この記事の結論
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休職制度があるのに即解雇すると、専門医の「回復見込みなし」の診断がない限り解雇権濫用のリスクが高い

私傷病休職制度があるにもかかわらず、精神疾患の発症を理由にいきなり普通解雇することは、休職させても回復の見込みが客観的に乏しい旨の専門医の診断・意見がある場合でない限り、解雇権濫用(労契法16条)として無効となるリスクが高いです。

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正しい手順は、休職命令→回復状況の確認→休職期間満了→復職可否判断。業務起因性がある場合は特に慎重に

まず就業規則の私傷病休職制度を適用し、主治医・産業医の意見を踏まえて対応します。業務上の原因が疑われる場合は、療養期間中の解雇制限(労基法19条)にも注意が必要です。

01精神疾患社員の即解雇は原則として解雇権濫用になる

休職制度があるのに適用しない解雇は、無効のリスクが高い

 私傷病に関する休職制度があるにもかかわらず、精神疾患を発症したために債務の本旨に従った労務提供ができないことを理由として、いきなり普通解雇するのは、お勧めできません。休職させても回復の見込みが客観的に乏しいといった内容の専門医の診断または意見があるような場合でない限り、解雇権を濫用したもの(労契法16条)として解雇が無効と判断されるリスクが高いからです。

 就業規則に私傷病休職制度を設けるということは、「業務外の傷病によって働けなくなった場合でも、一定期間は労働契約を維持し、回復を待つ」という会社の姿勢を、制度として定めているということです。その制度がありながら、精神疾患の発症を理由にいきなり解雇してしまうと、自ら定めた制度の趣旨に反することになり、解雇の相当性が否定されるリスクがあります。せっかくの制度が、かえって会社の足元をすくうことにもなりかねません。

よくある会社経営者の誤解

 「精神疾患で仕事ができなくなったのだから、解雇は当然だ」→ 原則として誤りです。私傷病休職制度がある場合は、まず休職制度を適用することが必要です。制度を適用せずに即解雇することは、回復の見込みがない旨の専門医の診断がない限り、解雇権濫用として無効となるリスクが高くなります。

 「休職させても意味がないから、すぐに解雇すべきだ」→ 慎重な判断が必要です。「回復の見込みが客観的に乏しい」かどうかは、会社の主観的な判断ではなく、専門医の診断・意見に基づく必要があります。会社が独断で判断して即解雇することは、重大なリスクを伴います。

02正しい対応手順(休職制度の適正な運用)

就業規則の休職制度に基づく段階的対応

 精神疾患を発症した社員への適正な対応は、次の手順を踏むことです。焦って結論を急がず、制度に沿って一段ずつ進めることが、結局は会社を守ることになります。

①休職命令の発令
就業規則の私傷病休職制度に基づき、休職命令を発令します。休職期間、休職中の賃金、休職期間満了後の扱いについて、書面で明確にしておきます。

②休職期間中の状況確認
主治医・産業医の意見を踏まえて、回復の状況を定期的に確認します。復職を急がせたり、不用意に接触したりしないよう配慮が必要です。

③休職期間満了時の復職可否判断
就業規則所定の休職期間が満了する時点で、主治医・産業医の意見に基づき、復職が可能かどうかを判断します。

④休職期間満了による退職・解雇の検討
休職期間満了の時点で復職が不可能と判断された場合に、就業規則の定めに従って、休職期間満了による退職または解雇を検討します。

業務起因性がある場合は、とりわけ慎重に

 精神疾患の発症に、業務上の原因(過重労働・ハラスメント等)が関与している可能性がある場合には、さらに慎重な対応が必要です。業務上の負傷・疾病の療養のための休業期間中は、解雇が制限されています(労基法19条)。精神疾患の業務起因性が疑われる場合には、私傷病休職として扱ってよいのかという入り口の判断からして難しいため、早い段階で会社側専門の弁護士に相談することが重要です。

経営上のポイント 私傷病休職制度があるにもかかわらず、精神疾患を発症した社員をいきなり普通解雇することは、休職させても回復の見込みが客観的に乏しい旨の専門医の診断・意見がある場合でない限り、解雇権濫用(労契法16条)として無効となるリスクが高く、お勧めできません。正しい対応は、①休職命令の発令、②休職期間中の状況確認(主治医・産業医の関与)、③休職期間満了時の復職可否判断、④休職期間満了による退職・解雇の検討、という手順を踏むことです。業務起因性が疑われる場合は、療養期間中の解雇制限(労基法19条)にも関わり、とりわけ慎重な対応が必要です。休職・復職対応の進め方について、早めに会社側専門の弁護士にご相談ください。具体的な事情に応じて、実務で使える方針をアドバイスします。
監修者 弁護士 藤田 進太郎

監修者

弁護士法人四谷麹町法律事務所 代表弁護士 藤田 進太郎

東京大学法学部卒業。2003年弁護士登録。日本弁護士連合会会員労働法制委員会委員・事務局次長・最高裁行政局との労働審判制度に関する協議会協議員、第一東京弁護士会労働法制委員会委員・研修部会副部会長、経営法曹会議会員・第112回経団連労働法フォーラム報告担当者、労働審判員連絡協議会特別会員、日本労働法学会会員、東京麹町ロータリークラブ会員・2023-24年度幹事。
講演・著作 / 「会社経営者のための問題社員対応講座」(YouTube)

日本全国各地の会社経営者の皆様へ

弁護士法人四谷麹町法律事務所代表弁護士の藤田進太郎です。私は、労働問題のストレスから会社経営者の皆様を解放したいという強い思いを持っており、日本全国各地の会社経営者のために、問題社員、退職勧奨、労働審判、残業代トラブルなどの労働問題の予防解決に当たっています。問題社員、労働審判、残業代トラブルでお悩みでしたら、弁護士法人四谷麹町法律事務所にご相談ください。事務所会議室での経営労働相談のほか、ZoomやTeamsでのオンライン経営労働相談を実施しています。

最終更新日:2026年7月1日


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