|
1
|
労基法41条の適用除外は労働時間・休憩・休日のみ。深夜割増賃金は除外されない 管理監督者について適用除外されるのは「労働時間・休憩・休日に関する規定」に限られ、深夜割増賃金(労基法37条4項)と年次有給休暇(39条)は適用除外の対象外です。 |
|
2
|
管理監督者に深夜労働させた場合は2割5分以上の深夜割増賃金の支払が必要 最高裁(ことぶき事件・平成21年12月18日判決)も、管理監督者の深夜割増賃金請求権を明確に認めています。「管理職だから深夜割増も不要」は誤りです。 |
管理監督者は労働基準法41条により労働時間・休憩・休日の規制の適用が除外されますが、この適用除外は「労働時間、休憩および休日に関する規定」に限られます。深夜割増賃金(労基法37条4項)および年次有給休暇(労基法39条)の規定は適用除外の対象外であり、管理監督者に対しても深夜労働をさせた場合には割増賃金の支払義務が生じます。
「管理職だから深夜割増も不要」という理解は誤りです。会社側専門の弁護士の立場から、管理監督者に対する深夜割増賃金の支払義務を解説します。
01管理監督者と深夜割増賃金の関係
管理監督者は、労働基準法41条により、法定労働時間・休憩・休日の規制の適用が除外されます。しかし、この適用除外はあくまで「労働時間・休憩および休日に関する規定」に限定されるものです。深夜割増賃金(労基法37条)および年次有給休暇(労基法39条)の規定は適用除外の対象外であり、管理監督者に対しても深夜労働をさせた場合には割増賃金の支払義務が生じます。
「管理職だから深夜割増も不要」は誤り
管理監督者であれば時間外・休日割増賃金だけでなく深夜割増賃金も不要と誤解されることがあります。しかし、深夜割増賃金は管理監督者に対しても支払義務があります。適用除外されるのは労働時間・休憩・休日の規制に限られる点を、正確に理解しておく必要があります。
02法令上の根拠(労基法41条・37条)
労基法41条は、管理監督者について「労働時間、休憩および休日に関する規定」の適用を除外すると定めています。この範囲に深夜割増賃金に関する労基法37条は含まれていません。したがって、管理監督者であっても、深夜(午後10時から午前5時まで)に労働した場合には、2割5分以上の深夜割増賃金の支払が必要です。
03裁判例・通達による確認
管理監督者に深夜割増賃金の支払義務があることは、裁判例および行政解釈でも確認されています。
ことぶき事件(最高裁平成21年12月18日判決)
最高裁判所平成21年12月18日判決(ことぶき事件・第二小法廷)は、「労基法41条2号の規定によって同法37条3項(現行4項)の適用が除外されることはなく、管理監督者に該当する労働者は同項に基づく深夜割増賃金を請求することができる」と明言しました。管理監督者であっても深夜割増賃金を請求できることを、最高裁が明確に認めています。
通達による確認
行政解釈(昭和23年10月14日基発1506号)でも、労基法41条は深夜業の規定の適用を排除していないから、使用者は深夜業の割増賃金を支払わなければならない、としています。裁判例・通達のいずれも、管理監督者への深夜割増賃金の支払義務を認めています。
04会社側実務上の注意点
深夜労働の把握と割増賃金の支払
管理監督者であっても、深夜(午後10時から午前5時まで)に労働した場合は2割5分以上の深夜割増賃金を支払わなければなりません。特に24時間稼働が必要な業種(小売業・宿泊業・医療・運送業等)では注意が必要です。管理監督者の労働時間についても、深夜労働の有無を把握できる体制を整えておく必要があります。
深夜割増賃金の計算方法
深夜割増賃金の計算に必要な1時間当たりの基礎賃金は、原則として月の所定賃金(除外賃金を控除した額)を月平均所定労働時間数で除した額です。管理職手当を支払っている場合、その手当を割増賃金の計算基礎に含めるか否かは就業規則等の定め方により異なりますので、設計段階で注意が必要です。
05よくある質問(FAQ)
Q. 管理監督者に深夜割増賃金を支払わなかった場合、どんなリスクがありますか。
未払い深夜割増賃金として、時効(原則5年、当分の間3年)にかかる範囲で遡及請求を受けるリスクがあります。労基署の是正勧告や労働審判に発展する可能性もあり、訴訟では付加金の支払を命じられることもあります。
Q. 管理監督者の深夜割増賃金はどのように計算しますか。
1時間当たりの基礎賃金(月給から除外賃金を控除し、月平均所定労働時間数で除した額)に0.25と実際の深夜労働時間数を乗じて計算します。あらかじめ定額で支払うのではなく、実際の深夜労働時間分を支払うのが原則です。
Q. 年次有給休暇は管理監督者にも付与しなければなりませんか。
付与する必要があります。年次有給休暇(労基法39条)も深夜割増賃金と同じく、労基法41条の適用除外の対象外です。管理監督者であっても、勤続年数等に応じた年次有給休暇を付与する必要があります。
Q. 管理職手当に深夜割増賃金を含めることはできますか。
可能ですが条件があります。就業規則等により明確に深夜割増賃金を含む趣旨で定められ、かつ法定の深夜割増賃金額以上の額を満たす必要があります。単に「管理職手当に深夜割増も含む」とするだけでは足りません。詳細は関連ページをご覧ください。
監修者
弁護士法人四谷麹町法律事務所 代表弁護士 藤田 進太郎
東京大学法学部卒業。2003年弁護士登録。日本弁護士連合会会員労働法制委員会委員・事務局次長・最高裁行政局との労働審判制度に関する協議会協議員、第一東京弁護士会労働法制委員会委員・研修部会副部会長、経営法曹会議会員・第112回経団連労働法フォーラム報告担当者、労働審判員連絡協議会特別会員、日本労働法学会会員、東京麹町ロータリークラブ会員・2023-24年度幹事。
講演・著作 / 「会社経営者のための問題社員対応講座」(YouTube)
日本全国各地の会社経営者の皆様へ
弁護士法人四谷麹町法律事務所代表弁護士の藤田進太郎です。私は、労働問題のストレスから会社経営者の皆様を解放したいという強い思いを持っており、日本全国各地の会社経営者のために、問題社員、退職勧奨、労働審判、残業代トラブルなどの労働問題の予防解決に当たっています。管理監督者の深夜割増賃金や賃金規程の整備でお悩みでしたら、弁護士法人四谷麹町法律事務所にご相談ください。事務所会議室での経営労働相談のほか、ZoomやTeamsでのオンライン経営労働相談を実施しています。
最終更新日:2026年7月13日