問題社員対応を弁護士が解説|会社経営を守るための法的リスク管理と対策
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1か月合計の端数を「30分未満切り捨て・30分以上切り上げ」する処理は通達上許容される 1か月における時間外・休日・深夜労働の各時間数の合計に1時間未満の端数がある場合、30分未満を切り捨て、30分以上を1時間に切り上げる処理は、労基法24条・37条違反としては扱わないとする通達があります。 |
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「切り捨てのみ」を行うことは、この通達が許容する取扱いではない 30分以上を1時間に切り上げず、30分未満の端数切り捨てのみを行うことは、この通達が許容する取扱いではありません。切り捨てだけを行うことはできません。 |
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本来は端数も含め、ありのままの残業時間で残業代を算定するのが正しい 端数を切り捨てることには労基法上の根拠がありません。端数についても残業時間に応じた残業代を支払うのが正しい処理であり、端数処理をせずに算定することをお勧めします。 |
01残業時間の端数処理に関する通達
「1か月の残業時間の合計に30分未満の端数がある場合、その30分未満の部分を切り捨てた時間を残業時間として残業代を算定すればよいか」というご質問をいただくことがあります。給与計算の事務を簡便にしたいという観点から、端数を切り捨てたいと考える会社は少なくありません。
この点については、まず端数処理に関する通達の内容を正確に理解しておく必要があります。1か月における時間外労働、休日労働及び深夜労働の各々の時間数の合計に1時間未満の端数がある場合に、30分未満の端数を切り捨て、それ以上を1時間に切り上げる処理をしても、常に労働者の不利になるものではなく、事務簡便を目的としたものと認められるから、労基法24条(賃金全額払い)及び37条(割増賃金)違反としては取り扱わないとする通達が存在します。
したがって、1か月の残業時間の合計に1時間未満の端数がある場合に、30分未満の端数を切り捨て、それ以上(30分以上)を1時間に切り上げる処理をしても、労基署の運用が変更されない限り、是正勧告を受ける可能性は低いといえます。
通達が許容する端数処理(1か月の合計に対して)
・30分未満の端数 → 切り捨て
・30分以上の端数 → 1時間に切り上げ
※ この切り捨てと切り上げを「セット」で行うことが前提です。
ここで重要なのは、この通達が許容しているのは、あくまで「30分未満は切り捨て、30分以上は切り上げる」という、切り捨てと切り上げをセットで行う処理だという点です。この処理は、切り捨てによって労働者に不利になる場合もあれば、切り上げによって有利になる場合もあり、トータルで見れば常に労働者の不利になるわけではないため、事務簡便を目的としたものとして許容されています。
02「切り捨てのみ」は許容されない
ご質問は「30分未満の部分を切り捨てる」という点に主眼がありますが、ここに注意すべき落とし穴があります。
切り捨てのみは通達の許容範囲外
30分以上を1時間に切り上げずに、30分未満の端数切り捨てのみを行うことは、この通達が許容する取扱いではありません。
切り上げを行わず切り捨てだけを行うと、その処理は常に労働者に不利となり、「事務簡便を目的とし、常に労働者の不利になるものではない」という通達の前提を満たさなくなるためです。
つまり、「30分未満は切り捨てるが、30分以上は切り上げない(実際の時間のままとする、あるいは同様に切り捨てる)」といった、会社にとって都合のよい部分だけを取り入れた処理は、通達が許容する取扱いには当たりません。このような切り捨てのみの処理は、労働者に一方的に不利益を与えるものであり、労基法24条・37条違反として問題となり得ます。端数処理を行うのであれば、必ず「30分未満は切り捨て、30分以上は1時間に切り上げる」というセットで行う必要があります。
