問題社員241 突然出社しなくなり連絡が取れない社員が入居していた社宅を明け渡してもらう方法
動画解説
目次
1. 問題の構造——「放置もできず、無断で荷物を出すこともできない」という難しさ
突然出社しなくなり行方不明になった社員が社宅に入居していた場合、会社は非常に難しい状況に置かれます。
まず放置できないという問題があります。会社所有の社宅であれば固定資産として維持コストがかかります。借り上げ社宅(会社が外部から借りて社員に住まわせている物件)の場合はさらに深刻で、本人がいないのに会社が大家への家賃を払い続けることになります。本人に天引きで負担させていた場合でも、欠勤中は給料が払われないため天引きの元となる給料がなくなってしまいます。
一方で無断で荷物を出すことも法的には問題があるという制約があります。社宅とはいえ本人が生活していたプライベートな空間です。本人の同意なく立ち入って私物を持ち出すことは、法的にはリスクを伴います。
2. 多くの中小企業の実務——家族・身元保証人に立ち会ってもらって荷物を運び出す
このような状況に置かれた場合、多くの中小企業で実際に行われているのは、「家族や身元保証人と連絡を取り、了解を得た上で立ち会ってもらって荷物を運び出す」という方法です。
具体的には、身元保証人(多くの場合は両親など)に状況を説明して協力を求め、当該社宅に来てもらった上で部屋に立ち入り、社員の私物などを家族の立ち会いのもとで整理・搬出するという対応です。場合によっては家族の家に荷物を送るということもあります。
3. この方法の法的評価——実際上のトラブルは少ないが法的に完全に正しいとは言えない
この方法について弁護士として正直に申し上げると、法的に完全に問題ないとは言えない部分があります。本人が1人で住んでいた社宅の私物を、例え家族が了解していても、本人の同意なく持ち出すことは法的には問題を残すことになります。
ただし実際上のトラブルになるケースが少ないのも事実です。本人が長期間にわたって連絡しないという落ち度があり、家族(両親等)が了解の上で立ち会って処理したという事情があれば、リスクは比較的低いと言えます。こうした実態から、コストパフォーマンスを考えてこの方法をとる会社が多いのが現状です。
4. コンプライアンスを徹底する場合——明け渡し訴訟→公示送達→強制執行
コンプライアンスを最重視し、法的に全く問題のない方法で進めたい場合は、次の手順を踏むことになります。
▶ 法的に最も確実な社宅明け渡しの手順
① 本人を被告として明け渡し訴訟を提起する
② 本人の所在が不明なため通常の送達ができない場合は公示送達(簡易裁判所の手続き)を利用して訴状を届けたとみなす
③ 勝訴判決を取得する
④ 勝訴判決を使って明け渡しの強制執行を行う
この方法は弁護士に依頼して進めることになります。手間・時間・費用がかかりますが、法的に後ろ指を刺されることのない方法です。万が一にも問題を起こしたくない会社や大企業はこの方法を選択することになります。
5. どの方法を選ぶかは経営者が自社の方針を踏まえて判断する
社宅の明け渡し方法は、「コスト・コンプライアンス・スピード」の3点のバランスを考慮して、経営者が自社の方針を踏まえて選択するものです。
正解は一つではありません。コンプライアンスを最重視する大企業は訴訟による強制執行を選択するでしょう。コストと手間を考慮した中小企業は家族・身元保証人の協力を得た実務処理をとることが多いでしょう。いずれの方法を選ぶとしても、選択の前に弁護士に個別の状況を相談してリスクを把握した上で判断することをお勧めします。
6. まとめ
① 放置もできず無断で荷物を出すこともできないという難しい状況
借り上げ社宅は家賃が会社負担で続く。本人の私物を無断で出すことは法的リスクがある。
② 多くの中小企業は家族・身元保証人の立ち会いで実務処理——リスクは比較的低いが法的に完全ではない
実際上のトラブルが少ないため多く採用されている。本人の落ち度・家族の了解がある場合はリスクが低い。
③ コンプライアンス重視なら明け渡し訴訟→公示送達→強制執行——弁護士に依頼して進める
手間・コスト・時間はかかるが法的に最も確実。どの方法を選ぶかは自社の方針を踏まえて経営者が判断する。
よくある質問(FAQ)
行方不明社員の社宅明け渡し問題でお困りの方はご相談ください
方法の選択肢の整理・明け渡し訴訟・公示送達の手続きまで、会社側の立場に特化した弁護士が具体的にアドバイスします。
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最終更新日 2026/04/16
