向上心がなく主体的に学ぼうとしない。
動画解説
この記事の要点
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まず「仕事に必要な学び」か「仕事外の考え方・心構え」かを見極める お金を払ってでも学ばせたいかどうかが、仕事との関連性の目安になる |
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所定時間外の学びを、給料を払わずに求めることはできない 労働契約は所定時間の労務提供の契約。それ以外の時間は本人の自由 |
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「自主勉強会」は、実質参加必須なら労働時間・残業代の問題になりうる 「出なくてよい」ことを繰り返し伝え、不利益をにおわせない |
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「言われたことをきっちりやる」は、立派な適性である 主体性が不要な職務に配置すれば、本人にも会社にもメリットがある |
目次
1. 向上心がなく主体的に学ばない社員という悩み
自分から本を読んだり練習したりして学ぼうとしない。言わなければ何も自分で勉強しようとしない。そんな社員に頭を悩ませている経営者は少なくありません。「自分が若い頃は、言われなくてもしっかり本を読んで学んだり、自分で練習したりしてできるようになったのに、なぜこの社員は自分からやろうとしないのだろう」と感じる社長も多いでしょう。本記事では、向上心がなく主体的に学ぼうとしない社員への対処法を、会社側の視点から解説します。
2. まず「仕事に必要な学びか」を見極める
この問題を考えるにあたって、最初に検討しなければならないのが、学んでもらいたいことが、仕事に必要な知識や技術に関するものなのか、それとも仕事とは直接関係のない事項に関することなのかを、まず分類して考えることです。
お金を払ってでも学ばせたいかどうかが目安になる
仕事をするうえで必要なことであれば、会社の利害に関わりますから、なんとか学んでもらいたいと思うのは当然のことです。他方、仕事とは何らかの関連はあるとしても、物の考え方や心構えなど、仕事と直接強く関わりのないものについては、会社が干渉すべき問題ではありません。この見分け方として、会社がお金や時間を負担してでも学ばせたいと思うものであれば、仕事と関係するといえるでしょう。しかし、そこまでお金を払って学ばせなくてもよい、それは本人の問題だ、というものであれば、仕事との関わりは薄く、あまり干渉しないようにするのが適切です。
3. 自分の価値観で相手を判断しない
会社が本人に是非学んでもらいたい、仕事をするうえで必要だと考えているものについては、どのように学んでもらうのがよいでしょうか。ここで大事なのは、自分だったらこうなのに、と考えてはいけないということです。社長と発想が同じ人というのは、本当に少ないものです。話は合わせてくれるかもしれませんが、社長と発想が同じような方は、たいてい自分で会社を起こしています。わざわざ給料をもらってよその会社のために働く、ということは考えないことがほとんどだからです。
相手の価値観・物差しで、相手の考えを読み解く
自分がその方の立場だったらこう考える、と当てはめても、元々の価値観・物差しが社長とはまったく違いますから、自分の物差しで「向上心がない」「主体的に学ぼうとしない」と評価すると、大体間違ってしまいます。自分の価値観で考えるのではなく、なぜこの人はこう考えているのかを、探り当てる作業が必要になります。ここは意外と分かりにくいもので、本当に外国語のような感覚で、通訳が必要なこともあります。
4. 仕事に必要な学びは、仕事時間中に学ばせる
実際の対応として、仕事をやっていくうえで必要なものであれば、仕事時間中に、時間を取って給料も払って教えるのが基本です。「なぜ本人の学びのために会社がそこまで負担しなければならないのか」と思われるかもしれませんが、労働契約・雇用契約の本質から考えれば、給料を払って所定の時間、あるいは残業時間に働いてもらう契約です。仕事に必要で身につけてもらいたい知識・技術は、仕事時間中に、あるいは所定時間内では時間が取れないというなら、残業させて残業手当を払って学ばせる、というのが本筋です。
経営者自身も、主体的に判断する必要がある
