動画解説

本記事の内容は、代表弁護士 藤田進太郎が動画でも解説しています。「会社経営者のための問題社員対応講座」(YouTube)では、問題社員対応の実務を継続的に配信しています。

この記事の結論
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周囲のフォローに感謝しない態度は、マナーの問題ではなく職場秩序を乱す組織運営上の課題であり、まず取り組むべきは教育指導

どの行動が問題で、なぜ改善が必要なのかを言語化して伝えることが出発点です。

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有給休暇など正当な権利行使を問題視してはならず、権利行使とその過程での無神経な言動は切り分けて指導する必要がある

あわせて、フォローする側の社員の負担が過度になっていないかにも、会社経営者として責任を持つ必要があります。

 周囲のフォローがあっても感謝の言葉一つなく当然のように受け取る社員がいると、職場には徐々に不満や緊張感が溜まっていきます。放置すれば、チームワークの崩壊や周囲の社員の疲弊につながり、会社全体の生産性や職場秩序を損なうリスクをはらんでいます。

 本記事では、周囲のフォローに感謝しない社員への対応について、会社経営者がどのような順序で判断すべきかを整理します。

01周囲のフォローに感謝しない社員が引き起こす問題と教育指導の出発点

 周囲のフォローに感謝の言葉一つなく当然のように受け取る社員がいると、フォローする側は「なぜ自分だけが負担を背負っているのか」と感じやすく、チームワークが崩れる原因になりがちです。会社経営者としては、「本人は悪気がないのかもしれない」と放置するのではなく、経営上の問題として正面から捉える必要があります。

 会社経営者として最初に検討すべきなのは、懲戒や評価ではなく教育指導です。感謝しない態度が問題になるのは本人に悪意があるからとは限らず、職場で求められている振る舞いを理解できていない可能性もあるためです。まずは「どの行動が問題なのか」「なぜ問題なのか」を言語化して伝えることが重要になります。

 面談のやり方を誤ると、かえって反発や誤解を生みます。「どの行動が問題だったのか」「その行動が職場にどのような影響を与えたのか」を明確に示したうえで面談を行い、問題行動から時間が経ち過ぎないよう、できるだけ早く場を設け、テーマを絞って話すことが、教育効果を高め、無用な対立を避けるためのポイントになります。

02「ありがとう」を求める指導と権利行使との切り分け

 周囲のフォローに対して「ありがとう」と言わせることは会社として強制できる義務なのかと悩む会社経営者もいますが、問題の本質は感情そのものではなく、職場秩序や人間関係を円滑に保つための最低限の振る舞いにあります。「感謝の気持ちを持て」と内心まで立ち入ることはできませんが、「職場では感謝の言葉を伝える」といった行動レベルの指導であれば、十分に合理性があります。

 特に注意が必要なのが「権利行使」との関係です。年次有給休暇の取得や会社が認めている制度の利用によって周囲の負担が増えた場合でも、権利行使自体を問題視することはできません。権利を使った以上感謝しなければならないという考え方を前面に出してしまうと、権利行使を萎縮させる結果になりかねず、法的にもリスクがあります。

 もっとも、権利行使と職場での振る舞いは別の問題です。権利を行使すること自体は当然認めつつ、その過程で無神経な発言をしたり周囲を刺激するような態度を取ったりすることまで許容する必要はありません。「権利は尊重する」「人間関係を壊す言動は改めてもらう」という二つを切り分けて考え、冷静に指導していく姿勢が重要になります。

03周囲の負担軽減|会社経営者の責任と人員配置の工夫

 問題のある社員一人への対応と同時に、会社経営者として必ず意識すべきなのが「周囲の負担が過度になっていないか」という点です。感謝しない態度や無神経な言動が原因で真面目に働いている社員が疲弊してしまっては、本末転倒です。フォローする側が限界に近づいているにもかかわらず問題を放置すると、感情が高ぶった結果パワハラと受け取られかねない言動が出てしまい、別のトラブルに発展するおそれもあります。

 誰がフォローや教育指導を担っているのかという点も、見逃せないポイントです。教育指導が苦手な社員に配慮に欠ける社員のフォローを任せ続けると、負担が過度に重くなり不満や疲弊が一気に表面化します。「誰に任せるか」を偶然や慣例で決めるのではなく、適性を見極めた配置を意識する必要があります。

 あわせて見落としてはならないのが、報酬や評価とのバランスです。フォローや教育指導は直接売上を生む業務ではないため評価が後回しにされがちですが、負担が大きいにもかかわらず報酬や評価に反映されていない状態が続くと、「損な役回りを押し付けられている」という不満が蓄積します。残業代の適正な支払いだけでなく、役割手当や管理職手当、賞与などを通じて、負担に見合った評価を行う工夫が求められます。

