この記事の結論
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管理職手当に深夜割増賃金を含めるには、就業規則等で明確に含む趣旨を定める必要がある

深夜割増賃金を管理職手当に含めて支払うこと自体は可能ですが、就業規則・労働協約等で明確に含む趣旨で定められていることが必要です。

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法定額を下回らず、何時間分・何円分が割増分か特定できることが必要

単に「管理職手当に深夜割増も含む」と定めるだけでは足りず、割増分の具体的な時間数・金額を特定し、法定の深夜割増賃金額以上とする必要があります。

 管理監督者に支払う深夜割増賃金を管理職手当の中に含めるかたちで支払うことは可能ですが、これには法的に厳格な要件を満たす必要があります。具体的には、就業規則等で明確に深夜割増賃金を含む趣旨で定められていること、法定の深夜割増賃金額を下回らないこと、何時間分・何円分が割増分かを特定できることが求められます(ことぶき事件・最高裁平成21年12月18日判決)。

 安易に「管理職手当に深夜割増も含む」と就業規則に定めるだけでは、後に未払い深夜割増賃金として請求されるリスクがあります。会社側専門の弁護士の立場から、有効となる要件と就業規則の整備方法を解説します。

01管理職手当への深夜割増賃金の包含の可否

 管理監督者であっても、深夜労働をさせた場合には深夜割増賃金の支払義務があります。この深夜割増賃金を、あらかじめ管理職手当に含めて支払う方法をとること自体は可能です。ただし、これが有効な支払と認められるためには、後述の法的要件を満たす必要があります。

 「管理職手当に深夜割増賃金も含む」と就業規則に定めるだけでは不十分であり、要件を満たさないまま運用していると、後に未払い深夜割増賃金として請求されるリスクがあります。

02有効となるための法的要件

 管理職手当に深夜割増賃金を含めるためには、以下の要件を満たす必要があります(ことぶき事件・最高裁平成21年12月18日判決の趣旨)。

管理職手当に深夜割増賃金を含める場合の要件
就業規則・労働協約その他により、明確に深夜割増賃金を含む趣旨で定められていること
何時間分・何円分が深夜割増賃金に充当されるかを明確に特定できること(判別可能性)
充当される額が法定の深夜割増賃金額を下回らないこと。下回る(実際の深夜労働が包含分を超えた)場合は超過分を別途支払うこと

不十分な定め方の例

就業規則に「管理職手当には深夜割増賃金も含む」とだけ定めるのでは不十分です。たとえば「管理職手当のうち月◯時間分の深夜割増賃金(月◯◯円)を含む」など、具体的な時間数と金額を特定する必要があります。特定がなければ、通常の賃金部分と割増部分を判別できず、深夜割増賃金を支払ったとは認められません。

03裁判例・通達の内容

 ことぶき事件(最高裁平成21年12月18日判決)は、管理監督者に該当する労働者の所定賃金が、労働協約・就業規則その他によって一定額の深夜割増賃金を含める趣旨で定められていることが明らかな場合には、その額の限度では当該労働者が深夜割増賃金の支払を受けることを認める必要はない、と判示しています。逆にいえば、「含める趣旨が明らか」といえなければ、別途深夜割増賃金の支払が必要になります。

 行政解釈(昭和23年10月14日基発1506号)でも、労働協約・就業規則その他によって深夜の割増賃金を含めて所定賃金が定められていることが明らかな場合には、別に深夜業の割増賃金を支払う必要はない、としています。裁判例・通達のいずれも、「含める趣旨の明確性」を要件としている点が重要です。

04就業規則・賃金規程の整備方法

《就業規則記載例》

管理職の地位にある者に支払う管理職手当には、月__時間分の深夜割増賃金(月____円)を含むものとする。実際の深夜労働時間が当該時間分を超えた場合は、超過分の深夜割増賃金を別途支払う。

 深夜割増賃金の包含を就業規則に定める際は、具体的な時間数と金額を特定すること、超過分の支払ルールを明確にすること、実際の深夜労働時間を把握する体制を整備することが重要です。これらを欠くと、包含の定めがあっても深夜割増賃金を支払ったと認められない可能性があります。