社長からすると厳しいと思うかもしれませんが、社長も経営を主体的にやっていかなければなりません。相手がどうだからと言って左右されるのではなく、時間を取ってまで、給料を払ってまで、場合によっては残業代を払ってまでトレーニングするのかどうかを、経営者自身が考えて主体的に決めてください。そこまで負担する問題ではないと判断したら、そこは諦めていただくのがよいでしょう。自分でこうやってほしいと望むには、時間や給料という対価が必要であり、それと引き換えでなければ、労働契約・雇用契約の中で何かをしてもらうことはできません。
5. 所定時間外の学びは、本人が自由に決めてよい問題
労働契約・雇用契約の本質からすれば、所定労働時間や仕事をしている時間以外は、何をやっていようが自由です。会社が干渉すべき問題ではありません。会社の名誉を侵害するようなことはもちろんだめですが、プライベートの行動は自由なのが原則です。給料も出ない時間について、自主的に学べということは、せいぜいアドバイスの域を超えません。どうするかは、本人が自由に決めてよい問題なのです。
6. 自主勉強会に潜む残業代リスク
もっとも、会社がやってくれと言わなくても、自主的な勉強会やトレーニングを行うグループのある会社も多いでしょう。その運営のポイントとしては、会社が全く関与しない必要はなく、援助してもよいと思いますが、「嫌なら出なくてもよい」ということを繰り返し伝えるようにしてください。
「自主勉強会」の名を借りた実質的な義務は、残業代トラブルの元
自主勉強会と言いながら、実質的に義務のようになっている状態は、しばしば見られます。「残業代も出ないのに、自主勉強会と言いながら全然自主的ではないではないか」と非難されてトラブルになることも多いのです。義務ではないという建前でありながら、実際は義務であるかのように上司や社長から働きかけたとなれば、参加を余儀なくされたと言われ、労働時間だ、残業時間だと言われて、残業代を請求されるリスクが出てきます。とくに、仕事に必要な知識・技術の勉強会であれば、まさに会社が利益を得るわけですから、労働時間だと言われるリスクが高くなります。援助する場合であっても、「出る出ないはあなたの自由ですからね」というのを繰り返し伝え、社長の口から「出ないとまずい」「出ないとうまくいかない」といった不利益をにおわせる発言はしないようにしてください。
7. 「言われたことをきっちりやる」という適性の評価
ここまで話すと、「結局、自分が主体的にお金を払い、労働時間を使わせて学ばせるしかないのか」と思われるかもしれません。しかし、私が一番大事だと思う発想は、こういった方をどう考えるか、という点にあります。向上心がなく主体的に学ぼうとしない、という評価を、本人の適性を判断する行動として見ていきます。
「言われたことをきっちりやる」は立派な社員である
つまり、言われたことを言われたとおりに、言われたことだけをやる人だ、というふうに見ます。冷静に考えてみると、言われたことをしっかりできる方は、それだけで立派な社員です。自分の頭で考えてやってほしいというのは社長の希望かもしれませんが、実は、言われたことをきっちりやれる社員は、それほど多くいません。言われたことをきっちりできる方は、そんなに悪い人材ではなく、むしろ会社にとって財産と考えてもよいかもしれません。だからこそ、言われたことをきっちりできないから悩んでいる、というケースがほとんどなのです。言われたことをやるかどうかという部分の評価やチェックに注力し、しっかり給料を払えば所定労働時間しっかり働いてくれるのかどうか、というレベルで本人の適性を評価し、それなりの雇い方・人材戦略を取っていく。これで十分、会社にとってもメリットがあるはずです。本人も、自分から色々考えて行動するのが好きではないようですから、本人にとっても一番納得のいく働き方かもしれません。
向上心が必要な仕事、主体的に動かないと勤まらない上級管理職などの職務には、こういった方はつけない。言われたことをきっちりやるのが仕事だ、という職務・業務につけてあげて、本人の適性・才能を発揮していただく。これが現実的な対応だと思います。そういった価値観の人に対して「向上心を持て、主体的に学べ」と言うのは、ある意味傲慢なところがあります。社長としては期待しているからこそそういった発言をするのでしょうが、相手の価値観は社長とはまったく違いますから、どちらかというと「ハラスメント的な、都合のいいことを言っているな」くらいに受け止めている方も多いのです。「そんなことを言うなら、ちゃんと給料を払って、残業代もきっちり全額払ったうえでやらせればいいのに、社長こそ主体的に決めていないではないか」というのが、こういったタイプの方の価値観です。自分だったらこうだ、と考えるのではなく、相手が相手の立場だったらどうか、相手の判断基準だったらどうかを推測し、自分にできることに集中して、主体的に会社経営をやっていく必要があります。
