この記事の要点

企画業務型裁量労働制の対象業務となり得る具体例は、経営企画・組織編成・人事制度・教育研修計画・財務計画・広報企画・営業方針策定・生産計画の8業務

いずれも「調査・分析+計画・立案」という基本パターンを持ちます

「企画業務型裁量労働制の対象業務となり得る」という表現であり、実際に309番の4要件を満たすかどうかは個別の業務実態で判断される

例に近い業務であっても、要件を満たさない場合は対象業務に当たりません

いずれの例も「部署」が担当する業務ではなく「個々の労働者」が遂行を命じられた業務の実態で判断される

同じ経営企画部門に所属していても、全員が対象業務に当たるわけではありません

01企画業務型裁量労働制の対象業務となり得る8つの業務例

 309番で解説した対象業務の4要件を踏まえ、企画業務型裁量労働制の対象業務となり得る具体的な業務例は以下の8つです。

番号 部署・分野 業務の内容
経営企画 経営状態・経営環境等について調査及び分析を行い、経営に関する計画を策定する業務
経営企画(組織編成) 現行の社内組織の問題点やその在り方等について調査及び分析を行い、新たな社内組織を編成する業務
人事・労務(制度策定) 現行の人事制度の問題点やその在り方等について調査及び分析を行い、新たな人事制度を策定する業務
人事・労務(教育研修) 業務の内容やその遂行のために必要とされる能力等について調査及び分析を行い、社員の教育・研修計画を策定する業務
財務・経理 財務状態等について調査及び分析を行い、財務に関する計画を策定する業務
広報 効果的な広報手法等について調査及び分析を行い、広報を企画・立案する業務
営業企画 営業成績や営業活動上の問題点等について調査及び分析を行い、企業全体の営業方針や取り扱う商品ごとの全社的な営業に関する計画を策定する業務
生産企画 生産効率や原材料等に係る市場の動向等について調査及び分析を行い、原材料等の調達計画も含め全社的な生産計画を策定する業務

02各業務例に共通する特徴——「調査・分析+計画・立案」が基本パターン

 上記①〜⑧の業務例に共通するのは、「〇〇について調査及び分析を行い、△△の計画を策定(立案・編成)する業務」というパターンです。309番の対象業務の4要件のうち、要件(2)「企画、立案、調査及び分析の業務」に対応して、まず現状を調査・分析した上で企画・立案という創造的な作業を行う業務が対象業務の典型例とされています。

8業務例の共通パターン 【ステップ1】現状の問題点・状態・動向等を「調査及び分析」する
【ステップ2】調査・分析結果に基づいて「計画策定・立案・編成」という創造的な作業を行う

例えば③人事制度策定であれば、「現行の人事制度の問題点を調査・分析する」(ステップ1)→「新たな人事制度の設計・立案を行う」(ステップ2)という流れです。この「調査分析+計画立案」という組み合わせが企画業務型裁量労働制の対象業務の核心です。

03実務上の注意点——業務例に近い仕事でも要件を満たさない場合がある

 上記①〜⑧はあくまで「対象業務となり得る業務の例」であり、実際にこれらの例に近い業務を行っているからといって、自動的に309番の4要件を満たすわけではありません。

業務例に近くても対象業務に当たらない場合の例

・経営企画部に所属しているが、実際には上司の指示通りに資料を集めてまとめるだけの業務(→ 要件(4)「具体的な指示をしないこととする業務」を満たさない)

・人事部に所属しているが、採用面接・日常的な労務管理など個別の業務運営を担当しているだけで、人事制度の策定等は行っていない(→ 要件(2)「企画・立案・調査・分析の業務」を満たさない)

・営業企画部に所属しているが、個々の顧客を担当する日常的な営業活動がメインの業務(→ 要件(1)「事業の運営に関する事項」を満たさない可能性)

 また、上記①〜⑧の業務を担当している部署に所属する労働者全員が対象業務に当たるわけではなく、個々の労働者が使用者から遂行を命じられた具体的な業務の内容が309番の4要件を満たすかどうかで判断されます。

