この記事の結論
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労働契約法5条は、陸上自衛隊事件・川義事件等の判例法理を明文化した規定である

「必要な配慮」の内容は業種・業態・個々の労働者の状況等によって異なり、精神疾患との関係では長時間労働の解消・早期対応・ハラスメント防止等が含まれます。

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違反時は債務不履行に基づく損害賠償責任を負い、消滅時効は改正民法により原則5年である

令和2年4月施行の改正民法166条1項により、権利を行使できることを知った時から5年とされていますが、契約締結時期によっては経過措置が適用される場合があります。

 労働契約法5条とは、使用者が労働契約に伴い労働者の生命・身体等の安全を確保するために必要な配慮を行うべき義務(安全配慮義務)を明文化した規定であり、平成20年3月1日から施行されています。それ以前から判例上認められていた安全配慮義務が、法律の条文として明示されました。

 本ページでは、労働契約法第5条の条文内容・立法趣旨・「必要な配慮」の具体的内容・違反した場合の法的効果について、会社側専門の弁護士が解説します。

01労働契約法第5条の条文内容

 結論:労働契約法第5条は「使用者は、労働契約に伴い、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をするものとする」と規定し、平成20年3月1日から施行されています。労働契約法第5条(労働者の安全への配慮)は、次のとおり規定しています。

 労働契約法第5条は、平成20年3月1日から施行されました。それ以前から判例上認められていた安全配慮義務(陸上自衛隊事件・川義事件等の最高裁判例)を法律の条文として明文化したものです。

02立法趣旨

 結論:同条は、判例上認められてきた安全配慮義務を確認的に明文化したものであり、厚生労働省の通達(基発0810第2号・平成24年8月10日「労働契約法の施行について」)でもその趣旨が説明されています。同通達は「通常の場合、労働者は、使用者の指定した場所に配置され、使用者の供給する設備、器具等を用いて労務の提供を行うものであるから、使用者は、こうした労働の性質に由来する危険から労働者を保護するよう配慮すべき義務を負っている。この趣旨を確認的に規定したものである」と説明しています。

 つまり、労働関係においては使用者が職場環境を管理・支配する立場にある以上、労働者の安全を確保する義務を負うことは当然であり、同条はそのことを確認的に明文化したものといえます。同通達では、陸上自衛隊事件・川義事件が参考判例として挙げられています。

03「必要な配慮」の具体的内容

 結論:「必要な配慮」の具体的内容は業種・業態・個々の労働者の状況等によって異なりますが、精神疾患との関係では、長時間労働の解消・メンタルヘルス不調のサインへの早期対応・ハラスメントの防止解消・産業医との連携などが含まれます。時間外労働の管理・受診勧奨・業務軽減等が具体的な内容として挙げられます。

 特に、東芝うつ病解雇事件最高裁判決(平成26年3月24日)は、「使用者は、必ずしも労働者からの申告がなくても、その健康に関わる労働環境等に十分な注意を払うべき安全配慮義務を負っている」と判示しており、社員からの申告がない場合でも能動的な配慮が必要であることが示されています。

04違反した場合の法的効果

 結論:安全配慮義務違反があった場合、使用者は債務不履行(民法415条)に基づく損害賠償責任を負い、消滅時効は改正民法166条1項により権利を行使できることを知った時から5年です。不法行為(民法709条・715条)に基づく請求と競合する場合は、労働者にとって有利な構成が選択されます。

 なお、安全配慮義務違反に基づく損害賠償請求権の消滅時効は、令和2年4月1日施行の改正民法により、権利を行使することができることを知った時から5年(民法166条1項1号)とされています。ただし、施行日前に締結された雇用契約に基づく請求については、経過措置により旧法下の10年の消滅時効期間が適用される場合がありますので、個別の事情に応じた確認が必要です。この点は、会社側にとって重要なリスク要因です。安全配慮義務違反リスクへの対応・精神疾患社員への対応方針の設計については、弁護士法人四谷麹町法律事務所にご相談ください。

