この記事の結論
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パワハラの違法性は諸般の事情と職務上の適正範囲内かで総合判断される

両当事者の職務上の地位・関係、行為の場所・時間・態様、パワハラを受けたと主張する者の対応等の諸般の事情、職務の内容・性質・危険性の内容・程度、当該行為が職務上の適正な範囲内か否か等を踏まえて判断されます。

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指導・監督の場面では、相手の理解力等も勘案した適切な言辞を選ぶ注意義務がある

近年の裁判例では、指導・監督の場面における叱責・指示等について慎重な配慮を求めるものがあり、アークレイファクトリー事件(大阪高裁平成25年)では「適切な言辞を選ぶ注意義務」が判示されました。

01パワハラの違法性の判断基準

 パワハラの違法性は、次のような諸般の事情を踏まえて判断される傾向があります。

パワハラの違法性の判断要素

・両当事者の職務上の地位・関係
・行為の場所・時間・態様
・パワハラを受けたと主張する者の対応等の諸般の事情
・職務の内容、性質、危険性の内容・程度
・当該行為が職務上の適正な範囲内か否か

 これらの要素は、いずれか一つで結論が決まるものではなく、総合的に評価されます。中でも「当該行為が職務上の適正な範囲内か否か」という判断は、業務上必要な指導・指示の範囲を超えているかどうかの評価であり、実務上最も難しいポイントの一つです。

02職務上の適正範囲内かの判断の難しさと代表的な裁判例

 職務上の範囲内かどうかの判断は難しく、裁判では、原審(地方裁判所)と控訴審(高等裁判所)で判断が分かれたものもあります。代表的なものとして、次の裁判例が挙げられます。

判断が分かれた主な裁判例

・A保険会社上司事件 東京地裁平成16年12月1日判決/東京高裁平成17年4月20日判決
・長崎海上自衛隊員自殺事件 長崎地裁佐世保支部平成17年7月1日判決/福岡高裁平成20年8月25日判決
・前田道路事件 松山地裁平成20年7月1日判決/高松高裁平成21年4月23日判決

 これらの裁判例が示すように、職場での指導・叱責・指示が「職務上の適正な範囲内」か「パワハラとして違法」かの判断は、事案の具体的な事実関係によって大きく左右されます。同一の行為について、地裁と高裁で正反対の結論が出ることもあるほど、判断が難しい領域です。

03アークレイファクトリー事件(大阪高裁平成25年10月9日判決)

 近年は、労務遂行上の指導・監督の場面における叱責・指示等に関して、慎重な配慮を求める裁判例もあります。アークレイファクトリー事件(大阪高裁平成25年10月9日判決)では、次のとおり判示されました。

アークレイファクトリー事件の判示内容(大阪高裁平成25年10月9日)

「労務遂行の適切さを期する目的において適切な言辞を選んでしなければならないのは当然の注意義務である」

「監督者において、労務遂行上の指導・監督を行うにあたり、そのような言辞をもってする指導が当該監督を受ける者との人間関係や当人の理解力等も勘案して、適切に指導の目的を達しその真意を伝えているかどうかを注意すべき義務がある」

 この判決は、監督者(上司・管理職)が部下に対して指導・監督を行うにあたり、相手との人間関係や当人の理解力等も踏まえて、指導の目的を達するのに適切な言辞を選ぶ注意義務があることを明確にしました。業務上の指導であっても、その方法・言葉の選び方によってはパワハラとして違法と評価されるリスクがある点に、会社経営者として特に注意が必要です。

 パワハラ問題が生じた場合や、社内での指導方法に不安がある場合は、早期に使用者側弁護士に相談することをお勧めします。

経営上のポイント パワハラの違法性は、両当事者の地位・関係、行為の態様、職務の内容・適正範囲内か否か等を総合して判断されます。「職務上の適正範囲内か」の判断は難しく、地裁と高裁で判断が分かれる事例もあります。アークレイファクトリー事件では「適切な言辞を選ぶ注意義務」が課されており、業務上の指導でも方法・言葉次第でパワハラと評価されるリスクがあります。問題が生じた場合は早期に弁護士に相談することをお勧めします。アドバイスします。
監修者 弁護士 藤田 進太郎

監修者

弁護士法人四谷麹町法律事務所 代表弁護士 藤田 進太郎

東京大学法学部卒業。2003年弁護士登録。日本弁護士連合会会員労働法制委員会委員・事務局次長・最高裁行政局との労働審判制度に関する協議会協議員、第一東京弁護士会労働法制委員会委員・研修部会副部会長、経営法曹会議会員・第112回経団連労働法フォーラム報告担当者、労働審判員連絡協議会特別会員、日本労働法学会会員、東京麹町ロータリークラブ会員・2023-24年度幹事。
講演・著作 / 「会社経営者のための問題社員対応講座」(YouTube)

日本全国各地の会社経営者の皆様へ

弁護士法人四谷麹町法律事務所代表弁護士の藤田進太郎です。私は、労働問題のストレスから会社経営者の皆様を解放したいという強い思いを持っており、日本全国各地の会社経営者のために、問題社員、労働審判、残業代トラブルなどの労働問題の予防解決に当たっています。問題社員、労働審判、残業代トラブルでお悩みでしたら、弁護士法人四谷麹町法律事務所にご相談ください。事務所会議室での経営労働相談のほか、ZoomやTeamsでのオンライン経営労働相談を実施しています。

Q&Aよくある質問

Q1. 部下を強く叱責したことでパワハラだと訴えられました。どう対応すればよいですか。

A. まず、叱責の内容・状況・前後の経緯等について事実を整理することが重要です。叱責が「業務上の必要な指導の範囲内」か「職務上の適正な範囲を超えたもの」かを判断するには、指導の目的・内容・言葉の態様・場所・相手の状況等を確認する必要があります。パワハラ申告を受けた場合は、事実確認を慎重に行ったうえで、早期に使用者側弁護士に相談することをお勧めします。社内調査の方法・結果に基づく対応方針の検討が重要です。

Q2. 法律上のパワハラの定義はありますか。

A. 労働施策総合推進法(パワハラ防止法)30条の2により、職場におけるパワハラは「職場において行われる優越的な関係を背景とした言動であって、業務上必要かつ相当な範囲を超えたものにより、その雇用する労働者の就業環境が害されるもの」と定義されています。この法律により、2020年6月から(中小企業は2022年4月から)使用者のパワハラ防止措置が義務付けられています。自社のパワハラ防止措置(方針の明確化・相談窓口の設置等)が整備されているかを確認することをお勧めします。

Q3. パワハラが認められた場合、会社はどのような責任を負いますか。

A. パワハラが認められた場合、会社は被害者に対して損害賠償責任を負う可能性があります(民法715条の使用者責任)。また、パワハラ行為者(上司等)個人も不法行為責任(民法709条)を負います。損害賠償の内容としては、精神的苦痛に対する慰謝料、パワハラによって生じた精神疾患等の治療費・休業損害等が含まれます。パワハラが原因で自殺が生じた場合には、多額の損害賠償が認められることもあります。パワハラ防止措置の整備と迅速な対応が重要です。

最終更新日:2026年2月25日


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