整理解雇の④手続の相当性とは?説明・協議の進め方と記録
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労働協約に協議義務がある場合は協議なしで原則無効。ない場合でも信義則上の説明・協議義務がある まず自社の労働協約に整理解雇前の組合協議義務が定められているかを確認することが第一歩です。組合がない場合も、裁判所は整理解雇の必要性・時期・規模・方法について誠実に説明・協議すべき信義則上の義務を負うとする傾向にあります。 |
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説明できない段階では整理解雇に踏み切る準備ができていない。説明・協議の内容と過程の記録が紛争時の防御 「説明会を一度開けば十分」は不十分です。具体的な財務資料を示して複数回誠実に対応し、その記録(日時・出席者・内容・質問への回答等)を残すことが手続の相当性を立証する上で不可欠です。 |
目次
01労働協約で協議義務が規定されている場合:協議なしは原則無効
労働協約において整理解雇に先立ち労働組合と協議する義務が規定されているような場合、労働組合と協議せずに行った整理解雇は原則として無効となります。労働協約は労使間の合意として法的拘束力を持ち、使用者はこれに従う義務があります。
まず自社に労働組合があるかどうか、労働協約の内容を確認し、整理解雇に関する協議義務の規定があるかどうかを整理解雇の検討段階で必ず確認することが必要です。弁護士対応事例でよく見られるのは、「労働協約に組合との事前協議義務が定められていたにもかかわらず見落とし、協議なしに整理解雇を実施。手続違反として解雇無効とされた」というパターンです。
02労働協約がない場合も:信義則上の説明・協議義務がある
事前協議義務を定める労働協約がない場合であっても、裁判所は、使用者は労働者に対して整理解雇の必要性と時期・規模・方法について説明を行った上で、誠意を持って協議すべき信義則上の義務を負うと考える傾向にあります。
「労働組合がないのだから、個別の説明・協議は不要だ」は誤りです。組合がない場合でも、信義則上の説明・協議義務は生じます。個々の労働者(特に解雇対象者)に対して、具体的な資料を示しながら丁寧に説明し、その内容を記録しておくことが必要です。この義務は使用者が労働者の理解を得るための努力をどの程度したのかが問われることになります。
03説明すべき内容:必要性・時期・規模・方法の4点
整理解雇を検討せざるを得ない場合には、労働者に対し、次の4点についてできる限りの説明をすることが求められます。
①人員削減が必要な理由:財務状況・経営状況等の具体的な事実に基づいた説明が必要です。「業績が悪い」という抽象的な説明ではなく、財務資料・数値に基づいた具体的な説明が求められます。
②整理解雇の時期:いつ頃に整理解雇を実施する予定かを説明します。十分な準備期間・検討期間を設けることが、労働者の理解を得る上でも重要です。
③整理解雇の規模:何名程度を削減する予定かを説明します。
④整理解雇の方法:人選基準はどのようなものか・希望退職の募集を行うかどうか・退職条件はどのようなものかを説明します。
これらについて説明できない段階では、未だ整理解雇に踏み切る準備ができていないと考えるべきです。整理解雇の実施時期を決めた後に急いで形式的な説明をするのではなく、十分な準備が整った段階で誠実に説明・協議を行うことが重要です。
04手続の相当性を欠くとされやすいケース
説明に十分な時間をかけず、資料の提示を行わず、抽象的な説明に終始したような場合には、この要素を満たさないと判断されることになります。具体的には次のような場合に問題となります。
・財務資料等の具体的な裏付け資料を提示せず、口頭で「業績が悪い」とだけ説明した場合
・労働者・組合から質問・意見があったにもかかわらず、それに誠実に対応せず一方的に整理解雇の通告を行った場合
・労働者が理解・納得できるだけの十分な検討期間を設けなかった場合
「説明会を一度開けば手続として十分だ」は不十分なことが多いです。一度の説明会を開いただけでは、説明に十分な時間をかけ、資料を提示し、誠実に協議したとは評価されないことが多いです。複数回にわたる説明・協議の機会を設け、その都度の内容・労働者の反応を記録することが重要です。
05説明・協議の記録:紛争時の最大の防御
説明・協議を行った事実を証明するために、以下の内容を記録として残しておくことが不可欠です。
② 出席者(使用者側・労働者側)
③ 説明した内容(使用した資料の保存)
④ 労働者・組合から出された質問・意見
⑤ それに対する使用者側の回答・対応
記録は「言った・言わない」の争いになった場合の証拠となります。「口頭で説明したとは言えるが、記録が一切残っていない。裁判で『説明した事実が証明できない』として手続の相当性が否定された」というパターンは実務上よく見られます。特に「十分な時間をかけた」「具体的な資料を示した」「誠実に対応した」という事実を客観的に証明できる記録があることが、手続の相当性を立証する上で重要です。
監修者
弁護士法人四谷麹町法律事務所 代表弁護士 藤田 進太郎
東京大学法学部卒業。2003年弁護士登録。日本弁護士連合会会員労働法制委員会委員・事務局次長・最高裁行政局との労働審判制度に関する協議会協議員、第一東京弁護士会労働法制委員会委員・研修部会副部会長、経営法曹会議会員・第112回経団連労働法フォーラム報告担当者、労働審判員連絡協議会特別会員、日本労働法学会会員、東京麹町ロータリークラブ会員・2023-24年度幹事。
講演・著作 / 「会社経営者のための問題社員対応講座」(YouTube)
日本全国各地の会社経営者の皆様へ
弁護士法人四谷麹町法律事務所代表弁護士の藤田進太郎です。私は、労働問題のストレスから会社経営者の皆様を解放したいという強い思いを持っており、日本全国各地の会社経営者のために、問題社員、退職勧奨、労働審判、残業代トラブルなどの労働問題の予防解決に当たっています。問題社員、労働審判、残業代トラブルでお悩みでしたら、弁護士法人四谷麹町法律事務所にご相談ください。事務所会議室での経営労働相談のほか、ZoomやTeamsでのオンライン経営労働相談を実施しています。
最終更新日:2026年6月28日