8. まとめ
- まず「仕事に必要な学びか」「仕事外の考え方・心構えか」を見極める。お金を払ってでも学ばせたいかが目安になる
- 自分の価値観で相手を判断しない。相手の物差しで、なぜそう考えるのかを探る
- 仕事に必要な学びは、仕事時間中に、時間と給料を負担して学ばせるのが本筋
- 所定時間外の学びを、給料を払わずに求めることはできない。本人が自由に決めてよい問題
- 「自主勉強会」は、実質参加必須なら労働時間・残業代の問題になりうる。「出なくてよい」を繰り返し伝える
- 「言われたことをきっちりやる」は、立派な適性である。主体性が不要な職務に配置すればよい
向上心がなく主体的に学ぼうとしない社員に頭を悩ませる経営者は多いものですが、その多くは、単に本人の価値観が社長と異なるだけです。自分の価値観を押し付けず、相手の物差しで考え、仕事に必要な学びは対価を払って学ばせる。そして、言われたことをきっちりやるという適性を、むしろ会社の財産として活かせる職務に配置していく。この発想の転換が、経営者にとって大きな助けになるはずです。人材配置や教育指導にお悩みの経営者の皆様は、ぜひ会社側専門の弁護士にご相談ください。
東京大学法学部卒業。2003年弁護士登録。日本弁護士連合会会員労働法制委員会委員・事務局次長・最高裁行政局との労働審判制度に関する協議会協議員、第一東京弁護士会労働法制委員会委員・研修部会副部会長、経営法曹会議会員・第112回経団連労働法フォーラム報告担当者、労働審判員連絡協議会特別会員、日本労働法学会会員、東京麹町ロータリークラブ会員・2023-24年度幹事。
講演・著作 / 「会社経営者のための問題社員対応講座」(YouTube)
日本全国各地の会社経営者の皆様へ
弁護士法人四谷麹町法律事務所代表弁護士の藤田進太郎です。私は、労働問題のストレスから会社経営者の皆様を解放したいという強い思いを持っており、日本全国各地の会社経営者のために、問題社員、労働審判、残業代トラブルなどの労働問題の予防解決に当たっています。問題社員、労働審判、残業代トラブルでお悩みでしたら、弁護士法人四谷麹町法律事務所にご相談ください。事務所会議室での経営労働相談のほか、ZoomやTeamsでのオンライン経営労働相談を実施しています。
よくある質問(FAQ)
Q1. 自主的に勉強してほしいのですが、業務時間外に強制することはできますか。
A. できません。労働契約・雇用契約は、所定労働時間の労務提供を対価に給料を支払う契約です。それ以外の時間は、原則として本人の自由であり、会社が干渉すべき問題ではありません。仕事に必要な知識や技術をどうしても学んでもらいたいのであれば、仕事時間中に時間を取り、給料を払って学ばせる、あるいは残業時間として扱い残業代を払って学ばせるのが本筋です。所定時間外の学びは、せいぜいアドバイスにとどめるべきです。
Q2. 自主勉強会を実施していますが、注意点はありますか。
A. 「自主勉強会」という名前でも、実質的に参加が義務のようになっていると、労働時間と評価され、残業代を請求されるリスクがあります。とくに仕事に必要な知識・技術に関する勉強会は、会社が利益を得るものと見られやすく、リスクが高まります。参加は完全に任意であること、出なくても不利益はないことを繰り返し伝え、社長や上司の口から「出ないとまずい」といった発言はしないようにしてください。
Q3. 主体性のない社員は、会社にとって不利益な存在なのでしょうか。
A. 必ずしもそうとは限りません。言われたことをきっちりやれる社員は、実は貴重な人材です。主体的に考えて動くことを求めるのではなく、指示に従って確実に業務をこなすことが求められる職務に配置すれば、本人の適性を活かしつつ、会社にとっても十分な戦力になります。向上心や主体性が必須の職務(上級管理職など)には向かないと割り切り、適した業務に配置する人材戦略が現実的です。
最終更新日:2026年7月19日