この記事の結論
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形式的な交渉の場に出るだけでは足りない

使用者が労働者の団体交渉権を尊重して誠意をもって団体交渉に当たったとは認められないような場合も、労組法7条2号の団体交渉拒否として不当労働行為になります(カール・ツアイス事件東京地裁平成元年9月22日判決)。

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誠実交渉義務の内容は①説明、②資料提示、③反論の3つ

①組合の要求・主張に対する回答や自己の主張の根拠を具体的に説明すること、②必要な資料を提示すること、③譲歩できない場合でもその論拠を示して反論すること、が求められます。

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組合の要求に譲歩する義務・応じる義務はない

使用者には労働組合に譲歩する義務も、労働組合の要求に応じる義務もありません。ただし、誠実交渉義務を尽くさなければ、実質的な交渉拒否として不当労働行為と判断されます。

参考動画

01誠実交渉義務とは何か

 労組法7条2号は、使用者が団体交渉をすることを正当な理由がなくて拒むことを不当労働行為として禁止しています。しかし、形式的に交渉の場に出席するだけでは足りません。

 使用者が労働者の団体交渉権を尊重して誠意をもって団体交渉に当たったとは認められないような場合も、同規定により団体交渉の拒否として不当労働行為となると考えられています(カール・ツアイス事件東京地裁平成元年9月22日判決)。

 これが「誠実交渉義務」と呼ばれるものです。使用者は、単に交渉の場に現れるだけでなく、誠意をもって実質的な交渉を行う義務を負っています。

02誠実交渉義務の3つの内容

 具体的には、使用者は以下の義務を負うとされています。

誠実交渉義務の3つの内容

① 回答・説明義務
労働組合の要求や主張に対する回答や自己の主張の根拠を、具体的に説明すること。

② 資料提示義務
必要な資料を提示するなど、組合が交渉を実質的に進めるために必要な情報を提供すること。

③ 反論義務
結局において労働組合の要求に対して譲歩することができないとしても、その論拠を示して反論すること。

 これらは「義務」であり、履行しない場合には誠実交渉義務違反として不当労働行為(労組法7条2号)に当たると判断されることがあります。

03譲歩義務・応諾義務はない

 重要なのは、使用者には労働組合に譲歩する義務も、労働組合の要求に応じる義務もないという点です。

 誠実交渉義務は、交渉の「結果」(合意・譲歩)を義務付けるものではありません。交渉の「過程」において誠意をもって実質的な交渉を行うことを求めるものです。

 したがって、会社の立場を明確に説明したうえで、組合の要求を断ること自体は問題ありません。ただし、断る場合にも、その論拠を示して反論することが求められます。「要求には応じられません」と結論だけ伝えて終わりでは、誠実交渉義務を果たしたとは言えません。

04誠実交渉義務違反となる典型的な行為

誠実交渉義務違反となりやすい行為

① 権限のない担当者のみを出席させる:交渉の場に何も決定できない担当者のみを出席させ、「持ち帰って検討します」を繰り返すだけで実質的な回答をしない場合。
② 根拠なく「検討中」を繰り返す:明確な回答を引き延ばし続け、実質的な交渉を進める意思がないと判断される場合。
③ 資料の提示を拒否する:組合が要求した、交渉に必要な合理的な資料の提示を正当な理由なく拒否する場合。
④ 結論だけ告げる:「その要求には応じられません」と結論だけを告げ、なぜ応じられないかの論拠を示さない場合。

 これらはいずれも、形式的には交渉の場に出席しながら実質的な交渉を拒否しているとみなされる行為です。

05実務上の対応のポイント

 誠実交渉義務を履行するためには、団体交渉に臨む前から準備が必要です。組合からの要求事項について、会社側の立場・回答・根拠を整理したうえで交渉に臨むことが重要です。

 また、団体交渉には決定権限を持つ者が出席するか、少なくとも決定権限者と随時連絡が取れる状態で出席することが求められます。「決定権限がないので持ち帰ります」を繰り返すだけでは誠実交渉義務違反とみなされるリスクがあります。

 資料の提示についても、組合から合理的な資料の提供を求められた場合には、機密性等の正当な理由がない限り応じることが求められます。

 交渉の内容は必ず記録しておくことも重要です。どのような主張・回答・説明が行われたかを記録することで、後に誠実交渉義務違反と主張された場合の反論が可能になります(452番参照)。

経営上のポイント 組合の要求に応じられない場合でも、その理由・根拠を具体的に説明することが誠実交渉義務の核心です。「答えられない」「持ち帰る」を繰り返すだけでは不当労働行為となるリスクがあります。団体交渉への対応に不安がある場合は、使用者側弁護士に相談しながら準備を進めることをお勧めします。アドバイスします。

SUPERVISOR 弁護士 藤田 進太郎

監修者

弁護士法人四谷麹町法律事務所 代表弁護士 藤田 進太郎

東京大学法学部卒業。2003年弁護士登録。日本弁護士連合会会員労働法制委員会委員・事務局次長・最高裁行政局との労働審判制度に関する協議会協議員、第一東京弁護士会労働法制委員会委員・研修部会副部会長、経営法曹会議会員・第112回経団連労働法フォーラム報告担当者、労働審判員連絡協議会特別会員、日本労働法学会会員、東京麹町ロータリークラブ会員・2023-24年度幹事。
講演・著作 / 「会社経営者のための問題社員対応講座」(YouTube)

日本全国各地の会社経営者の皆様へ

弁護士法人四谷麹町法律事務所代表弁護士の藤田進太郎です。私は、労働問題のストレスから会社経営者の皆様を解放したいという強い思いを持っており、日本全国各地の会社経営者のために、問題社員、労働審判、残業代トラブルなどの労働問題の予防解決に当たっています。問題社員、労働審判、残業代トラブルでお悩みでしたら、弁護士法人四谷麹町法律事務所にご相談ください。事務所会議室での経営労働相談のほか、ZoomやTeamsでのオンライン経営労働相談を実施しています。

Q&Aよくある質問

Q1. 団体交渉で組合の要求を断ることはできますか。

A. はい、できます。使用者には組合の要求に応じる義務はありません。ただし、断る場合には、なぜ応じられないかの論拠を具体的に示して反論することが誠実交渉義務の一内容として求められます。結論だけ告げて説明を尽くさない対応は、誠実交渉義務違反と判断されるリスクがあります。

Q2. 組合から会社の財務資料の提示を求められました。応じなければなりませんか。

A. 交渉に必要な合理的な資料については提示することが求められます。ただし、機密性が高い情報や交渉とは無関係の情報についてまで提示する義務はありません。どの範囲の資料を提示すべきかは、要求事項と資料の関連性、機密性等を総合的に判断する必要がありますので、弁護士に相談することをお勧めします。

Q3. 誠実交渉義務違反と判断された場合、どうなりますか。

A. 不当労働行為(労組法7条2号)に当たるとして、労働委員会への申立ての対象になります。労働委員会から救済命令が出た場合、誠実に交渉に応じることを命じられます。命令に従わない場合は過料の制裁もあります。また、誠実交渉義務違反は民事上の不法行為を構成する可能性もあります。

最終更新日:2026年2月25日


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