04職務変更・配置転換という現実的対応

 教育指導を行い、周囲の負担軽減や体制整備を進めてもなお周囲との軋轢が解消されない場合には、担当する職務や業務内容の変更を検討する必要があります。チームワークが強く求められる業務に、配慮やコミュニケーションが苦手な社員を配置し続けることは、会社全体にとってリスクが高い選択です。

 人との関わりが比較的少ない業務や、個人作業が中心となる職務に配置転換することで、本人が力を発揮しやすくなり、周囲のストレスも軽減されるケースは少なくありません。これは本人を甘やかす対応ではなく、適性を踏まえた合理的な人員配置です。「同じ仕事をさせ続けることが公平なのか」という視点を持ち、業務内容を見直すことは、組織全体の安定を守るための現実的かつ必要な対応となります。

05退職勧奨・解雇を検討すべき最終局面

 教育指導、体制整備、職務変更など考え得る対応を尽くしてもなお周囲との摩擦が解消されず、職場秩序が著しく損なわれている場合には、退職勧奨や解雇を検討せざるを得ない局面に入ります。これは軽い判断ではなく、最終手段として位置付けるべきものです。

 退職勧奨は、あくまで本人の合意を前提とするものであり、強要や圧力と受け取られるような進め方は厳禁です。なぜこれ以上雇用を継続することが難しいのか、これまでどのような対応を行ってきたのかを整理し、冷静に説明する必要があります。解雇については、さらに高いハードルがあり、客観的で合理的な理由と社会的相当性が求められます。感謝しない態度そのものだけで解雇が認められることは稀であり、これまでの指導経過や職場への影響を含めて総合的に判断する必要があります。

 重要なのは、感情に流されず、段階を踏んだ対応を積み重ねておくことです。会社経営者自身が冷静に全体を見渡し、組織と社員双方にとって現実的な着地点を選び取ることが、最もトラブルの少ない解決につながります。この段階に進む場合には、必ず事前に弁護士へ相談してください。

06よくある質問(FAQ)

Q. 「ありがとう」と言わない社員に、感謝を強制してもよいですか。

内心まで強制することはできませんが、「感謝の言葉を伝える」といった行動レベルの指導であれば合理性があります。職場秩序を保つための最低限の振る舞いとして位置付けてください。

Q. 有給休暇を取得した社員に不満を言うのは問題ありませんか。

有給休暇の取得は労働者の正当な権利であり、行使自体を問題視することはできません。権利行使と、その過程での無神経な言動は切り分けて指導する必要があります。

Q. フォローする側の社員の負担にはどう対応すべきですか。

人員配置の見直しや、役割手当・管理職手当などによる評価への反映を検討してください。負担が特定の社員に偏った状態を放置すると、職場全体の疲弊につながります。

Q. 教育指導を尽くしても改善しない場合、次はどうすべきですか。

職務変更や配置転換を検討し、それでも解消しない場合は退職勧奨・解雇を視野に入れます。いずれも段階を踏んだ対応の記録が重要になります。

経営上のポイント 周囲のフォローに感謝しない態度は、マナーの問題ではなく職場秩序を乱す組織運営上の課題です。まず取り組むべきは教育指導であり、有給休暇など正当な権利行使とその過程での言動は切り分けて指導してください。あわせて、フォローする側の負担軽減と評価への反映も並行して進め、それでも改善しなければ職務変更・配置転換、最終的には退職勧奨・解雇を段階的に検討します。具体的な事情に応じて、実務で使える方針をアドバイスします。
監修者 弁護士 藤田 進太郎

弁護士法人四谷麹町法律事務所 代表弁護士 藤田 進太郎

東京大学法学部卒業。2003年弁護士登録。日本弁護士連合会会員労働法制委員会委員・事務局次長・最高裁行政局との労働審判制度に関する協議会協議員、第一東京弁護士会労働法制委員会委員・研修部会副部会長、経営法曹会議会員・第112回経団連労働法フォーラム報告担当者、労働審判員連絡協議会特別会員、日本労働法学会会員、東京麹町ロータリークラブ会員・2023-24年度幹事。
講演・著作 / 「会社経営者のための問題社員対応講座」(YouTube)

日本全国各地の会社経営者の皆様へ

弁護士法人四谷麹町法律事務所代表弁護士の藤田進太郎です。私は、労働問題のストレスから会社経営者の皆様を解放したいという強い思いを持っており、日本全国各地の会社経営者のために、問題社員、退職勧奨、労働審判、残業代トラブルなどの労働問題の予防解決に当たっています。職場秩序・チームワークに関する問題社員対応でお悩みでしたら、弁護士法人四谷麹町法律事務所にご相談ください。事務所会議室での経営労働相談のほか、ZoomやTeamsでのオンライン経営労働相談を実施しています。

最終更新日:2026年7月7日


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