経営者が見落としやすいポイント包含する時間数を実態より少なく設定していると、その時間を超えた深夜労働について差額の支払義務が生じます。包含分を「多め」に設定しておくか、実際の深夜労働時間を必ず把握して超過分を支払う運用にしておかないと、結局は未払いが積み上がります。時間数・金額の特定と、深夜労働時間の把握はセットで整備する必要があります。

05よくある質問(FAQ)

Q. 管理職手当に深夜割増賃金を含める場合、就業規則には何を記載すればよいですか。

少なくとも、①深夜割増賃金を含む趣旨で定められていること、②何時間分・何円分が割増分か明確であること、③法定額を下回らないこと、④超過分を別途支払う体制であること、を就業規則等に明記する必要があります。

Q. 実際の深夜労働時間が包含分を超えた場合、追加の支払いは必要ですか。

必要です。管理職手当に包含される深夜割増賃金の時間分を超えない限り追加支払は不要ですが、超えた分については別途深夜割増賃金を支払う必要があります。

Q. 深夜割増賃金の包含の有効性はどう判断されますか。

就業規則等の定めが「深夜割増賃金を含む趣旨で定められているか」と、「深夜割増分とそれ以外の賃金を分別できるか(判別可能性)」を満たす必要があります。両方を満たして初めて、深夜割増賃金を支払ったと認められます。

Q. 管理職以外の従業員にも同様の処理は適用できますか。

就業規則・賃金規程で明確に定めれば、管理監督者以外の従業員についても、深夜割増賃金を包含する手当を設計することは可能です。ただし、同様の要件(法定額以上・具体的な時間・金額の特定・超過分の別途支払)を満たす必要があります。

経営上のポイント 管理監督者に支払う深夜割増賃金を管理職手当に含めて支払うこと自体は可能ですが、有効となるには、就業規則等で明確に含む趣旨を定めること、何時間分・何円分が割増分か特定できること(判別可能性)、法定の深夜割増賃金額を下回らないこと、超過分を別途支払うこと、が必要です(ことぶき事件・最高裁平成21年12月18日判決、昭和23年10月14日基発1506号)。「管理職手当に深夜割増も含む」とだけ定めるのは不十分で、時間数・金額の特定がなければ深夜割増賃金を支払ったと認められません。包含分を実態より少なく設定していると差額が積み上がるため、時間数・金額の特定と深夜労働時間の把握をセットで整備することが、未払いトラブルの予防につながります。管理監督者に対する深夜割増賃金の支払義務とあわせて、賃金規程の整備について会社側・使用者側専門の弁護士にご相談ください。具体的な事情に応じて、実務で使える方針をアドバイスします。
監修者 弁護士 藤田 進太郎

監修者

弁護士法人四谷麹町法律事務所 代表弁護士 藤田 進太郎

東京大学法学部卒業。2003年弁護士登録。日本弁護士連合会会員労働法制委員会委員・事務局次長・最高裁行政局との労働審判制度に関する協議会協議員、第一東京弁護士会労働法制委員会委員・研修部会副部会長、経営法曹会議会員・第112回経団連労働法フォーラム報告担当者、労働審判員連絡協議会特別会員、日本労働法学会会員、東京麹町ロータリークラブ会員・2023-24年度幹事。
講演・著作 / 「会社経営者のための問題社員対応講座」(YouTube)

日本全国各地の会社経営者の皆様へ

弁護士法人四谷麹町法律事務所代表弁護士の藤田進太郎です。私は、労働問題のストレスから会社経営者の皆様を解放したいという強い思いを持っており、日本全国各地の会社経営者のために、問題社員、退職勧奨、労働審判、残業代トラブルなどの労働問題の予防解決に当たっています。管理職手当の設計や賃金規程の整備でお悩みでしたら、弁護士法人四谷麹町法律事務所にご相談ください。事務所会議室での経営労働相談のほか、ZoomやTeamsでのオンライン経営労働相談を実施しています。

最終更新日:2026年7月13日


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