04まとめ

 企画業務型裁量労働制の対象業務となり得る業務例として、①経営企画(経営計画策定)、②経営企画(組織編成)、③人事・労務(人事制度策定)、④人事・労務(教育研修計画策定)、⑤財務・経理(財務計画策定)、⑥広報(広報企画・立案)、⑦営業企画(全社的営業方針・計画策定)、⑧生産企画(全社的生産計画策定)の8業務が示されています。

 いずれも「調査・分析+計画・立案」という基本パターンを持つ創造的な業務です。ただし、これらはあくまで「対象業務となり得る」例であり、実際には309番の4要件を満たすかどうかが個々の業務実態で判断されます。自社の業務が対象業務に当たるかどうかの判断については、使用者側弁護士・会社側弁護士に相談することをお勧めします。アドバイスします。

SUPERVISOR 弁護士 藤田 進太郎

監修者

弁護士法人四谷麹町法律事務所 代表弁護士 藤田 進太郎

東京大学法学部卒業。2003年弁護士登録。日本弁護士連合会会員労働法制委員会委員・事務局次長・最高裁行政局との労働審判制度に関する協議会協議員、第一東京弁護士会労働法制委員会委員・研修部会副部会長、経営法曹会議会員・第112回経団連労働法フォーラム報告担当者、労働審判員連絡協議会特別会員、日本労働法学会会員、東京麹町ロータリークラブ会員・2023-24年度幹事。
講演・著作 / 「会社経営者のための問題社員対応講座」(YouTube)

 

日本全国各地の会社経営者の皆様へ

弁護士法人四谷麹町法律事務所代表弁護士の藤田進太郎です。私は、労働問題のストレスから会社経営者の皆様を解放したいという強い思いを持っており、日本全国各地の会社経営者のために、問題社員、労働審判、残業代トラブルなどの労働問題の予防解決に当たっています。企画業務型裁量労働制の対象業務の判断・導入支援・残業代トラブルの予防でお悩みでしたら、弁護士法人四谷麹町法律事務所にご相談ください。事務所会議室での経営労働相談のほか、ZoomやTeamsでのオンライン経営労働相談を実施しています。アドバイスします。

Q&Aよくある質問

Q1. 企画業務型裁量労働制の対象業務の具体例にはどのようなものがありますか。

A. ①経営計画策定(経営企画)、②組織編成(経営企画)、③人事制度策定(人事・労務)、④教育研修計画策定(人事・労務)、⑤財務計画策定(財務・経理)、⑥広報企画・立案(広報)、⑦全社的営業方針・計画策定(営業企画)、⑧全社的生産計画策定(生産企画)の8業務が例として示されています。

Q2. 人事部門の社員に企画業務型裁量労働制を適用できますか。

A. 人事部門の社員でも、現行の人事制度の問題点を調査・分析した上で新たな人事制度を策定する業務(③)や、社員の教育・研修計画を策定する業務(④)に従事している場合は対象業務となり得ます。ただし、日常的な採用面接・労務管理等の業務に従事しているだけの場合は対象業務に当たりません。個々の業務実態の確認が必要です。

Q3. 営業企画部門の社員に企画業務型裁量労働制を適用できますか。

A. 営業成績や営業活動上の問題点を調査・分析した上で企業全体の営業方針や全社的な営業計画を策定する業務(⑦)に従事している場合は対象業務となり得ます。ただし、個々の顧客を担当する日常的な営業活動に従事しているだけの場合は「事業の運営に関する事項」に当たらず対象業務になりません(309番・310番参照)。

Q4. これらの例に当てはまれば必ず対象業務になりますか。

A. 必ずしも対象業務になるわけではありません。これらの例は「対象業務となり得る業務の例」であり、実際に309番の4要件を満たすかどうかは個々の業務実態で判断されます。例えば、同じ経営企画部署に所属していても、実際には上司の具体的な指示に従って資料をまとめるだけの業務であれば要件(4)を満たさず対象業務に当たりません。

最終更新日:2026年5月10日


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