この記事の要点

6時間超の勤務で休憩を与えることは使用者の強行的な義務であり、社員との合意で免除することはできない

労基法34条は強行規定であり、社員が同意していても、休憩なしの合意は無効となります

「休憩なし」の合意は労基法13条により無効となり、労基法34条が定める労働条件が適用される

合意が無効であっても、使用者が実際に休憩を与えなければ労基法34条違反となります

就業規則・雇用契約・労使協定でも「休憩なし」を定めることはできない

いかなる形の合意・規定であっても、労基法34条の基準を下回る内容は無効です

違反した場合は刑事罰の対象となるほか、残業代請求のリスクも生じる

「社員が希望していた」「忙しかったから」という理由は免責事由にはなりません

01労基法34条の強行規定性

 労働基準法34条は、使用者が社員に対して一定以上の休憩を与えることを義務付けた規定です。同条は強行規定であり、使用者と社員の合意によっても、この規制の適用を排除することはできません。

 「強行規定」とは、当事者の意思にかかわらず強制的に適用される法律上の規定をいいます。労働基準法の多くの規定は強行規定として設けられており、社員が不利益を受ける方向での合意や就業規則の定めは無効となります。休憩時間に関する規制もこの強行規定の一つです。

強行規定と任意規定の違い
強行規定は当事者の合意によって排除できない規定です。一方、任意規定は当事者の合意によって異なる定めをすることが許される規定です。休憩時間の下限(6時間超で45分、8時間超で1時間)は強行規定であり、これを下回る合意は無効となります。ただし、休憩を法律上の最低基準より多く与えることは問題ありません。

02社員との合意によって休憩なしにすることはできない

 6時間を超えて働かせる場合に休憩時間を与えることは労基法34条により使用者に義務付けられていますので、6時間を超えて働かせる場合に休憩時間をなしにする旨社員と合意したとしても当該合意は無効となります。

 したがって、6時間を超えて働かせる場合に休憩時間をなしにすることはできません。社員が「休憩はいらない」「休憩なしで働きたい」と希望していても、6時間を超える労働に対して休憩を与えない状態は法律違反となります。

よくある誤解——これも全て違法です

「本人が『休憩なしでいい』と言っているから問題ない」
社員の同意があっても、6時間超の勤務で休憩なしとすることはできません。社員の意思で強行規定の適用を排除することはできないからです。

「就業規則で『休憩なし』と定めている」
就業規則が労基法34条の基準を下回る内容であれば、その部分は無効となります(労基法13条)。

「忙しくて休憩を取る時間がなかった」
業務の繁忙を理由に休憩を与えなかった場合も、労基法34条違反となります。繁忙期においても適切な休憩を与えることは使用者の義務です。

03労基法13条による合意の無効と効果

 労働基準法13条は、「この法律で定める基準に達しない労働条件を定める労働契約は、その部分については無効とする。この場合において、無効となった部分は、この法律で定める基準による。」と定めています。

 これにより、「休憩なし」の合意や就業規則の定めがあったとしても、その部分は無効となり、代わりに労基法34条が定める休憩時間の基準(6時間超8時間以内の場合は45分以上、8時間超の場合は1時間以上)が当然に適用されることになります。合意や就業規則の定めが無効になるだけでなく、自動的に法律上の基準が適用される点が重要です。

04違反した場合のリスクと実務上の注意点

 労基法34条の休憩規定に違反した場合は、6か月以下の懲役または30万円以下の罰金という刑事罰の対象となります(労基法119条1号)。また、適切な休憩を与えていなかった時間が労働時間として算入され、残業代請求のリスが生じます。

リスクの種類 内容
刑事罰 6か月以下の懲役または30万円以下の罰金(労基法119条1号)
残業代請求リスク 休憩として取り扱っていた時間が労働時間として算入され、割増賃金の請求対象となる可能性
行政指導リスク 労働基準監督署による是正勧告・指導の対象となる可能性

 実務上の対応として、就業規則に休憩時間を適切に規定し、実態として休憩が取得できる環境を整備することが重要です。繁忙期においても休憩を確保する業務体制の設計については、使用者側弁護士・会社側弁護士に相談することをお勧めします。

05まとめ

 6時間を超えて働かせる場合に休憩時間を与えることは、労基法34条により使用者に義務付けられた強行規定です。社員との合意によって「休憩なし」とすることはできません。「休憩なし」の合意は労基法13条により無効となり、労基法34条が定める休憩時間の基準が当然に適用されます。

 社員が「休憩はいらない」と希望していても、就業規則で「休憩なし」と定めていても、いかなる形の合意・規定であっても、労基法34条の基準を下回る内容は無効です。違反した場合は刑事罰・残業代請求・行政指導のリスがあります。

SUPERVISOR 弁護士 藤田 進太郎

監修者

弁護士法人四谷麹町法律事務所 代表弁護士 藤田 進太郎

東京大学法学部卒業。2003年弁護士登録。日本弁護士連合会会員労働法制委員会委員・事務局次長・最高裁行政局との労働審判制度に関する協議会協議員、第一東京弁護士会労働法制委員会委員・研修部会副部会長、経営法曹会議会員・第112回経団連労働法フォーラム報告担当者、労働審判員連絡協議会特別会員、日本労働法学会会員、東京麹町ロータリークラブ会員・2023-24年度幹事。
講演・著作 / 「会社経営者のための問題社員対応講座」(YouTube)

日本全国各地の会社経営者の皆様へ

弁護士法人四谷麹町法律事務所代表弁護士の藤田進太郎です。私は、労働問題のストレスから会社経営者の皆様を解放したいという強い思いを持っており、日本全国各地の会社経営者のために、問題社員、労働審判、残業代トラブルなどの労働問題の予防解決に当たっています。休憩時間の法的規制対応・就業規則の整備・残業代トラブルの予防でお悩みでしたら、弁護士法人四谷麹町法律事務所にご相談ください。事務所会議室での経営労働相談のほか、ZoomやTeamsでのオンライン経営労働相談を実施しています。

Q&Aよくある質問

Q1. 社員が「休憩はいらない」と同意していても、6時間超の勤務で休憩なしにすることはできますか。

A. できません。労基法34条は強行規定であり、社員の同意があっても6時間を超える勤務で休憩なしとすることはできません。「休憩なし」の合意は労基法13条により無効となり、法律上の休憩基準が当然に適用されます。

Q2. 就業規則や雇用契約で「休憩なし」と定めた場合はどうなりますか。

A. その部分は労基法13条により無効となります。無効となった部分には自動的に労基法34条が定める休憩時間の基準が適用されます。就業規則や雇用契約に「休憩なし」と定めていても、実際に休憩を与えなければ労基法34条違反となります。

Q3. 繁忙期で休憩を取らせることができなかった場合はどうなりますか。

A. 業務の繁忙を理由に休憩を与えなかった場合も、労基法34条違反となります。刑事罰(6か月以下の懲役または30万円以下の罰金)の対象となるほか、休憩を与えなかった時間が労働時間として算入され残業代請求の対象ともなります。繁忙期においても休憩を確保できる業務体制の整備が必要です。

Q4. 休憩を短縮したい場合はどうすればよいですか。

A. 法律上の下限(6時間超8時間以内の場合は45分、8時間超の場合は1時間)を下回ることはできません。この範囲内で就業規則に休憩時間を規定することが必要です。なお、休憩を短縮する代わりに早退させるなどの対応については、実質的な労働時間の変更として就業規則の整備が必要な場合があります。具体的な対応については使用者側弁護士・会社側弁護士に相談することをお勧めします。

最終更新日:2026年5月10日



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