家族手当や住宅手当などの手当が除外賃金に当たるためには、どのような要件が必要ですか。
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各手当は費用・事情との対応関係が除外賃金該当の鍵 家族手当は扶養家族の人数、住宅手当は住宅費、通勤手当は通勤費、別居手当は単身赴任の事実と、それぞれ支給額が連動している必要があります。この対応関係がなければ除外賃金には当たりません。 |
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全社員一律定額の支給は除外賃金に当たらないリスクが高い 名称にかかわらず、家族の有無・住宅の形態・通勤の有無等と無関係に一律定額で支給している手当は、基本給の上乗せと評価され、算定基礎から除外できないリスクが高くなります。 |
目次
904の記事で解説した除外賃金の全体像・基本原則を踏まえ、本稿では、施行規則21条が列挙する各除外賃金について、具体的にどのような要件を満たせば該当するのかを、手当ごとに詳しく解説します。
会社側専門の弁護士の立場から、除外賃金に当たる手当の要件と具体例を解説します。
01家族手当・子女教育手当が除外賃金に該当する要件
家族手当が除外賃金に該当するためには、扶養家族の人数・構成に基づいて支給額が決定されるという実態が必要です。配偶者・子どもなどの扶養家族の存在を支給要件とし、その人数に応じて金額が変わる仕組みであれば、労働の対価ではなく生活補助的な性格が認められ、残業代算定の基礎から除外することが認められます。
一方で、家族手当という名称でも、家族の有無・人数と無関係に全社員一律で支給されている場合や、独身者にも同額が支払われている場合は、除外賃金には該当しません。この場合、実質的に基本給の一部として評価され、残業代算定の基礎に含めなければなりません。子女教育手当も同様に、子どもの就学状況や人数に応じて支給する場合は除外賃金になり得ますが、就学状況と無関係な定額支給は除外賃金に当たりません。支給要件と実態の整合性を確認することが重要です。
02通勤手当・別居手当が除外賃金に該当する要件
通勤手当が除外賃金に認められるためには、実際の通勤に要する費用を補填する性質が必要です。通勤距離や交通機関の費用に応じて算出されている場合には、労働の対価ではなく通勤費補填として評価され、残業代算定の基礎から除外できます。
しかし、通勤距離・交通費と無関係に定額で支給されている場合や、在宅勤務者にも支給されている場合には、除外賃金には該当しないリスクがあります。「通勤の有無にかかわらず支給される」という実態は、通勤費補填の趣旨と矛盾します。別居手当については、転勤命令等による単身赴任で家族と別居を余儀なくされた労働者に対し、二重生活費用の補填として支給されている場合は、除外賃金に該当し得ます。別居の事実と支給の連動性が重要であり、別居の有無と関係なく支給されている場合は除外賃金には当たりません。
03住宅手当が除外賃金に該当する要件
住宅手当が除外賃金として認められるためには、住宅に要する費用(家賃・住宅ローン等)と支給額の間に対応関係があることが必要です。例えば、賃貸か持家かで支給額が異なる場合や、家賃額に応じて支給額が変わる場合は、住宅費補填としての性格が認められ、除外賃金に該当する余地があります。
一方で、住宅の形態にかかわらず全員に一律定額を支給している場合は、住宅費と無関係な基本給の上乗せとして評価されやすく、除外賃金には当たらないと判断されるリスクがあります。また、勤続年数や職位に応じて住宅手当が決まっている場合は、住宅費補填の趣旨が弱く、労働の対価的性格が強いと評価される可能性があります。実務上、最も多い誤解は「住宅手当という名称にすれば除外できる」という認識です。住宅費との対応関係を具体的に説明できるかどうかが、除外賃金と認められる鍵です。既存の支給基準が住宅費と結び付いているかを改めて確認してください。
04臨時に支払われた賃金・賞与等が除外賃金に該当する要件
893の記事で解説した「臨時に支払われた賃金」が除外賃金に該当するためには、支給事由の発生がまれであり、恒常的に支払われる性質のものでないことが必要です。典型例としては、結婚祝金・出産祝金・病気見舞金・災害見舞金などが挙げられます。これらは労働者の個人的事情に基づき例外的に支払われるため、残業代算定の基礎から除外できます。
しかし、「臨時」という名称や位置付けであっても、毎月支給されていたり、一定条件を満たせば継続的に支給される仕組みになっている場合は、恒常的賃金と評価され除外賃金には当たりません。実態として常態化している支給は除外できないことを、経営者・人事担当者は認識しておく必要があります。894の記事で解説した年俸制の賞与のように、1か月を超える期間ごとに支払われる賃金(賞与等)は法律上の除外賃金として認められていますが、名称が賞与でも、実質的に毎月賃金の分割払いとなっている場合や、支給額・条件が厳格に固定されて月例賃金と変わらない実態がある場合には、除外賃金とは認められないおそれがあります。
05会社側が押さえておくべき視点
会社側としては、各手当について、支給の名称ではなく「何と連動して支給されているか」を客観的に確認することが重要です。家族手当なら扶養家族の人数、住宅手当なら住宅費、通勤手当なら通勤費、別居手当なら別居の事実という、それぞれの実質的な連動性を、支給規程・実際の運用の両面から点検してください。
一律定額で支給している手当がある場合には、除外賃金としての取扱いを継続するリスクを認識したうえで、算定基礎に含める運用に切り替えるか、支給基準を実費・実態と連動する形に見直すかを検討することをお勧めします。
06よくある質問(FAQ)
Q. 独身者にも同額を支給している「家族手当」は除外賃金になりますか。
なりません。扶養家族の人数・構成と連動していない一律支給は、生活補助的な性格が認められず、除外賃金に該当しません。
Q. 賃貸か持家かで金額が異なる住宅手当は、除外賃金になりますか。
住宅費との対応関係が認められ、除外賃金に該当する余地があります。全員一律定額の支給とは異なり、住宅費補填としての性格が認められやすくなります。
Q. 毎月支給している「臨時手当」は除外賃金になりますか。
なりません。名称が「臨時」であっても、毎月支給される等、恒常的な支給実態があれば、恒常的賃金と評価され除外賃金には当たりません。
監修者
弁護士法人四谷麹町法律事務所 代表弁護士 藤田 進太郎
東京大学法学部卒業。2003年弁護士登録。日本弁護士連合会会員労働法制委員会委員・事務局次長・最高裁行政局との労働審判制度に関する協議会協議員、第一東京弁護士会労働法制委員会委員・研修部会副部会長、経営法曹会議会員・第112回経団連労働法フォーラム報告担当者、労働審判員連絡協議会特別会員、日本労働法学会会員、東京麹町ロータリークラブ会員・2023-24年度幹事。
講演・著作 / 「会社経営者のための問題社員対応講座」(YouTube)
日本全国各地の会社経営者の皆様へ
弁護士法人四谷麹町法律事務所代表弁護士の藤田進太郎です。私は、労働問題のストレスから会社経営者の皆様を解放したいという強い思いを持っており、日本全国各地の会社経営者のために、問題社員、退職勧奨、労働審判、残業代トラブルなどの労働問題の予防解決に当たっています。除外賃金の判定・給与制度の見直しでお困りでしたら、弁護士法人四谷麹町法律事務所にご相談ください。事務所会議室での経営労働相談のほか、ZoomやTeamsでのオンライン経営労働相談を実施しています。
最終更新日:2026年7月13日