この記事の要点

従来の雇止め法理では解雇権濫用の類推適用(濫用論)で処理されていたため、有期契約労働者からの申込みは要件とされていませんでした。労契法19条は承諾みなしという構成を採用したため、有期契約労働者による更新または締結の申込みが必須の要件として明示されました。この申込みは異議の表明で足ります。

1. 従来の雇止め法理との比較

 従来の雇止め法理では、解雇権濫用法理の類推適用(濫用論)で処理されていたため、有期契約労働者からの有期労働契約の更新または締結の申込みは要件とされていませんでした。雇止めが権利の濫用として「無効」という効果が生じる構成だったからです。

2. 労契法19条が申込みを要件とした理由

 これに対し、労契法19条は「有期労働契約の申込みに対する使用者の承諾を擬制(みなす)することにより有期労働契約の更新または成立を認める」という承諾みなしの構成を採用しています。

 承諾みなしという法的構成上、承諾の対象となる「申込み」が存在することが論理的に不可欠です。申込みのない承諾はあり得ないからです。そのため、有期契約労働者による有期労働契約の更新または締結の申込みが新たに要件として明示されることになりました。

3. 「申込み」の要件は緩やかに解釈される

 「更新の申込み」や「締結の申込み」があったといえるためには、有期契約労働者が雇止めに対し異議を表明したと評価できれば足りるとされています(詳細は175番参照)。明示的な申込みの意思表示である必要はなく、雇止めに対する反対の意思表示が使用者に伝われば足りると解されています。

4. 実務上の注意点——申込みの有無の記録化

 実務上は、雇止めに際して労働者から異議が申し立てられた場合は、その事実を記録に残すことが重要です。「異議が申し立てられた」→「申込みあり」→「労契法19条の要件を満たした」というフローで雇止めが争われる可能性があるため、対応を慎重に進める必要があります。

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弁護士 藤田 進太郎

監修者

弁護士法人四谷麹町法律事務所 代表弁護士 藤田 進太郎

東京大学法学部卒業。2003年弁護士登録。日本弁護士連合会会員労働法制委員会委員・事務局次長・最高裁行政局との労働審判制度に関する協議会協議員、第一東京弁護士会労働法制委員会委員・研修部会副部会長、経営法曹会議会員・第112回経団連労働法フォーラム報告担当者、労働審判員連絡協議会特別会員、日本労働法学会会員、東京麹町ロータリークラブ会員・2023-24年度幹事。
講演・著作 /  「会社経営者のための問題社員対応講座」(YouTube)

 

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弁護士法人四谷麹町法律事務所代表弁護士の藤田進太郎です。私は、労働問題のストレスから会社経営者の皆様を解放したいという強い思いを持っており、日本全国各地の会社経営者のために、問題社員、労働審判、残業代トラブルなどの労働問題の予防解決に当たっています。問題社員、労働審判、残業代トラブルでお悩みでしたら、弁護士法人四谷麹町法律事務所にご相談ください。事務所会議室での経営労働相談のほか、ZoomやTeamsでのオンライン経営労働相談を実施しています。

 

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最終更新日 2026/04/10


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