この記事の結論
1

退職間近であっても労基法所定の日数を付与しなければならない

労基法は退職間近であるか否かによって年休の付与日数を変えていません。1年6か月継続勤務して所定の出勤要件を満たした社員には、退職予定であっても11日の年休を付与する必要があります。

2

日割計算して付与日数を減らすことはできない

年休付与日数を残勤務期間に応じた日数に日割計算して減らすことはできません。労基法が定める付与日数は一律であり、残勤務期間の長短によって変わるものではありません。

3

年休の取得は労働者の権利であり、やむを得ないと割り切る

使用者側から見れば不都合に感じることもありますが、年休の取得は労働者の権利として法律で保障されています。やむを得ないと割り切るほかありません。

01退職予定であっても年休の付与日数は変わらない

 労基法は、退職間近であるか否かによって年休の付与日数を変えていません。継続勤務要件と出勤要件を満たした時点で、労基法所定の日数の年次有給休暇が発生します。

 したがって、たとえ退職予定の社員であっても、基準日(権利発生日)において勤務要件を満たしていれば、労基法所定の日数を付与しなければなりません。年休付与日数を残勤務期間に応じた日数に日割計算して減らすことはできません。

02具体例で考える

具体例

勤務開始から1年7か月で退職する予定の社員が、目立った欠勤をせずに1年6か月継続勤務した場合。

 この場合、1年6か月継続勤務した時点で11日の年休が付与されます。退職までの残り1か月で11日の年休を使うことになると、最後の1か月のかなりの部分は年休を使うためにあるようなものとなってしまいます。

 使用者から見れば不都合とも思えますが、労基法はこのような場合でも付与日数を変えていないため、11日の年休を付与せざるを得ません。

03日割計算ができない理由

 年次有給休暇の付与日数は、労基法39条に基づいて、継続勤務年数に応じた一律の日数が定められています。この日数は法定の最低基準であり、これを下回る日数を付与することは労基法違反となります。

 労基法は、退職予定であるかどうか、残勤務期間がどの程度であるかという事情を考慮して付与日数を増減させる規定を設けていません。使用者が独自に日割計算を行って付与日数を減らすことは、法定の最低基準を下回ることになるため、許されません。

04会社経営者としての心構え

 年休の取得は労働者の権利であり、退職予定であるか否かにかかわらず保障されるものです。使用者としてはやむを得ないと割り切るほかありません。

 実務上の対応としては、退職予定の社員との間で早めに引継ぎの計画を立て、年休消化と業務引継ぎの両立を図ることが現実的です。退職日を十分に先に設定するよう話し合うこと、引継ぎ期間と年休消化期間を分けて計画することなどが考えられます。

経営上のポイント 退職予定であっても年休の付与日数を日割計算して減らすことはできません。労基法上の権利として割り切り、退職前の段階で引継ぎと年休消化を計画的に調整することが重要です。アドバイスします。

SUPERVISOR 弁護士 藤田 進太郎

監修者

弁護士法人四谷麹町法律事務所 代表弁護士 藤田 進太郎

東京大学法学部卒業。2003年弁護士登録。日本弁護士連合会会員労働法制委員会委員・事務局次長・最高裁行政局との労働審判制度に関する協議会協議員、第一東京弁護士会労働法制委員会委員・研修部会副部会長、経営法曹会議会員・第112回経団連労働法フォーラム報告担当者、労働審判員連絡協議会特別会員、日本労働法学会会員、東京麹町ロータリークラブ会員・2023-24年度幹事。
講演・著作 / 「会社経営者のための問題社員対応講座」(YouTube)

日本全国各地の会社経営者の皆様へ

弁護士法人四谷麹町法律事務所代表弁護士の藤田進太郎です。私は、労働問題のストレスから会社経営者の皆様を解放したいという強い思いを持っており、日本全国各地の会社経営者のために、問題社員、労働審判、残業代トラブルなどの労働問題の予防解決に当たっています。問題社員、労働審判、残業代トラブルでお悩みでしたら、弁護士法人四谷麹町法律事務所にご相談ください。事務所会議室での経営労働相談のほか、ZoomやTeamsでのオンライン経営労働相談を実施しています。

Q&Aよくある質問

Q1. 退職予定であることを知っていても、11日の年休を付与しなければなりませんか。

A. はい、付与しなければなりません。労基法は退職予定であるかどうかによって付与日数を変える規定を設けていないため、勤務要件を満たした以上、法定日数を付与する義務があります。

Q2. 有期雇用の契約社員が契約満了で退職する場合も同じですか。

A. 同じです。有期雇用の契約社員であっても、基準日において勤務要件を満たしていれば労基法所定の年休が発生します。契約期間の残りが短いことを理由に付与日数を減らすことはできません。

Q3. 法定を上回る年休を付与している場合、法定を超える部分は日割計算できますか。

A. 法定を上回る部分(法定外年休)については、就業規則で定める限り、退職時の取扱い(日割計算や消滅など)を規定すること自体は考えられます。ただし、法定の年休日数を下回ることはできませんので、法定部分の確保が前提です。具体的な規定の設計については弁護士に相談することをお勧めします。

最終更新日:2026年2月25日


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