この記事の結論
1

賃金発生の有無は就業規則等の定めによる

私傷病休職期間中の賃金発生の有無は、就業規則等の定めによります。就業規則等で支払うと定めている場合には支払いが必要ですが、定めがなければ支払い義務はありません。

2

一般的には無給とし傷病手当金を活用。大企業は有給・無給の併用も

一般的には、私傷病休職は労働者側の事情による欠勤として無給とし、健康保険の傷病手当金等を活用することが多いです。大企業では有給期間と無給期間を併用している会社が多くあります。

01私傷病休職期間中の賃金の取扱い

 私傷病休職期間中の賃金の発生の有無は、就業規則等の定めによるのが通常です。就業規則等で私傷病休職期間中に賃金を支払うと定めている場合には、その定めに従って支払う必要があります。

 私傷病休職期間中の賃金の定め方については、大企業では有給期間と無給期間を併用している会社が多いといえます。例えば、「休職開始から3か月間は給与の60%を支給し、その後は無給とする」といった設計がその一例です。一方、一般的には、私傷病休職は労働者側の事情による欠勤として無給とし、健康保険の傷病手当金等を活用することが多いです。

私傷病休職期間中の賃金の典型的な設計パターン

設計パターン 内容
全期間無給 休職期間全体を無給とする(傷病手当金を活用)
有給・無給の併用 一定期間は有給(給与の一部支給)、その後は無給とする

02傷病手当金の活用

 私傷病休職期間中が無給の場合、社員(被保険者)は健康保険から傷病手当金を受給することができます。傷病手当金は、健康保険の被保険者が病気やけがで連続して3日以上仕事を休み、4日目以降の休業日について、最長1年6か月間、標準報酬日額の3分の2相当額が支給される制度です。

傷病手当金の概要

・支給対象:健康保険の被保険者(私傷病による休業)
・待期期間:連続した3日間の欠勤(待期完成)後、4日目から支給
・支給額:標準報酬日額の3分の2
・支給期間:支給開始日から最長1年6か月

 会社が私傷病休職期間を無給とした場合でも、社員が傷病手当金を受給することで一定の生活保障が確保されます。会社としては、社員に傷病手当金の申請方法を案内することで、休職期間中の社員の生活を支援することができます。

03会社経営者が取るべき実務上の対応

 私傷病休職期間中の賃金については、就業規則に明確な定めを設けておくことが重要です。定めがない場合は、個別の判断が求められる場面が生じ、トラブルの原因となることがあります。

 就業規則への定め方としては、有給期間・無給期間の設計、休職期間中の社会保険料の取扱い(会社負担分・本人負担分の支払い方法)、傷病手当金の申請のサポート方法なども合わせて整備しておくことをお勧めします。また、休職期間満了後に復職できない場合の退職・解雇(休職期間満了による自動退職等)についても就業規則に明記しておく必要があります。就業規則の私傷病休職に関する規定の整備については、使用者側弁護士・社会保険労務士に相談することをお勧めします。

経営上のポイント 私傷病休職期間中の賃金は就業規則等の定めによります。就業規則に支払いの定めがあれば支払義務があります。一般的には無給として傷病手当金(標準報酬日額の3分の2・最長1年6か月)を活用することが多く、大企業では有給・無給の期間を併用するケースもあります。就業規則に有給・無給の区別・社会保険料の取扱い・休職期間満了後の退職規定を整備しておくことをお勧めします。弁護士・社労士に相談することをお勧めします。アドバイスします。
監修者 弁護士 藤田 進太郎

監修者

弁護士法人四谷麹町法律事務所 代表弁護士 藤田 進太郎

東京大学法学部卒業。2003年弁護士登録。日本弁護士連合会会員労働法制委員会委員・事務局次長・最高裁行政局との労働審判制度に関する協議会協議員、第一東京弁護士会労働法制委員会委員・研修部会副部会長、経営法曹会議会員・第112回経団連労働法フォーラム報告担当者、労働審判員連絡協議会特別会員、日本労働法学会会員、東京麹町ロータリークラブ会員・2023-24年度幹事。
講演・著作 / 「会社経営者のための問題社員対応講座」(YouTube)

日本全国各地の会社経営者の皆様へ

弁護士法人四谷麹町法律事務所代表弁護士の藤田進太郎です。私は、労働問題のストレスから会社経営者の皆様を解放したいという強い思いを持っており、日本全国各地の会社経営者のために、問題社員、労働審判、残業代トラブルなどの労働問題の予防解決に当たっています。問題社員、労働審判、残業代トラブルでお悩みでしたら、弁護士法人四谷麹町法律事務所にご相談ください。事務所会議室での経営労働相談のほか、ZoomやTeamsでのオンライン経営労働相談を実施しています。

Q&Aよくある質問

Q1. 休職中の社員の社会保険料(健康保険・厚生年金)は、どのように処理すればよいですか。

A. 休職中も雇用関係が続いているため、健康保険・厚生年金の被保険者資格は継続します。したがって、会社負担分・本人負担分ともに社会保険料の支払い義務は継続します。賃金が無給の場合は賃金からの控除ができないため、会社が立て替えて支払い、後日本人から徴収する方法(口座振替等)が一般的です。具体的な方法を就業規則または休職規程に定めておくことが重要です。

Q2. 休職期間満了後に復職できない場合、解雇できますか。

A. 就業規則に「休職期間が満了しても復職できない場合は退職とみなす」「解雇する」等の規定がある場合は、その規定に基づいて退職・解雇処理を行うことができます。ただし、退職・解雇の有効性は復職可否の判断が適切に行われたかどうかにもかかわり、主治医意見・産業医意見を踏まえた慎重な対応が必要です。復職・退職の判断については、事前に弁護士に相談することをお勧めします。

Q3. 社員が精神疾患で休職しています。リハビリ出勤(試し出勤)を認める必要がありますか。

A. リハビリ出勤(試し出勤)は、就業規則に定めがない限り、会社が法的に義務付けられているものではありません。ただし、リハビリ出勤を認めることで、段階的な復職を支援し、再発・再休職を防ぐ効果が期待できます。リハビリ出勤を認める場合は、その期間・内容・賃金・評価方法等について明確なルールを設けておくことが重要です(リハビリ出勤については541番参照)。

最終更新日:2026年2月25日


Return to Top ▲Return to Top ▲