この記事の要点

企画業務型裁量労働制の適用要件は3つ——①労使委員会の設置・5分の4以上の多数決議・届出 ②就業規則・労働協約への規定 ③対象業務への従事

3つすべての要件を満たして初めて適法に裁量労働制を適用できます

要件①は専門業務型(「労使協定の締結・届出」)と異なり、「労使委員会の設置」と「委員の5分の4以上の多数による議決」が必要——専門業務型より要件が格段に厳格

労使委員会には、使用者側委員と労働者側委員(労働者の過半数組合または過半数代表者が任期・指名等に同意した者)が必要です

要件②③は専門業務型(305番)と基本的に同様——就業規則・労働協約への規定と対象業務への従事が必要

就業規則が労働者に周知されていることも必要です

3要件を欠く場合は適用が認められず、実労働時間に基づく残業代請求を受けるリスがある

専門業務型より要件が厳格なため、手続きに不備が生じやすい制度です

01企画業務型裁量労働制の3つの適用要件——概要

 企画業務型裁量労働制を適用するためには、以下の3つの要件を満たす必要があります(労基法38条の4)。

番号 要件の内容 根拠
労使委員会が設置された事業場において、当該労使委員会が委員の5分の4以上の多数による議決により労基法38条の4第1項各号に掲げる事項に関する決議をし、かつ、使用者が当該決議を労働基準監督署長に届け出ること 労基法38条の4第1項・第2項
就業規則や労働協約において企画業務型裁量労働制について定めて労働契約の内容とすること 就業規則・労働協約
対象労働者を対象業務に就かせること 労基法38条の4第1項柱書

02要件①——労使委員会の設置と5分の4以上の多数決議・届出

労使委員会の設置要件

 企画業務型裁量労働制を導入するためには、まず「労使委員会」を設置することが必要です。労使委員会とは、賃金・労働時間その他の当該事業場における労働条件に関する事項を調査審議し、事業主に対し当該事項について意見を述べることを目的とする委員会です(労基法38条の4第1項)。

 労使委員会には、使用者側の委員と労働者側の委員が参加します。労働者側の委員は、当該事業場の労働者の過半数で組織する労働組合(過半数労組がない場合は労働者の過半数を代表する者)が任期・指名等に同意した者でなければなりません(労基則24条の2の3第1項)。

5分の4以上の多数決議で定める事項(労基法38条の4第1項各号)

 労使委員会の委員の5分の4以上の多数による議決(決議)により、以下の事項を定める必要があります。

決議で定めるべき事項
1号 対象業務(事業の運営に関する事項についての企画・立案・調査・分析業務のうち、当該業務の性質上遂行の方法を大幅に労働者の裁量にゆだねる必要があり、使用者が具体的な指示をしないこととする業務)
2号 対象労働者の範囲(対象業務を適切に遂行するための知識、経験等を有する労働者)
3号 対象労働者の労働時間として算定される時間(みなし労働時間)
4号 対象労働者の健康及び福祉を確保するための措置(健康・福祉確保措置)
5号 対象労働者からの苦情の処理に関する措置(苦情処理措置)
6号 使用者は、対象労働者に適用されることについて当該対象労働者の同意を得なければならないこと及び同意しなかった当該労働者に対して不利益な取扱いをしてはならないこと

 決議後、使用者は当該決議を所轄の労働基準監督署長に届け出ることが必要です(労基法38条の4第2項)。また、決議には有効期間(3年以内が望ましい)を設け、有効期間の始期・終期を定めておく必要があります。

03要件②——就業規則・労働協約への規定と労働契約の内容とすること

 労使委員会の決議・届出だけでなく、就業規則や労働協約において企画業務型裁量労働制について定めて、これを労働契約の内容とすることも必要です。就業規則・労働協約の内容が決議の内容と整合していることも重要です。

 また、305番(専門業務型の要件②)と同様に、就業規則が労働者に周知されていること(労基法106条)が労働契約の内容とするための前提となります。

04要件③——対象労働者を対象業務に就かせること

 企画業務型裁量労働制は、決議で定めた対象業務に決議で定めた対象労働者(「当該業務を適切に遂行するための知識、経験等を有する労働者」)を就かせる場合にのみ適用されます。決議で定めた対象労働者の範囲に含まれない労働者には適用できませんし、対象業務以外の業務に従事させている場合にも適用できません。

 また、労基法38条の4第1項6号(02節で解説した6号)により、対象労働者に適用されることについて個々の労働者の同意を得ることも必要です。同意しなかった労働者に対して不利益な取扱いをしてはなりません。