03本来は端数も含めて残業代を支払うのが正しい処理
もっとも、ここまで述べた端数処理が「通達上、労基法違反として取り扱われない」というのは、あくまで行政上の取扱いの問題です。法律上の本来の姿とは異なります。
そもそも、1か月の残業時間数の合計から30分未満の時間を切り捨てることには、労基法上の根拠がありません。残業代は、実際に行われた時間外労働の時間に応じて支払われるべきものであり、30分未満の端数についても、その残業時間に応じた残業代を支払うのが正しい処理です。前述の通達は、事務簡便のために一定の端数処理を「違反として扱わない」としているにすぎず、端数を切り捨ててよいという積極的な根拠を与えるものではありません。
近年は給与計算システムも普及しており、端数処理をしない実際の残業時間をもとに残業代を算定することは、決して難しいことではありません。むしろ、端数処理を行うことで、労働者から「端数分の残業代が支払われていない」と指摘され、未払残業代の問題に発展するリスクもあります。
したがって、そのような端数処理は行わずに、ありのままの残業時間をもとに残業代を算定することをお勧めします。これが、後の紛争を防ぎ、適正な賃金支払いを実現するうえで、最も確実な方法です。
監修者
弁護士法人四谷麹町法律事務所 代表弁護士 藤田 進太郎
東京大学法学部卒業。2003年弁護士登録。日本弁護士連合会会員労働法制委員会委員・事務局次長・最高裁行政局との労働審判制度に関する協議会協議員、第一東京弁護士会労働法制委員会委員・研修部会副部会長、経営法曹会議会員・第112回経団連労働法フォーラム報告担当者、労働審判員連絡協議会特別会員、日本労働法学会会員、東京麹町ロータリークラブ会員・2023-24年度幹事。
講演・著作 / 「会社経営者のための問題社員対応講座」(YouTube)
日本全国各地の会社経営者の皆様へ
弁護士法人四谷麹町法律事務所代表弁護士の藤田進太郎です。私は、労働問題のストレスから会社経営者の皆様を解放したいという強い思いを持っており、日本全国各地の会社経営者のために、問題社員、労働審判、残業代トラブルなどの労働問題の予防解決に当たっています。問題社員、労働審判、残業代トラブルでお悩みでしたら、弁護士法人四谷麹町法律事務所にご相談ください。事務所会議室での経営労働相談のほか、ZoomやTeamsでのオンライン経営労働相談を実施しています。
Q&Aよくある質問
Q1. 1日ごとの残業時間について、15分未満を切り捨てる処理はできますか。
A. 1日ごとの労働時間について、15分単位や30分単位で端数を切り捨てる処理は、原則として認められません。本記事で説明した端数処理の通達は、あくまで「1か月の時間外・休日・深夜労働の各合計時間数」に1時間未満の端数が生じた場合の取扱いに関するものです。1日単位での切り捨ては、実際に働いた時間の賃金を支払わないことになり、労基法に反するおそれがあります。1分単位で正確に計算するのが原則です。
Q2. 通達どおりの端数処理をしていれば、未払残業代を請求されることはありませんか。
A. 通達どおりの処理(30分未満切り捨て・30分以上切り上げをセットで行う)をしていれば、労基署から是正勧告を受ける可能性は低いといえます。ただし、これは行政上の取扱いの問題であり、端数の切り捨てには労基法上の根拠がないため、労働者から端数分の残業代を請求された場合に、法的にどう判断されるかは別の問題です。リスクを確実に避けるには、端数処理をせず、ありのままの残業時間で算定するのが最も安全です。
Q3. 残業代の計算で生じた「1円未満の端数」も切り捨ててはいけませんか。
A. 賃金計算の結果生じた「金額の1円未満の端数」については、本記事の「時間数の端数」とは別の問題です。割増賃金の計算で1円未満(または50銭未満など)の端数が生じた場合に、一定の四捨五入等を行うことを違反として扱わないとする通達もあります。ただし、こちらも常に労働者に不利にならない処理であることが前提です。時間数の端数とは扱いが異なりますので、具体的な計算方法は社会保険労務士・弁護士に確認することをお勧めします。
最終更新日:2026年2月25日