解雇無効時の不就労日は出勤日数に含まれるか?行政通達(基発0710号)の解釈
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解雇が無効とされると、解雇日から復職日までの不就労日は労基法39条の出勤日数に算入される 平成25年7月10日付け基発0710第3号通達は、八千代交通事件最高裁判決を踏まえ、解雇無効の場合の解雇日から復職日までの不就労日を、出勤日数に算入される不就労日の典型例として明記しています。 |
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会社はバックペイに加え年次有給休暇の付与義務まで負う。不可抗力・経営障害・争議行為の休業日は全労働日から除外 解雇期間が長引くほど付与される年休が積み上がります。一方、不可抗力や使用者側の経営・管理上の障害、正当な争議行為による休業日は、衡平の観点から全労働日から除外される点も押さえておく必要があります。 |
会社が行った解雇が裁判所で無効と判断された場合、解雇日から復職日までの不就労日は、労基法39条(年次有給休暇)の出勤率算定においてどう扱われるのでしょうか。この問題は、解雇無効時のバックペイとあわせて見落とされやすいリスクです。平成25年7月10日付け行政通達(基発0710第3号)は、八千代交通事件最高裁第一小法廷判決(平成25年6月6日)を踏まえて、この点に関する行政解釈を明確にしました。以下、会社側の立場から、通達の内容と実務上の影響を解説します。
01行政通達(基発0710第3号)の概要
平成25年7月10日付け基発0710第3号通達は、労基法39条の出勤率算定について、次の三つの区分を明確にしています。
①全労働日の意味
年次有給休暇の算定の基礎となる「全労働日」とは、就業規則等に定められた所定休日を除いた日をいいます。所定の休日に労働させた場合でも、その日は全労働日には含まれません。
②出勤日数に算入される不就労日(原則)
労働者の責めに帰すべき事由によるとはいえない不就労日は、原則として出勤日数に算入すべきものとして全労働日に含まれます。典型例として、裁判所の判決により解雇が無効と確定した場合や、労働委員会の救済命令により会社が解雇を取り消した場合の、解雇日から復職日までの不就労日が挙げられています。
③全労働日から除外される不就労日(例外)
労働者の責めに帰すべき事由によらない場合であっても、㋐不可抗力による休業日、㋑使用者側に起因する経営・管理上の障害による休業日、㋒正当な同盟罷業その他正当な争議行為により労務の提供が全くなされなかった日については、当事者間の衡平の観点から全労働日から除外されます。
02八千代交通事件最高裁判決との関係
この通達は、八千代交通(年休権)事件最高裁第一小法廷平成25年6月6日判決(労判1075号21頁)の判示内容を踏まえた行政解釈です。同判決は、無効な解雇によって就労できなかった日は「労働者の責めに帰すべき事由によるとはいえない不就労日」に当たり、出勤率算定において出勤日数に算入すべきものと判示しました。
行政通達は、この最高裁判決の射程を整理し、「解雇無効の場合」を②の典型例として明記するとともに、全労働日から除外される不就労日(経営障害・争議行為等)との区別を明らかにしています。今後の裁判実務においても、おおむねこの通達の解釈に沿った判断がなされるものと考えられます。判例と通達が同じ方向を向いている以上、会社としてはこの前提で備えておくのが安全です。
03会社側が受けるリスクと実務上の対応
この通達が確認するとおり、解雇が無効とされた場合、会社は、①バックペイ(解雇期間中の賃金支払義務)に加えて、②解雇期間中の不就労日が出勤日数に算入されることで年次有給休暇の付与要件を満たし、年次有給休暇の付与義務まで生じる可能性があります。二段構えの負担になる、ということです。
特に、解雇期間が長期にわたった場合、たとえば訴訟が1年から2年続いたようなケースでは、その期間中に年次有給休暇が複数回にわたって付与され、未消化の有給休暇が相当な日数まで積み上がる可能性があります。この有給休暇は、復職後に取得されるか、退職時の買取の問題に発展するかのいずれかとなり、いずれにしても会社の追加負担になります。
ですから、解雇を検討している会社は、この点まで含めた総合的なリスク計算を行ったうえで判断することが重要です。解雇に踏み切るよりも、退職勧奨による合意退職を先に検討することが、実務上のリスク管理として有効な場面も多くあります。目先の「辞めさせる」ことだけを見て動くと、後で見えていなかったコストに直面することになりかねません。
04よくある質問(FAQ)
Q. 解雇無効の場合、必ず年次有給休暇の付与義務が発生しますか?
発生する可能性が高いといえます。解雇期間中の不就労日が出勤日数に算入されることで出勤率8割以上の要件を満たし、年次有給休暇が付与されます。ただし、付与される日数は在籍期間や解雇前の出勤率によって異なります。
Q. 不可抗力や経営上の都合による休業の場合はどうなりますか?
行政通達が示すとおり、不可抗力による休業日および使用者側に起因する経営・管理上の障害による休業日は、全労働日から除外されます。これらの日は出勤日数に算入されません。解雇無効の場合とは取扱いが異なる点に注意が必要です。
Q. 解雇が有効と認められるためには、どのような準備が必要ですか?
客観的合理的な理由(労契法16条)の存在が必要です。具体的には、注意指導の書面での記録、就業規則に基づく懲戒処分の履践、問題行為の証拠保全などが欠かせません。これらが不十分な状態での解雇は、無効となるリスクが高まります。実施の前に会社側専門の弁護士に相談することをお勧めします。
Q. 解雇後に労働者から労働審判を申し立てられた場合、どう対応すればよいですか?
労働審判は、申立書を受け取ってから第1回期日までの期間が短く、準備の時間が限られます。受け取ったらすぐに会社側専門の弁護士に相談し、答弁書の作成と証拠の収集を速やかに進める必要があります。労働審判は初回期日の準備が結果を大きく左右します。
監修者
弁護士法人四谷麹町法律事務所 代表弁護士 藤田 進太郎
東京大学法学部卒業。2003年弁護士登録。日本弁護士連合会会員労働法制委員会委員・事務局次長・最高裁行政局との労働審判制度に関する協議会協議員、第一東京弁護士会労働法制委員会委員・研修部会副部会長、経営法曹会議会員・第112回経団連労働法フォーラム報告担当者、労働審判員連絡協議会特別会員、日本労働法学会会員、東京麹町ロータリークラブ会員・2023-24年度幹事。
講演・著作 / 「会社経営者のための問題社員対応講座」(YouTube)
日本全国各地の会社経営者の皆様へ
弁護士法人四谷麹町法律事務所代表弁護士の藤田進太郎です。私は、労働問題のストレスから会社経営者の皆様を解放したいという強い思いを持っており、日本全国各地の会社経営者のために、問題社員、退職勧奨、労働審判、残業代トラブルなどの労働問題の予防解決に当たっています。解雇無効リスクや年次有給休暇への対応でお悩みでしたら、弁護士法人四谷麹町法律事務所にご相談ください。事務所会議室での経営労働相談のほか、ZoomやTeamsでのオンライン経営労働相談を実施しています。
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最終更新日:2026年7月1日