この記事の結論
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人員削減の必要性は他の3要素の要求水準を規定する。裁判所は経営判断を尊重するが必要性が低いと他の要素の要求が上がる

明白に必要性がない場合を除けば必要性自体は認められやすいですが、必要性の程度が低いと解雇回避努力等に高い水準が求められます。財務諸表(B/S・P/L・CF計算書)・資金繰り表・経営会議議事録等の客観的証拠が不可欠です。

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整理解雇前後の新規採用は必要性判断に不利に影響する。新規採用の停止が解雇回避努力の一つとなる

整理解雇と近接した時期の新規採用は「本当に人員削減の必要性があったのか」という疑問を生じさせます。整理解雇を検討している段階から新規採用を停止することが解雇回避努力として機能します。

01人員削減の必要性とは:整理解雇の出発点

 ①人員削減の必要性は、整理解雇が有効とされるための必要不可欠の要素です。そもそも人員削減の必要性がない状況での整理解雇は、出発点から解雇権濫用となります。また、この要素は、②解雇回避努力・③人選の合理性・④手続の相当性という他の3要素の要求水準を設定する役割も持ちます。

 人員削減の必要性が高ければ高いほど、他の要素の充足に関する裁判所の判断が緩やかになる傾向があり、逆に必要性が低い場合は他の要素において高い水準が求められます。「必要性がある」だけでなく、「今この時点で整理解雇に踏み切ることが不可避か」という不可避性の判断が重要です。

02裁判所の判断傾向:経営判断を尊重しつつも詳細に審査する

 裁判所は、人員削減の必要性の有無について詳細に検討しますが、使用者の経営判断を尊重する傾向にあります。明白に人員削減の必要性がない場合(例えば、経営状態が良好で今後も改善が見込まれる状況での整理解雇など)を除けば、人員削減の必要性自体は肯定されるのが通常です。

 ただし、「経営が少し苦しい」という程度の状況での整理解雇や、将来の不安に備えた予防的な人員削減については、必要性の程度が低いと評価されることがあります。この場合、人員削減の必要性自体は否定されなくとも、その程度の低さが他の要素の判断(特に解雇回避努力の十分性)に影響し、結果として整理解雇全体が解雇権濫用と評価されることがあります。「業績が悪化しているのだから、人員削減の必要性は当然認められる」という発想は、必要性の程度が低いと評価される可能性を見落としています。

03必要性の程度と他の要素への影響

 人員削減の必要性がそれほど高くないにもかかわらず整理解雇を実施した場合、②解雇回避努力が尽くされていないなどの理由から解雇権の濫用と判断されることが多いです。これは、人員削減の必要性の程度が低ければ低いほど、解雇という最終手段に踏み切る前に尽くすべき解雇回避努力の水準が上がるという考え方に基づいています。

 つまり、「人員削減の必要性があることの証明」だけでなく、「その必要性の程度に照らして整理解雇という最終手段を用いることが相当か」という観点からも慎重に判断することが必要です。単に必要性があることだけでなく、「今この時点で整理解雇に踏み切ることが不可避か」という不可避性の判断が重要であることを改めて強調しておきます。

04人員削減の必要性を示す客観的証拠の重要性

 人員削減の必要性を裁判所に認めてもらうためには、経営状況を示す客観的な証拠が不可欠です。「業績が悪い」という抽象的な説明だけでは、客観的な裏付けとして不十分です。数字と事実に基づいた具体的な説明が求められます。

整理すべき主な客観的証拠:
・財務諸表(貸借対照表・損益計算書・キャッシュフロー計算書)
・資金繰り表
・経営会議議事録・取締役会議事録
・金融機関との交渉記録
・事業計画書・業績改善計画書

 弁護士対応事例でよく見られるのは、「財務資料の準備が不十分で、経営状況の説明が口頭のみにとどまった。裁判所に必要性の客観的証拠がないと判断された」というパターンです。人員削減の必要性の証明は、整理解雇の出発点です。この要素が崩れると、他の要素の充足があっても整理解雇全体が無効となりかねません。

05整理解雇前後の新規採用:特に注意が必要な落とし穴

 ①人員削減の必要性の判断において、整理解雇の前後(特に直前・直後)に新規採用を行っている事実が問題とされることが多く、整理解雇の有効性を判断する上で不利に斟酌されることがあります。「一方で人員を削減しながら、他方で新規採用を行っている」という状況が「本当に人員削減が必要だったのか」という疑問を生じさせるためです。

 同じ時期に人員を削減しながら採用を行うことは、「削減の必要性があった部門・職種」と「採用を行った部門・職種」が異なる場合であっても、整理解雇の必要性に疑義を生じさせるリスクがあります。「整理解雇しながら、別の部署では新規採用しても問題ない」は問題になります。

 整理解雇を検討している段階では、新規採用を停止することが解雇回避努力(②の要素)の一つとして機能します。整理解雇の実施と並行して、または実施前に新規採用を停止した事実があれば、「可能な解雇回避措置を尽くした」という主張を支える証拠となります。また「整理解雇を実施した直後に、別の部署で新規採用を行ったため、人員削減の必要性が認められないとして解雇無効と判断された」というパターンは実務上多く見られます。

経営上のポイント 整理解雇の①人員削減の必要性は他の3要素の要求水準を規定します。裁判所は経営判断を尊重しますが、必要性の程度が低いと解雇回避努力等に高い水準が求められます。財務諸表等の客観的証拠の整備が不可欠であり、整理解雇前後の新規採用は必要性判断に不利に影響します。人員削減の必要性の証明方法・財務資料の整備について弁護士に相談することをお勧めします。アドバイスします。
監修者 弁護士 藤田 進太郎

監修者

弁護士法人四谷麹町法律事務所 代表弁護士 藤田 進太郎

東京大学法学部卒業。2003年弁護士登録。日本弁護士連合会会員労働法制委員会委員・事務局次長・最高裁行政局との労働審判制度に関する協議会協議員、第一東京弁護士会労働法制委員会委員・研修部会副部会長、経営法曹会議会員・第112回経団連労働法フォーラム報告担当者、労働審判員連絡協議会特別会員、日本労働法学会会員、東京麹町ロータリークラブ会員・2023-24年度幹事。
講演・著作 / 「会社経営者のための問題社員対応講座」(YouTube)

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弁護士法人四谷麹町法律事務所代表弁護士の藤田進太郎です。私は、労働問題のストレスから会社経営者の皆様を解放したいという強い思いを持っており、日本全国各地の会社経営者のために、問題社員、退職勧奨、労働審判、残業代トラブルなどの労働問題の予防解決に当たっています。問題社員、労働審判、残業代トラブルでお悩みでしたら、弁護士法人四谷麹町法律事務所にご相談ください。事務所会議室での経営労働相談のほか、ZoomやTeamsでのオンライン経営労働相談を実施しています。

最終更新日:2026年6月28日


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