この記事の結論
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懲戒解雇の意思表示が普通解雇を内包するかは事案ごとの解釈問題。懲戒解雇のみが明らかな場合は内包不認

一般論で「認められる・認められない」と断定できません。懲戒解雇のみを行ったことが明らかな場合は、普通解雇であれば有効な事案でも普通解雇の意思表示の内包は認められません。

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実務上の最善策は解雇通知書に「懲戒解雇とするとともに、予備的に普通解雇とする」旨を明記すること

岡田運送事件判決は限定的な場合にのみ内包を認めます。これに安易に依存することは危険であり、解雇通知書への予備的普通解雇の明記が最も確実な方法です。

01この問題の性質:意思表示の解釈(事実認定)の問題

 懲戒解雇を通知した場合に、その意思表示が同時に普通解雇の意思表示でもあるという主張が認められるかどうかは、結局のところ当該解雇の意思表示の解釈(事実認定)の問題であり、事案ごとに検討するほかありません。一般論として「認められる」「認められない」と断定することはできず、具体的な解雇通知書の文言・解雇に至る経緯・使用者の意思等を総合して判断されます。

 ただし、懲戒解雇のみを行ったことが明らかな場合は、普通解雇であれば有効な事案であっても、懲戒解雇の意思表示が同時に普通解雇の意思表示でもあるという主張は認められません。これは、懲戒解雇と普通解雇は性質が根本的に異なる(懲戒解雇は制裁としての解雇、普通解雇は雇用契約終了の意思表示)ため、懲戒解雇として行ったことが明らかな場合に、後から普通解雇の意思表示も含まれていたと主張することは認められないというものです。

 「懲戒解雇が無効になっても、あとで普通解雇として主張すれば大丈夫だ」は誤りです。懲戒解雇のみを行ったことが明らかな場合は、後から普通解雇の意思表示も含まれていたと主張することは認められません。

02岡田運送事件東京地裁判決:内包を認める場合の条件

 裁判例の中には、岡田運送事件東京地裁平成14年4月24日判決のように、内包を認める場合があります。同判決は次のように判示しています。

岡田運送事件(東京地裁平成14年4月24日判決)

「使用者が、懲戒解雇の要件は満たさないとしても、当該労働者との雇用関係を解消したいとの意思を有しており、懲戒解雇に至る経過に照らして、使用者が懲戒解雇の意思表示に、予備的に普通解雇の意思表示をしたものと認定できる場合には、懲戒解雇の意思表示に予備的に普通解雇の意思表示が内包されていると認めることができる」

 ただし、この判決が示す「使用者が懲戒解雇の意思表示に、予備的に普通解雇の意思表示をしたものと認定できる場合」を広く考えることはできません。懲戒解雇のみを意図していたことが明らかな場合に、後からこの論理で普通解雇としての効力を主張しようとしても、認められないリスクが高いです。「岡田運送事件判決があるから、懲戒解雇通知に普通解雇も当然含まれる」は誤りであり、この裁判例に安易に依存した対応は危険です。

03実務上のベストプラクティス:解雇通知書への明記

 解雇する時点で、①普通解雇にするのか、②懲戒解雇にするのか、③その理由はどのようなものなのかを明確にしておくべきです。懲戒解雇とともに普通解雇も行う場合は、解雇通知書に「懲戒解雇とするとともに、予備的に普通解雇とする」旨を明記しておくことが最も確実な実務対応です。

 解雇通知書への明記によって、懲戒解雇が無効となった場合でも普通解雇として効力が認められる可能性を事前に確保しておくことができます。もっとも、普通解雇としての有効性(客観的合理的理由・社会通念上の相当性)の問題は別途生じるため、懲戒事由に該当する事実が普通解雇の客観的合理的理由にも該当するかどうかを事前に確認しておくことが重要です。

 弁護士対応事例でよく見られるのは次のようなパターンです。

・「懲戒解雇通知書に予備的普通解雇の記載をしなかったため、懲戒解雇が無効とされた後に普通解雇として主張しようとしたが認められなかった。普通解雇として有効になりえた事案だったにもかかわらず、対応の余地がなくなった」
・「解雇通知書の文言を弁護士に確認せずに発行した。後から文言上の問題が指摘され、会社側の対応可能性が大幅に制約された」

 解雇通知書の文言は後の紛争を大きく左右します。発行前の弁護士への確認が最善の予防策です。

経営上のポイント 懲戒解雇の意思表示が普通解雇を内包するかは事案ごとの解釈問題です。懲戒解雇のみを行ったことが明らかな場合は内包は認められません。岡田運送事件東京地裁判決は限定的な場合にのみ内包を認め、安易に依存することは危険です。解雇通知書に「懲戒解雇とするとともに、予備的に普通解雇とする」旨を明記することが最も確実な方法です。解雇通知書の発行前に必ず弁護士に相談してください。アドバイスします。
監修者 弁護士 藤田 進太郎

監修者

弁護士法人四谷麹町法律事務所 代表弁護士 藤田 進太郎

東京大学法学部卒業。2003年弁護士登録。日本弁護士連合会会員労働法制委員会委員・事務局次長・最高裁行政局との労働審判制度に関する協議会協議員、第一東京弁護士会労働法制委員会委員・研修部会副部会長、経営法曹会議会員・第112回経団連労働法フォーラム報告担当者、労働審判員連絡協議会特別会員、日本労働法学会会員、東京麹町ロータリークラブ会員・2023-24年度幹事。
講演・著作 / 「会社経営者のための問題社員対応講座」(YouTube)

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弁護士法人四谷麹町法律事務所代表弁護士の藤田進太郎です。私は、労働問題のストレスから会社経営者の皆様を解放したいという強い思いを持っており、日本全国各地の会社経営者のために、問題社員、退職勧奨、労働審判、残業代トラブルなどの労働問題の予防解決に当たっています。問題社員、労働審判、残業代トラブルでお悩みでしたら、弁護士法人四谷麹町法律事務所にご相談ください。事務所会議室での経営労働相談のほか、ZoomやTeamsでのオンライン経営労働相談を実施しています。

最終更新日:2026年6月28日


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