この記事の結論
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退勤時刻は、退出時刻・メール送信時刻・PCログ等から総合的に認定される

タイムカードに退勤時刻が記録されていない場合、勤務場所からの退出時刻、業務に関するメールの送信時刻、パソコンのログ記録といった証拠から総合的に判断して、退勤時刻が認定されるのが通常です。

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証拠がない期間も、控え目な概括的推認が許容される(東京地裁平成25年2月28日判決)

退勤時刻に関する客観的証拠がない期間でも、全証拠から総合判断して概括的かつ控え目に時間外労働時間数を推認することが許容されるとした裁判例があります。

01退勤時刻の認定方法

 タイムカードに退勤時刻が記録されていない場合、次のような証拠から総合的に判断して、退勤時刻が認定されるのが通常です。

退勤時刻の認定に用いられる証拠

・勤務場所(オフィス・工場等)からの退出時刻(入退室記録・警備システムのログ等)
・業務に関するメールの送信時刻(最終送信メールの時刻)
・パソコンのログ記録(最終操作時刻・シャットダウン時刻等)
・その他の客観的な証拠(業務日報・顧客との通話記録等)

 これらの証拠が残っている場合には、比較的明確に退勤時刻を認定することができます。会社側としても、これらの記録を保管し、正確な労働時間の把握に活用することが重要です。

02参考裁判例(東京地裁平成25年2月28日判決)

 参考になる裁判例として、東京地裁平成25年2月28日判決があります。この判決は、退勤時刻に関する客観的な証拠が全く残されていない期間の取扱いについて、次のとおり判示しました。

東京地裁平成25年2月28日判決の判示内容

「退社時刻(退勤時刻)について本件請求期間Aのように何ら客観的な証拠が残されていないという事実をもって、時間外労働時間の立証が全くされていないものとして取り扱うのは相当ではなく、本件に顕れた全証拠から総合判断して、ある程度概括的に、本件請求期間Bの時間外労働時間数を推認することも、それが控え目に行われる限り許容されるものというべきである。」

 この判決のポイントは、退勤時刻に関する客観的証拠がない期間であっても、それだけで時間外労働の立証が全くされていないとは扱わず、全証拠から概括的に(ただし控え目に)時間外労働時間数を推認することを認めた点です。

 会社側からすると、「タイムカードに退勤時刻がないから残業の証明はできないはず」という主張が通りにくいことを示した判例として重要です。客観的な証拠がない期間でも、一定の推認によって時間外労働が認定されるリスクがあることを認識しておく必要があります。

03会社経営者が取るべき実務上の対応

 この裁判例が示すとおり、退勤時刻の記録がないからといって残業代の請求リスクがなくなるわけではありません。会社としては、労働時間を正確に把握・管理するための仕組みを整えることが重要です。

 労働時間の把握・管理の手段としては、タイムカード(出退勤の押印・打刻を確実に行わせる)、ICカードによる入退室記録、PC・社内システムのログ記録などが考えられます。特に、タイムカードで退勤時刻を記録しない運用(「帰る際に押し忘れる」「記録しなくてよいと指示している」等)は、後日の残業代紛争において会社側に不利に働くリスクがあります。

 残業代請求を受けた場合は、保存されている労働時間記録・入退室記録・メール記録等を精査したうえで、対応方針を検討することが重要です。早期に使用者側弁護士に相談することをお勧めします(残業代請求への対応については残業代総合解説ページもご参照ください)。

経営上のポイント タイムカードに退勤時刻が記録されていない場合でも、退出時刻・メール送信時刻・PCログ等の証拠から退勤時刻が認定されます。客観的証拠がない期間でも、全証拠から概括的・控え目に時間外労働時間を推認することが許容されるとした裁判例(東京地裁平成25年2月28日)があります。「記録がないから請求できない」という主張は通らないと認識し、日頃から正確な労働時間管理の仕組みを整えることが重要です。アドバイスします。
監修者 弁護士 藤田 進太郎

監修者

弁護士法人四谷麹町法律事務所 代表弁護士 藤田 進太郎

東京大学法学部卒業。2003年弁護士登録。日本弁護士連合会会員労働法制委員会委員・事務局次長・最高裁行政局との労働審判制度に関する協議会協議員、第一東京弁護士会労働法制委員会委員・研修部会副部会長、経営法曹会議会員・第112回経団連労働法フォーラム報告担当者、労働審判員連絡協議会特別会員、日本労働法学会会員、東京麹町ロータリークラブ会員・2023-24年度幹事。
講演・著作 / 「会社経営者のための問題社員対応講座」(YouTube)

日本全国各地の会社経営者の皆様へ

弁護士法人四谷麹町法律事務所代表弁護士の藤田進太郎です。私は、労働問題のストレスから会社経営者の皆様を解放したいという強い思いを持っており、日本全国各地の会社経営者のために、問題社員、労働審判、残業代トラブルなどの労働問題の予防解決に当たっています。問題社員、労働審判、残業代トラブルでお悩みでしたら、弁護士法人四谷麹町法律事務所にご相談ください。事務所会議室での経営労働相談のほか、ZoomやTeamsでのオンライン経営労働相談を実施しています。

Q&Aよくある質問

Q1. 社員の自己申告の労働時間記録と、PCログ・入退室記録が食い違っています。どちらが優先されますか。

A. 客観的な記録(PCログ・入退室記録)と主観的な申告(自己申告)が食い違う場合、裁判所は通常、客観的な記録をより重視します。ただし、PCがついていても実際には離席して別の作業をしていた、入退室記録があっても途中で休憩していたなど、実際の労働時間を補正する事情がある場合は、その事情も考慮されます。記録の差異については、具体的な事情を整理したうえで弁護士に相談することをお勧めします。

Q2. タイムカードの打刻を社員が押し忘れた場合、残業代のリスクが生じますか。

A. タイムカードの退勤打刻漏れがあっても、本裁判例のとおり、他の証拠(メール・PCログ等)から退勤時刻が推認されるリスクがあります。また、打刻漏れが会社側の指示・黙認によるものであれば、会社がより不利な立場になりかねません。タイムカードや記録システムを適切に運用し、打刻漏れをなくす管理体制を整えることが重要です。

Q3. テレワーク中の社員の労働時間管理はどうすればよいですか。

A. テレワーク中は退出時刻の記録が難しくなりますが、PCのログ記録(ログイン・ログアウト時刻)、業務システムへのアクセス記録、業務メールの送受信時刻等が、退勤時刻の認定に用いられます。テレワーク中でも、始業・終業の報告(メール・チャット等)や業務日報の提出を義務付けるなど、労働時間管理の仕組みを整えることが重要です。適切な管理が困難な場合は、みなし労働時間制(事業場外みなし)の活用も検討できますが、適用要件の確認が必要です。

最終更新日:2026年2月25日


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