「必要な配慮」の実践比較|適切な対応/NGな対応

○ 適切な対応 ✕ NGな対応(安全配慮義務違反のリスク)
長時間労働管理・ハラスメント防止を具体的に実践する 「必要な配慮」を抽象的な理念にとどめ具体策を講じない
消滅時効が長期に及ぶことを踏まえ日常的に記録を残す 数年後に証拠が失われることを想定せず記録を残さない
債務不履行構成のリスクも踏まえて対応する 不法行為責任のみを想定し備えを怠る
通達・判例を踏まえて就業規則・体制を更新する 施行当時の古い理解のまま運用を続ける

05よくある質問(FAQ)

Q. 労働契約法第5条に違反した場合、どのような法的責任を負いますか。

労働契約法第5条(安全配慮義務)違反があった場合、使用者は債務不履行(民法415条)に基づく損害賠償責任を負います。損害の範囲は、治療費・休業損害・後遺障害逸失利益・慰謝料などに及びます。また、消滅時効は改正民法166条1項により権利を行使できることを知った時から原則5年とされていますが、契約締結時期によっては旧法の10年が適用される場合もありますので、長期間にわたってリスクが続くことになります。

Q. 精神疾患との関係で「必要な配慮」として何が求められますか。

精神疾患との関係では、長時間労働の解消・時間外労働の適切な管理・メンタルヘルス不調のサインへの早期対応(受診勧奨・業務軽減等)・ハラスメントの防止・解消・産業医との連携などが求められます。また、東芝事件最高裁判決により、社員からの申告がなくても能動的な配慮が必要であることが示されています。

Q. 安全配慮義務の消滅時効が5年であることはどのような意味を持ちますか。

令和2年4月施行の改正民法により、人の生命・身体の侵害による不法行為の消滅時効も、権利を行使できることを知った時から5年(民法724条の2)に統一されました。そのため、安全配慮義務違反(債務不履行)と不法行為のいずれの構成でも、短期の時効期間は5年で共通することが多くなっています。他方、権利行使が可能な時から数える長期の期間については、債務不履行が10年であるのに対し、不法行為は20年(民法724条2号)とされており、この点で違いが残っています。具体的な構成の選択は、事案に応じて弁護士と検討することをお勧めします。

経営上のポイント 労働契約法5条は、陸上自衛隊事件・川義事件等の判例法理を明文化した規定であり、精神疾患との関係では長時間労働の解消・早期対応・ハラスメント防止等の「必要な配慮」が求められます。違反時は債務不履行に基づく損害賠償責任を負い、消滅時効は改正民法により原則5年(契約締結時期により経過措置あり)であることを踏まえたリスク管理が重要です。安全配慮義務に関する代表的な最高裁判例とあわせて、必要な配慮の具体化について会社側専門の弁護士にご相談ください。具体的な事情に応じて、実務で使える方針をアドバイスします。
監修者 弁護士 藤田 進太郎

弁護士法人四谷麹町法律事務所 代表弁護士 藤田 進太郎

東京大学法学部卒業。2003年弁護士登録。日本弁護士連合会会員労働法制委員会委員・事務局次長・最高裁行政局との労働審判制度に関する協議会協議員、第一東京弁護士会労働法制委員会委員・研修部会副部会長、経営法曹会議会員・第112回経団連労働法フォーラム報告担当者、労働審判員連絡協議会特別会員、日本労働法学会会員、東京麹町ロータリークラブ会員・2023-24年度幹事。
講演・著作 / 「会社経営者のための問題社員対応講座」(YouTube)

日本全国各地の会社経営者の皆様へ

弁護士法人四谷麹町法律事務所代表弁護士の藤田進太郎です。私は、労働問題のストレスから会社経営者の皆様を解放したいという強い思いを持っており、日本全国各地の会社経営者のために、問題社員、退職勧奨、労働審判、残業代トラブルなどの労働問題の予防解決に当たっています。労働契約法第5条・安全配慮義務の履行でお悩みでしたら、弁護士法人四谷麹町法律事務所にご相談ください。事務所会議室での経営労働相談のほか、ZoomやTeamsでのオンライン経営労働相談を実施しています。

最終更新日:2026年7月10日


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