目次
1. 有給休暇における継続勤務年数の基本的な考え方
年次有給休暇は、一定期間継続して勤務し、かつ所定の出勤率を満たした労働者に付与される法定の休暇です。会社経営者としては、有給休暇の付与日数や管理方法を適切に行うために、「継続勤務年数」の考え方を正しく理解しておく必要があります。
原則として、年次有給休暇は、雇い入れの日から6か月間継続勤務し、その期間の全労働日の8割以上出勤している場合に付与されます。その後の付与日数は、継続勤務年数に応じて段階的に増加していきます。
ここで問題となるのが、定年退職などにより一度雇用契約が終了した後、あらためて再雇用した場合に、再雇用前の勤務期間を継続勤務年数として通算できるのかという点です。この点は、会社経営者にとって、有給休暇の付与義務や管理コストに直結する重要な労務管理上の論点といえます。
有給休暇における継続勤務年数の通算可否は、形式的な雇用契約の区切りだけで判断されるものではなく、実際の労働関係の継続性を踏まえて判断される点に注意が必要です。
2. 定年退職後の再雇用と継続勤務の判断基準
定年退職後に労働者を再雇用した場合、再雇用前後の勤務期間が有給休暇の継続勤務年数として通算されるかどうかは、形式的に一度退職しているか否かだけで決まるものではありません。会社経営者としては、実務上の判断基準を正しく押さえておくことが重要です。
行政通達では、再雇用前後の労働関係が「実質的に継続しているかどうか」によって判断すべきとされています。具体的には、定年退職後、相当期間を空けることなく再雇用されているか、業務内容や勤務形態に大きな変更がないかといった点が考慮されます。
例えば、定年退職後、直ちに嘱託社員や契約社員として再雇用され、業務内容も大きく変わらない場合には、労働関係は実質的に継続していると評価されやすくなります。この場合、再雇用前の勤務年数を有給休暇の継続勤務年数として通算する必要が生じます。
一方で、再雇用までに相当の期間が空いている場合や、雇用の実態が大きく異なる場合には、労働関係の継続性が否定される可能性もあります。会社経営者としては、再雇用の実態を踏まえて、個別具体的に判断することが求められます。
3. 継続勤務年数が通算されるケース
定年退職後に再雇用した場合でも、再雇用前後の労働関係が実質的に継続していると評価されるときには、有給休暇の継続勤務年数は通算されます。会社経営者としては、どのような場合に「継続勤務」と判断されやすいのかを把握しておくことが重要です。
典型的なのは、定年退職後、期間を空けることなく直ちに再雇用しているケースです。例えば、定年退職日の翌日から嘱託社員や契約社員として再雇用され、業務内容や勤務場所、勤務時間などに大きな変更がない場合には、労働関係は形式上区切られていても、実質的には継続していると評価されやすくなります。
また、雇用形態が正社員から契約社員に変更されていたとしても、それだけで継続性が否定されるわけではありません。会社経営者としては、肩書や契約書の形式ではなく、実際の就労実態が重視される点を理解しておく必要があります。
4. 継続勤務年数が通算されないケース
一方で、定年退職後に再雇用したすべてのケースで、有給休暇の継続勤務年数が通算されるわけではありません。再雇用前後の労働関係に実質的な断絶がある場合には、継続勤務とは評価されない可能性があります。
例えば、定年退職後に一定期間の空白期間があり、その後あらためて新たな雇用契約を締結している場合には、労働関係の継続性が否定されやすくなります。また、業務内容が大きく変更され、従前の職務との関連性が乏しい場合も、通算が否定される要素となります。
さらに、勤務日数や労働時間が大幅に減少し、就労実態が根本的に変わっている場合にも、継続勤務とは認められない可能性があります。会社経営者としては、「定年後再雇用だから必ず通算される」「一度退職しているから必ずリセットされる」といった一律の判断を避けることが重要です。
5. 会社経営者が実務上注意すべきポイント
定年退職後の再雇用における有給休暇の取扱いは、会社経営者にとって見落とされがちな労務管理上のリスクポイントです。継続勤務年数の判断を誤ると、有給休暇の付与不足や未消化を巡る紛争に発展するおそれがあります。
会社経営者としては、再雇用の際に、雇用開始日や業務内容、勤務形態をどのように設計するのかを事前に整理しておくことが重要です。また、有給休暇の通算の有無について、就業規則や社内運用で明確な方針を示しておくことも有効です。
定年後再雇用は人材活用の観点から重要な制度である一方、労務管理上の配慮を欠くと法的リスクを伴います。会社経営者としては、再雇用の実態を踏まえたうえで、有給休暇の継続勤務年数を適切に判断し、安定した労務管理を行うことが求められるでしょう。
最終更新日2026/2/5
