この記事の結論
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就業規則の兼業禁止規定が前提。それだけでは解雇はもちろん重い処分も難しい

就業時間外の行動は自由が原則で、兼業を禁止するには就業規則に規定を置いておく必要があります。規定に違反しているというだけでは、解雇どころか重い懲戒処分も難しいのが実情です。

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業務への支障・名誉信用毀損・競業のいずれかが必要。段階的な対応が原則

これらの事情がない単なる規定違反は、注意指導にとどめるのが相当と判断されやすい場面です。口頭注意→書面指導→懲戒処分という段階を踏んでから、解雇の可否を慎重に検討します。

01前提:就業規則の兼業禁止規定が必要

就業時間外の行動は自由が原則

 就業時間外の行動は自由であるのが原則です。ですから、社員の兼業を禁止するためには、就業規則に兼業禁止を定めて、これを労働契約の内容にしておく必要があります。就業規則に兼業禁止の規定がなければ、そもそも兼業を理由として処分すること自体が難しくなります。

 兼業(副業・アルバイト)は、2018年以降の政府の副業・兼業推進方針もあり、社会的に容認される方向に向かっています。就業規則に兼業禁止規定がある場合であっても、その規定の有効性や適用範囲が争われる可能性がある点には注意が必要です。「うちの就業規則には禁止と書いてあるから大丈夫」と単純に考えるのは、少し早計です。

02処分に必要な事情

3つの事情のいずれかが必要

 就業規則に兼業禁止規定があることを前提として、何らかの処分をするためには、次のいずれかの事情が必要になります。

①業務遂行への支障
兼業により十分な休養が取れないなどして、本来の業務遂行に支障を来す場合です。兼業による疲労・睡眠不足等が本業の業務に悪影響を及ぼしているという、具体的な事実が必要です。

②会社の名誉・信用等を害する行為
アルバイトの内容・態様が、会社の名誉や信用を害するような場合です。会社の社会的評価を著しく低下させるような業態でのアルバイトなどが、これに当たります。

③競業他社での兼業
競業関係にある他社でアルバイトをしている場合です。会社の営業秘密や顧客情報が漏えいするリスクがあり、競業避止義務違反の観点からも問題になります。

上記の事情がない場合は処分が難しい

 ①〜③のいずれの事情もなく、単に就業規則の兼業禁止規定に違反して無断でアルバイトをしていたというだけでは、解雇はもちろん、重い懲戒処分も難しいケースが多いのが実情です。副業・兼業を後押しする社会的な流れの中では、軽微な違反として注意指導にとどめるのが相当と判断される可能性があります。「規則違反=重い処分」と短絡的に結びつけないことが大切です。

よくある会社経営者の誤解

 「就業規則に兼業禁止と書いてあるから、無断アルバイトが発覚したら即解雇できる」→ 原則として誤りです。就業規則の兼業禁止規定への違反というだけで即解雇することは、解雇権濫用として無効となる可能性が高いです。業務への支障・名誉信用毀損・競業等の具体的事情がなければ、解雇は難しいと考えてください。

 「就業規則にはないが、無断アルバイトは常識的にダメだから処分できる」→ 誤りです。就業規則に兼業禁止の規定がなければ、兼業を理由とした処分は法的な根拠を欠きます。まずは就業規則に兼業禁止規定を整備することが先決です。

03実務上の対応手順

段階的な対応が基本

 企業秩序を乱すようなアルバイトを辞めるよう注意指導しても辞めようとしない場合は、書面で注意指導し、それでも改善しない場合に懲戒処分を検討する、という流れが基本です。

 解雇までは難しい事案が多く、紛争になりやすいため、解雇に踏み切る場合には、その有効性について慎重な検討が必要です。具体的には、①就業規則の兼業禁止規定の有効性・適用範囲、②業務への支障・名誉信用毀損・競業等の具体的事情の有無、③注意指導・懲戒処分の積み重ねの有無、④解雇の相当性、という4点を弁護士と十分に検討したうえで判断することが重要です。急いで解雇に踏み込むより、事情の確認と段階を踏むことが、結局は近道になります。

経営上のポイント 無断アルバイトを理由とする解雇は難しい事案が多く、紛争になりやすいため、慎重な検討が必要です。まず、兼業禁止を定めた就業規則の規定があることが前提となり、そのうえで、業務遂行への支障・会社の名誉信用の毀損・競業他社での兼業のいずれかの事情が処分の要件となります。事情がなければ注意指導にとどめるのが原則で、口頭注意→書面指導→懲戒処分という段階を踏んでから、解雇の可否を弁護士と十分に検討してください。就業規則に兼業禁止規定がない場合は、規定の整備がまず先決です。問題社員の解雇の進め方や就業規則の見直しについて、早めに会社側専門の弁護士にご相談ください。具体的な事情に応じて、実務で使える方針をアドバイスします。
監修者 弁護士 藤田 進太郎

監修者

弁護士法人四谷麹町法律事務所 代表弁護士 藤田 進太郎

東京大学法学部卒業。2003年弁護士登録。日本弁護士連合会会員労働法制委員会委員・事務局次長・最高裁行政局との労働審判制度に関する協議会協議員、第一東京弁護士会労働法制委員会委員・研修部会副部会長、経営法曹会議会員・第112回経団連労働法フォーラム報告担当者、労働審判員連絡協議会特別会員、日本労働法学会会員、東京麹町ロータリークラブ会員・2023-24年度幹事。
講演・著作 / 「会社経営者のための問題社員対応講座」(YouTube)

日本全国各地の会社経営者の皆様へ

弁護士法人四谷麹町法律事務所代表弁護士の藤田進太郎です。私は、労働問題のストレスから会社経営者の皆様を解放したいという強い思いを持っており、日本全国各地の会社経営者のために、問題社員、退職勧奨、労働審判、残業代トラブルなどの労働問題の予防解決に当たっています。問題社員、労働審判、残業代トラブルでお悩みでしたら、弁護士法人四谷麹町法律事務所にご相談ください。事務所会議室での経営労働相談のほか、ZoomやTeamsでのオンライン経営労働相談を実施しています。

最終更新日:2026年7月1日


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