この記事の結論
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解雇権濫用(労契法16条)の法的効果は解雇無効。②地位確認と②バックペイという2つの深刻リスクが生じる

解雇が無効と判断されると、①解雇したはずの社員の在職が法的に確認され(地位確認)、②解雇日翌日から判決・和解成立日まで実際には働いていない期間の賃金全額の支払いが命じられます(バックペイ)。

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紛争が長期化するほどバックペイの総額は膨らみ続ける。解雇前の法的確認が最重要の予防策

訴訟に発展した場合は1年以上かかるケースも珍しくなく、月給30万円なら2年間で720万円のバックペイが生じます。解雇を検討している場合は、事前に弁護士に解雇の有効性を確認することが最大のリスク回避策です。

01解雇権濫用の法的効果:解雇は無効となる(労契法16条)

 解雇権を濫用した場合の法的効果は、解雇の無効です。労働契約法16条は次のように規定しています。

労働契約法16条(解雇)

解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。

 この規定により、①客観的に合理的な理由を欠く解雇、または②社会通念上相当でない解雇は、解雇権の濫用として無効とされます。無効とは、法的にはその解雇が最初から存在しなかったのと同様の効果が生じるということです。「解雇が後から無効と判断されたとしても後の話だ」という感覚は、次に説明するリスクを軽視した危険な発想です。

02解雇無効が会社にもたらす2つの深刻なリスク

 解雇が無効と判断されると、会社は次の2つの重大なリスクに直面します。

 ①地位確認請求:解雇されたはずの社員が、労働審判や訴訟において「解雇は無効であり、自分はまだ在職中だ」として地位確認を求めることができます。地位確認が認められれば、法的には雇用関係が継続していることが確認されます。解雇無効が確定した場合、社員が職場復帰を求めてくるケースは実際にあります。復帰を拒否し続けることは新たなリスクを生みます。

 ②バックペイ(解雇期間中の賃金支払い):解雇が無効と判断された場合、実際には働いていない解雇期間中(解雇日の翌日から判決・和解成立日まで)の賃金全額の支払いが命じられます。「解雇が無効になっても、その社員は実際に働いていないのだから賃金は払わなくていい」は誤りです。会社が就労を拒否していた(受領遅滞)と評価され、実際に働いていない期間の賃金全額の支払いが原則として命じられます。

03バックペイの深刻さ:長期化するほど膨らむ未払賃金

 解雇が無効と判断された場合のバックペイは、解雇日の翌日から判決・和解成立日まで、毎月の賃金全額が継続して発生します。例えば、月給30万円の社員を解雇して2年間争った末に解雇無効と判断された場合、バックペイとして720万円(30万円×24か月)の支払いが命じられることになります。

 労働審判は申立てから解決まで概ね3か月程度ですが、審判に異議を申し立てて訴訟に移行した場合や、訴訟から始まった場合は1年以上かかるケースも珍しくありません。紛争が長期化するほど未払賃金の総額が膨らみ続けるという点が、会社経営者にとって最も警戒すべき点です。

 弁護士として解雇無効をめぐるご相談でよく見られるのは、次のようなパターンです。

・「解雇してから1年半後に労働審判で解雇無効と判断され、540万円のバックペイを支払うことになった。事前に弁護士に相談していれば防げた」
・「解雇無効が確定したが職場復帰を受け入れることができず、金銭和解の交渉になった。最終的に相当額の解決金を支払うことになった」

 いずれも、解雇前の段階での弁護士への相談が、最終的な損害を大幅に減らすことができたケースです。

04中間収入の控除:バックペイが減額されるケース

 解雇期間中に当該労働者が他の仕事に就いて収入を得ていた場合(中間収入)、その収入額の一部をバックペイから控除できる場合があります。ただし、控除できる範囲は民法536条2項の規定に基づき限定されており、中間収入があれば全額控除できるわけではありません。

 具体的には、中間収入のうち、使用者が就労を拒否したことによって免れた費用(交通費等)に相当する部分については、バックペイから控除することができます。しかし、中間収入全額をバックペイから差し引けるものではなく、控除の計算は複雑です。この点の判断は法的に難しい問題を含むため、弁護士に相談することをお勧めします。

05解雇無効後の実務対応と予防策

 解雇が無効と確定した場合、会社は法的には雇用関係が継続していることを前提に対応する必要があります。社員から職場復帰を求められるケースや、バックペイの支払い・金銭解決を求めて交渉が続くケースなど、様々な状況が生じます。いずれの方向をとっても会社に相当の負担が生じます。

 最も重要なのは、解雇を行う前の段階で解雇の有効性を慎重に検討し、解雇権濫用のリスクを排除しておくことです。具体的には、①解雇前に十分な注意指導を行い記録を残すこと、②就業規則の解雇事由に該当することを確認すること、③解雇権濫用法理の2要件(客観的合理的理由・社会通念上の相当性)を満たすかどうかを事前に弁護士に確認すること、が有効です。

経営上のポイント 解雇権濫用(労契法16条)の効果は解雇無効であり、①地位確認と②バックペイという2つの深刻リスクが生じます。紛争が長期化するほどバックペイの総額は膨らみ続けます(月給30万円×2年間=720万円)。「働いていないから払わなくていい」は誤りです。解雇を検討している場合は事前に弁護士に解雇の有効性を確認することが最大のリスク回避策です。アドバイスします。
監修者 弁護士 藤田 進太郎

監修者

弁護士法人四谷麹町法律事務所 代表弁護士 藤田 進太郎

東京大学法学部卒業。2003年弁護士登録。日本弁護士連合会会員労働法制委員会委員・事務局次長・最高裁行政局との労働審判制度に関する協議会協議員、第一東京弁護士会労働法制委員会委員・研修部会副部会長、経営法曹会議会員・第112回経団連労働法フォーラム報告担当者、労働審判員連絡協議会特別会員、日本労働法学会会員、東京麹町ロータリークラブ会員・2023-24年度幹事。
講演・著作 / 「会社経営者のための問題社員対応講座」(YouTube)

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弁護士法人四谷麹町法律事務所代表弁護士の藤田進太郎です。私は、労働問題のストレスから会社経営者の皆様を解放したいという強い思いを持っており、日本全国各地の会社経営者のために、問題社員、退職勧奨、労働審判、残業代トラブルなどの労働問題の予防解決に当たっています。問題社員、労働審判、残業代トラブルでお悩みでしたら、弁護士法人四谷麹町法律事務所にご相談ください。事務所会議室での経営労働相談のほか、ZoomやTeamsでのオンライン経営労働相談を実施しています。

最終更新日:2026年6月28日


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