この記事の結論
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在職中は、規定がなくても当然に競業避止義務を負う

個別の労働契約や就業規則の規定がなくても、在職中の従業員は、労働契約に付随する誠実義務の一環として、当然に競業避止義務を負うと考えられます。在職中の競業行為は当然に義務違反となります。

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競業「準備」は、事業活動への影響の有無で判断される

在職中の競業準備が義務違反となるかは、従業員の引き抜き、顧客奪取、企業秘密の漏洩等、使用者の事業活動に影響を及ぼす行為が行われているかどうかが重視されます。役職の高さも判断に影響します。

 808の記事で解説したとおり、競業行為をめぐる紛争は、在職中の行為か退職後の行為かによって判断基準が異なります。本稿では、在職中の競業避止義務違反の判断基準を掘り下げて解説します。

 会社側専門の弁護士の立場から、在職中の競業行為・競業準備が義務違反となるかの判断基準を解説します。

01在職中の競業避止義務の根拠

 従業員の競業避止義務については、法令上明確な根拠規定は置かれていませんが、個別の労働契約や就業規則の規定で競業避止義務を定めていなかったとしても、在職中の従業員は、労働契約に付随する誠実義務の一環として、当然に競業避止義務を負うと考えられます。雇用契約が続いている以上、従業員は使用者の利益に反する行動を控えるべきという考え方に基づくものです。

02在職中の競業行為は当然に義務違反

 在職中の競業行為は、当然、競業避止義務違反となります。会社に籍を置きながら、実質的に競合するビジネスを行うことは、誠実義務に真っ向から反する行為だからです。

03競業「準備」の判断基準

 問題は、在職中に競業準備を行うことが競業避止義務違反となるか否かについてです。裁判例では、従業員の誠実義務違反の問題として検討されていることがよくありますが、違反の有無を判断する際には、事業開始前の従業員の引き抜き、顧客奪取、企業秘密の漏洩等、使用者の事業活動に影響を及ぼす行為が行われているかどうかが重視されています。

 カナッツコミュニティほか事件(東京地裁平成19年4月31日判決)では、退職日前に競業会社の取締役に就任し営業に関与していたことが競業避止義務違反に違反することは明らかだとしています。単なる開業準備の検討にとどまらず、実際に競合会社の役員として営業活動に踏み込んでいた点が、決定的な要素になったと考えられます。

04役職による違いの傾向

 また、部長や高い役職の従業員、機密情報に密に接していた従業員は、競業避止義務違反を認められやすい傾向があります。たとえば、競合他社の設立を企画した高位の従業員の責任を認めつつ、これに賛同した下位の従業員の責任を否定した裁判例があります(吉野事件、東京地裁平成7年6月12日判決)。役職や情報アクセスの程度が高いほど、使用者に対する誠実義務も重く課されるという考え方が背景にあります。

05会社側が押さえておくべき視点

 会社側としては、従業員の競業準備行為が発覚した場合、まず、その行為が単なる「独立の検討」の段階にとどまっているのか、それとも顧客奪取・秘密漏洩・従業員の引き抜きといった実質的な事業活動への影響を伴うものかを見極める必要があります。前者にとどまる限り、義務違反として問責することは難しい可能性があります。

 特に、役員クラスの従業員や機密情報にアクセスできる立場の従業員については、その言動を注視し、競業準備の兆候が見られた場合には、早期に事実関係を確認する体制を整えておくことが重要です。

06よくある質問(FAQ)

Q. 就業規則に競業避止義務の規定がなければ、在職中の競業行為は問題になりませんか。

問題になります。規定がなくても、在職中の従業員は労働契約に付随する誠実義務の一環として当然に競業避止義務を負い、在職中の競業行為は当然に義務違反となります。

Q. 退職前に独立を検討していただけでも、競業避止義務違反になりますか。

単なる検討段階では、直ちに義務違反とはなりにくいと考えられます。従業員の引き抜き、顧客奪取、企業秘密の漏洩等、事業活動への現実の影響が重視されます。

Q. 競業を企画した上位の従業員と、それに賛同しただけの下位の従業員は、同じように扱われますか。

同じには扱われないことがあります。企画した高位の従業員の責任を認めつつ、賛同した下位の従業員の責任を否定した裁判例があります(吉野事件)。

経営上のポイント 在職中の従業員は、就業規則等に規定がなくても、労働契約に付随する誠実義務の一環として当然に競業避止義務を負い、在職中の競業行為は当然に義務違反となります。問題となるのは競業「準備」行為の評価で、事業開始前の従業員の引き抜き、顧客奪取、企業秘密の漏洩等、使用者の事業活動への影響が重視されます。退職前に競業会社の取締役に就任し営業に関与していた場合は義務違反が明らかとされました(カナッツコミュニティほか事件)。また、部長等の高位の従業員は義務違反を認められやすく、企画者と賛同者とで責任の有無が分かれる例もあります(吉野事件)。会社側としては、単なる検討段階か実質的な事業活動への影響を伴うものかを見極め、役員クラスの従業員の動向には特に注意を払うことが重要です。競業行為への対応は、会社側・使用者側専門の弁護士にご相談ください。具体的な事情に応じて、実務で使える方針をアドバイスします。
監修者 弁護士 藤田 進太郎

監修者

弁護士法人四谷麹町法律事務所 代表弁護士 藤田 進太郎

東京大学法学部卒業。2003年弁護士登録。日本弁護士連合会会員労働法制委員会委員・事務局次長・最高裁行政局との労働審判制度に関する協議会協議員、第一東京弁護士会労働法制委員会委員・研修部会副部会長、経営法曹会議会員・第112回経団連労働法フォーラム報告担当者、労働審判員連絡協議会特別会員、日本労働法学会会員、東京麹町ロータリークラブ会員・2023-24年度幹事。
講演・著作 / 「会社経営者のための問題社員対応講座」(YouTube)

日本全国各地の会社経営者の皆様へ

弁護士法人四谷麹町法律事務所代表弁護士の藤田進太郎です。私は、労働問題のストレスから会社経営者の皆様を解放したいという強い思いを持っており、日本全国各地の会社経営者のために、問題社員、退職勧奨、労働審判、残業代トラブルなどの労働問題の予防解決に当たっています。競業行為をめぐる紛争でお困りでしたら、弁護士法人四谷麹町法律事務所にご相談ください。事務所会議室での経営労働相談のほか、ZoomやTeamsでのオンライン経営労働相談を実施しています。

最終更新日:2026年7月13日


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