは、罪刑法定主義に類似した考え方であり、事前にルールとして定められ周知されていない事由を理由に、後から懲戒処分を科すことは認められません。就業規則に懲戒事由の定めがない、または定めがあっても労働者に周知されていない場合には、懲戒処分は無効となります。
02就業規則の作成義務がない会社でも同じ
労働基準法は、常時10人以上の労働者を使用する事業場に対して、就業規則の作成・届出を義務付けています(労基法89条)。逆にいえば、常時10人未満の会社には、就業規則の作成・届出義務は課せられていません。
しかし、就業規則の作成・届出義務がないことと、就業規則がなくても懲戒処分ができることは別問題です。常時10人未満で就業規則の作成・届出義務が課せられていない会社であっても、就業規則に懲戒事由を定めていなければ、懲戒処分をすることはできません。
小規模な会社が陥りやすい誤解
「当社は従業員が10人未満で就業規則を作る義務がないから、就業規則がなくても問題社員を懲戒解雇できる」という理解は誤りです。懲戒処分をしたいのであれば、たとえ作成義務がない会社であっても、就業規則(またはこれに準じる規程)に懲戒事由を定め、労働者に周知しておく必要があります。
問題社員への懲戒処分を想定する会社は、規模にかかわらず、就業規則に懲戒事由を定めて整備しておくことが重要です。
03普通解雇との違い
懲戒処分(懲戒解雇)とは異なり、普通解雇は就業規則に解雇事由を定めていなくても可能です。普通解雇は、労働者に対する制裁ではなく、労働契約を継続することが困難となった事情を理由とする解雇であるため、懲戒処分のような「就業規則での事由の定めと周知」は必須の要件とはされていません。
ただし、就業規則に解雇事由の定めがなくても普通解雇ができるとはいえ、その解雇が有効となるためには、客観的に合理的な理由があり、社会通念上相当である必要があります(労契法16条。解雇権濫用法理。531番参照)。「就業規則に定めがないから自由に普通解雇できる」という意味ではありません。
懲戒処分と普通解雇の違い(就業規則の要否)
懲戒処分(懲戒解雇等)
就業規則に懲戒事由の定めと周知が必要。定めがなければ懲戒処分はできない。
普通解雇
就業規則に解雇事由の定めがなくても可能。ただし客観的合理的理由・社会通念上の相当性が必要(労契法16条)。
監修者
弁護士法人四谷麹町法律事務所 代表弁護士 藤田 進太郎
東京大学法学部卒業。2003年弁護士登録。日本弁護士連合会会員労働法制委員会委員・事務局次長・最高裁行政局との労働審判制度に関する協議会協議員、第一東京弁護士会労働法制委員会委員・研修部会副部会長、経営法曹会議会員・第112回経団連労働法フォーラム報告担当者、労働審判員連絡協議会特別会員、日本労働法学会会員、東京麹町ロータリークラブ会員・2023-24年度幹事。
講演・著作 / 「会社経営者のための問題社員対応講座」(YouTube)
日本全国各地の会社経営者の皆様へ
弁護士法人四谷麹町法律事務所代表弁護士の藤田進太郎です。私は、労働問題のストレスから会社経営者の皆様を解放したいという強い思いを持っており、日本全国各地の会社経営者のために、問題社員、労働審判、残業代トラブルなどの労働問題の予防解決に当たっています。問題社員、労働審判、残業代トラブルでお悩みでしたら、弁護士法人四谷麹町法律事務所にご相談ください。事務所会議室での経営労働相談のほか、ZoomやTeamsでのオンライン経営労働相談を実施しています。
Q&Aよくある質問
Q1. 就業規則は作成していますが、労働者に周知していません。懲戒処分はできますか。
A. 懲戒処分をするには、懲戒事由を就業規則に定めるだけでなく、これを労働者に周知していることが必要です。周知とは、労働者が就業規則の内容を知ろうと思えばいつでも知ることができる状態にしておくことをいいます(例:常時各作業場の見やすい場所に掲示・備付け、書面の交付、社内ネットワークでの閲覧など)。作成しただけで周知していない就業規則に基づく懲戒処分は、無効と判断されるリスクがあります。速やかに適切な方法で周知してください。
Q2. 就業規則に懲戒事由を定めれば、どんな行為でも懲戒解雇できますか。
A. できません。就業規則に懲戒事由を定めて周知していることは懲戒処分の前提条件ですが、それだけで懲戒処分が有効になるわけではありません。実際の行為が定められた懲戒事由に該当すること、かつ処分の内容が当該行為に照らして相当であること(懲戒権濫用にあたらないこと。労契法15条)が必要です。軽微な違反に懲戒解雇という重い処分を科せば、相当性を欠くとして無効とされます(出勤停止の日数設計について522番も参照)。
Q3. 就業規則がない小規模な会社です。問題社員に対応するには何から始めればよいですか。
A. まずは就業規則(懲戒規定・解雇規定・服務規律等を含む)を整備し、労働者に周知することをお勧めします。これにより、将来問題社員への懲戒処分が必要になった場合に対応できる基盤が整います。整備までの間に問題行動があった場合は、注意・指導を記録に残し、必要に応じて普通解雇や退職勧奨を検討することになりますが、いずれも慎重な判断が必要です。就業規則の整備や問題社員対応の進め方については、使用者側弁護士・社会保険労務士に相談することをお勧めします。
最終更新日:2026年2月25日