賃金に関する労基法上の原則を教えてください。
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労基法24条は4つの支払原則を定めている 賃金は、①通貨で、②直接労働者に、③その全額を、④毎月1回以上一定の期日を定めて支払わなければなりません(労基法24条)。 |
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口座振込みや全額払には行政解釈上の要件・例外がある 賃金の口座振込みには5つの要件を満たすことが必要です。全額払の原則には、法令の定めや労使協定による例外、労働者の自由な意思による相殺の例外があります。 |
850・851・852の記事で解説した賃金控除・相殺の議論は、いずれもこの労基法24条が定める賃金支払の基本原則を前提としています。本稿では、この基本原則を体系的に整理します。
会社側専門の弁護士の立場から、賃金に関する労基法上の4つの原則を解説します。
01通貨払の原則
賃金は、「通貨」で支払わなければならないという原則であり(労基法24条1項)、日本国において強制通用力ある貨幣(日本円)のことを指し、外国通貨は入らないとされています。この原則は、現物給与を禁止することを目的としたものです。
賃金の口座振込みは、行政解釈において、①労働者の同意を得ること、②労働者が指定する銀行等本人名義の預貯金口座に振り込むこと、③賃金支払日に払い出し得る状況にあること、④過半数労働組合または過半数代表者と協定を締結すること、⑤賃金支払日に労働者へ支払計算書を支給することの要件を充たす場合に限り労基法24条に違反しないと取り扱われています。
02直接払の原則
賃金は直接労働者に支払わなければならないという原則です(労基法24条1項)。この原則は、職業仲介人などが賃金を代理受領して中間搾取を行うこと等を排除することを目的としています。
03全額払の原則
賃金はその全額を支払わなければならないという原則です。例外的に、法令に別段の定めがある場合と過半数労働組合又は過半数代表者との間で書面による協定がある場合は、この原則に違反しないことになります。「法令に別段の定めがある場合」とは所得税の源泉徴収、社会保険料の控除等があります。
また、判例上、使用者が労働者の同意を得て行う相殺は、当該相殺が労働者の自由な意思に基づいてされたものであると認めるに足りる合理的理由が客観的に存在するときは、全額払の原則に反しないと考えられています。851の記事で解説した日新製鋼事件(最高裁平成2年11月26日)は、この点を示した代表的な判例です。
04毎月1回以上一定期日払の原則
賃金は毎月1回以上、一定の期日を定めて支払わなければならないという原則です。「毎月25日」のように具体的な日を定める必要があり、「毎月第4金曜日」のように月によって支払日が変動するような定め方は、この原則に反するとされています。
05会社側が押さえておくべき視点
会社側としては、この4原則を賃金実務の基本として押さえ、給与規程や実際の運用が、これらの原則に反していないかを点検する必要があります。特に口座振込みについては、単に労働者の口座に振り込んでいるというだけでなく、行政解釈上の5要件(同意、本人名義口座、支払日の払出し可能性、労使協定、支払計算書の交付)をすべて満たしているかを確認することをお勧めします。
全額払の原則については、850・851・852の記事で解説したとおり、労働者への損害賠償請求や過払賃金の精算に関して、特有の慎重な対応が求められます。
06よくある質問(FAQ)
Q. 賃金を口座振込みで支払う場合、労働者の同意だけあれば足りますか。
同意だけでは足りません。労働者の同意に加え、本人名義口座への振込み、支払日の払出し可能性、労使協定の締結、支払計算書の交付という5要件をすべて満たす必要があります。
Q. 「毎月第4金曜日」を給料日とすることは問題ありませんか。
問題があります。毎月1回以上一定期日払の原則は、具体的な期日を定めることを求めており、月によって変動する定め方は認められません。
Q. 全額払の原則の例外には、どのようなものがありますか。
法令に別段の定めがある場合(源泉徴収、社会保険料控除等)、過半数労働組合等との書面協定がある場合、労働者の自由な意思に基づく相殺への同意がある場合が挙げられます。
監修者
弁護士法人四谷麹町法律事務所 代表弁護士 藤田 進太郎
東京大学法学部卒業。2003年弁護士登録。日本弁護士連合会会員労働法制委員会委員・事務局次長・最高裁行政局との労働審判制度に関する協議会協議員、第一東京弁護士会労働法制委員会委員・研修部会副部会長、経営法曹会議会員・第112回経団連労働法フォーラム報告担当者、労働審判員連絡協議会特別会員、日本労働法学会会員、東京麹町ロータリークラブ会員・2023-24年度幹事。
講演・著作 / 「会社経営者のための問題社員対応講座」(YouTube)
日本全国各地の会社経営者の皆様へ
弁護士法人四谷麹町法律事務所代表弁護士の藤田進太郎です。私は、労働問題のストレスから会社経営者の皆様を解放したいという強い思いを持っており、日本全国各地の会社経営者のために、問題社員、退職勧奨、労働審判、残業代トラブルなどの労働問題の予防解決に当たっています。賃金支払実務の適正化でお困りでしたら、弁護士法人四谷麹町法律事務所にご相談ください。事務所会議室での経営労働相談のほか、ZoomやTeamsでのオンライン経営労働相談を実施しています。
最終更新日:2026年7月13日