労働協約に基づいて賃金を減額する場合、どのような要件と注意点がありますか。
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労働協約の効力は原則として組合員にのみ及ぶ 労働条件の基準を定めた労働協約に反する個別の労働契約部分は無効となり、協約の基準が適用されます(労組法16条)。ただし、この効力は原則として締結した労働組合の組合員にのみ及びます。 |
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4分の3要件を満たせば非組合員にも一般的拘束力が及ぶ 同種業務に従事する労働者の4分の3以上が協約の適用を受けるに至った場合、その協約は他の同種労働者にも適用されます(労組法17条)。ただし非組合員への適用が権利濫用となる場合もあります。 |
目次
898の記事で解説した就業規則の変更による賃金減額とは異なるルートとして、労働組合との労働協約を通じた賃金減額があります。この2つの手法は根拠となる法律も要件も異なるため、正確に区別して理解する必要があります。
会社側専門の弁護士の立場から、労働協約に基づく賃金減額の基本構造と実務上の注意点を解説します。
01労働協約に基づき賃金減額が認められる基本構造
労働協約は、使用者と労働組合との間で締結されるものであり、一定の範囲において個々の労働契約に優先して適用されます。労働協約のうち「労働条件その他労働者の待遇に関する基準」として定められた部分については、その基準に反する個別の労働契約部分は無効となり、労働協約上の基準が適用されます(労働組合法第16条)。
ただし、労働協約の効力は原則として、その労働協約を締結した労働組合の組合員に及びます。組合員に対する場合と、組合員以外の労働者にまで効力を及ぼそうとする場合では、法的な要件が異なります。この点を混同したまま賃金減額を行うと、減額の根拠が否定されるおそれがあります。
02組合員に対して賃金減額を行う場合のポイント
労働協約に基づいて組合員に賃金減額を行う場合、一定の要件を満たしていれば、個別の同意を得ることなく賃金を減額できる可能性があります。その前提として、会社経営者は有効な労働協約が適法に締結されていることを説明できなければなりません。具体的には、労働協約締結権限を有する労働組合との間で、適切な手続を経て労働協約が締結されており、その内容が書面化されていることが必要です。
また、賃金減額の対象となる労働者が実際にその労働協約を締結した労働組合の組合員であることも重要です。形式的に組合が存在していても、当該労働者が組合員でなければ、原則として労働協約の効力は及びません。「労働協約があるから大丈夫」と安易に考えるべきではなく、適用対象を後からでも説明できる状態にしておくことが求められます。
03組合員以外の労働者に賃金減額を及ぼす場合の要件
同種の業務に従事する労働者の4分の3以上が一の労働協約の適用を受けるに至った場合、その協約は当該工場事業場の同種の業務に従事する他の労働者にも適用されます(いわゆる「一般的拘束力」、労働組合法第17条)。この要件を満たす場合、組合員以外の労働者に対しても労働協約に基づく賃金減額の効力を及ぼすことができる可能性があります。
ただし、この一般的拘束力の適用にあたっては、「4分の3要件」を満たしているかの具体的な数値確認が必要です。また、労働組合員よりも不利な労働条件を強いられる場合など、非組合員への適用が権利濫用となる場合があることも念頭に置く必要があります。
04会社経営者が実務上注意すべきポイント
労働協約に基づく賃金減額を検討する際は、以下の点を一つ一つ丁寧に確認することが重要です。まず、誰が締結した労働協約か(締結権限の有無)、書面化されているかを確認します。次に、組合員か否かによって適用関係がどうなるかを整理します。組合員以外の労働者に及ぼす場合は4分の3要件を満たしているかを確認します。そして、賃金減額の内容が「労働条件その他労働者の待遇に関する基準」として適法に定められているか、強行法規(最低賃金法等)に反していないかを確認します。
特に注意が必要なのは、「経営状況に応じて賃金を減額することがある」といった抽象的な定めだけでは、基準としての効力が認められにくいという点です。賃金減額の定めは具体的な基準として明確に記載されている必要があります。
05よくある質問(FAQ)
Q. 労働協約があれば、全従業員の賃金を一律に減額できますか。
できるとは限りません。労働協約の効力は原則として締結組合の組合員にのみ及びます。非組合員に及ぼすには、4分の3要件(一般的拘束力)を満たす必要があります。
Q. 一般的拘束力とは何ですか。
同種業務に従事する労働者の4分の3以上が協約の適用を受けるに至った場合、当該労働協約が他の同種労働者にも適用される制度です(労組法17条)。
Q. 「経営状況に応じて賃金を減額する」という抽象的な条項でも有効ですか。
効力が認められにくくなります。賃金減額の定めは、労働条件の基準として具体的に記載されている必要があります。
監修者
弁護士法人四谷麹町法律事務所 代表弁護士 藤田 進太郎
東京大学法学部卒業。2003年弁護士登録。日本弁護士連合会会員労働法制委員会委員・事務局次長・最高裁行政局との労働審判制度に関する協議会協議員、第一東京弁護士会労働法制委員会委員・研修部会副部会長、経営法曹会議会員・第112回経団連労働法フォーラム報告担当者、労働審判員連絡協議会特別会員、日本労働法学会会員、東京麹町ロータリークラブ会員・2023-24年度幹事。
講演・著作 / 「会社経営者のための問題社員対応講座」(YouTube)
日本全国各地の会社経営者の皆様へ
弁護士法人四谷麹町法律事務所代表弁護士の藤田進太郎です。私は、労働問題のストレスから会社経営者の皆様を解放したいという強い思いを持っており、日本全国各地の会社経営者のために、問題社員、退職勧奨、労働審判、残業代トラブルなどの労働問題の予防解決に当たっています。労働協約に基づく賃金減額でお困りでしたら、弁護士法人四谷麹町法律事務所にご相談ください。事務所会議室での経営労働相談のほか、ZoomやTeamsでのオンライン経営労働相談を実施しています。
最終更新日:2026年7月13日