05専門業務型との要件比較

比較項目 専門業務型(305番) 企画業務型(本記事)
要件①の方法 労使協定の締結・届出 労使委員会の設置+5分の4以上の多数決議+届出
決議事項の数 5号(+本人同意等) 6号(対象労働者の範囲・本人同意が追加)
本人同意の必要性 2024年4月以降は必要 当初から必要(6号で明示)
要件②③ 就業規則等への規定・対象業務への従事 同様(就業規則等への規定・対象業務への従事)
総合的な難度 比較的手続きが簡明 労使委員会の設置・運営が必要であり格段に厳格

06まとめ

 企画業務型裁量労働制を適用するためには、①労使委員会を設置し委員の5分の4以上の多数決議を行って所轄労基署長に届け出ること、②就業規則・労働協約への規定と労働契約の内容とすること、③対象労働者(知識・経験等を有する労働者)を対象業務に就かせること(個人の同意も必要)——の3要件を満たす必要があります。専門業務型裁量労働制(305番)と比べて要件が格段に厳格であり、特に労使委員会の設置・維持・運営という実務上の負担が大きい制度です。企画業務型裁量労働制の適正な導入については、使用者側弁護士・会社側弁護士に相談することをお勧めします。アドバイスします。

SUPERVISOR 弁護士 藤田 進太郎

監修者

弁護士法人四谷麹町法律事務所 代表弁護士 藤田 進太郎

東京大学法学部卒業。2003年弁護士登録。日本弁護士連合会会員労働法制委員会委員・事務局次長・最高裁行政局との労働審判制度に関する協議会協議員、第一東京弁護士会労働法制委員会委員・研修部会副部会長、経営法曹会議会員・第112回経団連労働法フォーラム報告担当者、労働審判員連絡協議会特別会員、日本労働法学会会員、東京麹町ロータリークラブ会員・2023-24年度幹事。
講演・著作 / 「会社経営者のための問題社員対応講座」(YouTube)

日本全国各地の会社経営者の皆様へ

弁護士法人四谷麹町法律事務所代表弁護士の藤田進太郎です。私は、労働問題のストレスから会社経営者の皆様を解放したいという強い思いを持っており、日本全国各地の会社経営者のために、問題社員、労働審判、残業代トラブルなどの労働問題の予防解決に当たっています。企画業務型裁量労働制の導入・就業規則の整備・残業代トラブルの予防でお悩みでしたら、弁護士法人四谷麹町法律事務所にご相談ください。事務所会議室での経営労働相談のほか、ZoomやTeamsでのオンライン経営労働相談を実施しています。アドバイスします。

Q&Aよくある質問

Q1. 企画業務型裁量労働制の適用要件は何ですか。

A. ①労使委員会を設置し委員の5分の4以上の多数による議決(決議)を行って所轄労基署長に届け出ること、②就業規則・労働協約に企画業務型裁量労働制について定めて労働契約の内容とすること、③対象労働者(知識・経験等を有する労働者で個人の同意も必要)を対象業務に就かせること——の3要件です。

Q2. 企画業務型裁量労働制の労使委員会とはどのような委員会ですか。

A. 賃金・労働時間その他の当該事業場における労働条件に関する事項を調査審議し、事業主に対し当該事項について意見を述べることを目的とする委員会です(労基法38条の4第1項)。労働者側の委員は、当該事業場の労働者の過半数で組織する労働組合(または過半数代表者)が任期・指名等に同意した者でなければなりません。

Q3. 労使委員会の決議で定めるべき事項は何ですか。

A. ①対象業務(1号)、②対象労働者の範囲(2号)、③みなし労働時間(3号)、④健康・福祉確保措置(4号)、⑤苦情処理措置(5号)、⑥本人同意の取得と不利益取扱いの禁止(6号)——の6事項です。専門業務型(労使協定の5項目)よりも項目数が多く、特に「対象労働者の範囲」と「本人同意」の規定が追加されています。

Q4. 企画業務型と専門業務型の要件の違いを教えてください。

A. 最大の違いは要件①です。専門業務型は「労使協定の締結・届出」で済みますが、企画業務型は「労使委員会の設置」という追加負担があり、委員の5分の4以上の多数決議(5分の1超が反対すれば決議できない)が必要です。また、企画業務型は決議事項に「対象労働者の範囲」と「本人同意」が含まれ、個々の労働者の同意を取る必要があります。

最終更新日:2026年5月10日



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