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懲戒事由は就業規則に明確に定め、合理的な限定解釈が加えられる 懲戒処分が有効となるには、まず懲戒事由を就業規則に明確に定める必要があります。「その他これに準ずる場合」といった包括条項も、合理的な限定解釈が加えられるのが通常です。 |
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懲戒当時に認識していなかった非違行為は、原則として追加主張できない 懲戒当時に使用者が認識していなかった非違行為は、特段の事情がない限り、当該懲戒の有効性を根拠付けることはできません(山口観光事件、最高裁平成8年9月26日判決)。 |
目次
788の記事で解説した懲戒処分の3要件のうち、最初に検討すべきなのが「懲戒処分事由該当性」です。労働者の行為が、就業規則に定める懲戒事由に該当していなければ、そもそも懲戒処分を行うことができません。
会社側専門の弁護士の立場から、懲戒処分事由該当性の判断基準を解説します。
01懲戒事由の明確な規定と限定解釈
懲戒処分が法的に有効とされるためには、まず、懲戒事由を就業規則に明確に定める必要があります。ただし、懲戒事由が就業規則に定められた場合であっても、当該行為が懲戒事由に該当するか否かの判断において、合理的な限定解釈を加えることが多くあります。また、一般の就業規則には、列記された懲戒事由の末尾に「その他、これに準ずる場合」という条項が置かれていることが多いですが、このような規定についても、合理的な限定解釈が加えられるのが通常です。就業規則に文言があるからといって、あらゆる非違行為に機械的に当てはめられるわけではありません。
02遡及適用・二重処分の禁止
新たに設けた懲戒規定を、それ以前の行為に適用することはできません。また、過去に懲戒の対象となった行為について、重ねて処分を行うこともできません。過去において懲戒の対象となった行為と、新たな対象行為との間に社会的同一性ないし関連性が認められる場合には、当該懲戒処分が無効とされることがあります。
03時間の経過による社会的相当性の喪失
個別の事実に関する処分であっても、時間の経過により企業秩序が回復していたり、「もう懲戒処分は行わないであろう」という労働者の期待権を侵害する場合には、処分の社会的相当性を欠くことを理由に無効とされることもあります。非違行為の発覚から処分までの期間が長期化すると、その分、処分の有効性が争われるリスクが高まる点に注意が必要です。
04懲戒後に判明した非違行為の扱い(山口観光事件)
懲戒処分後に新たに判明した非違行為を、使用者が懲戒事由として主張できるかも、実務上重要な論点です。この点について、山口観光事件(最高裁第一小法廷平成8年9月26日判決)は、懲戒当時に使用者が認識していなかった非違行為は、特段の事情がない限り、当該懲戒の有効性を根拠付けることはできないと判示しました。懲戒処分は、あくまでその時点で認識・告知された非違行為との関係で判断されるべきものであり、後から見つかった別の理由を、事後的に持ち出して正当化することは、原則として許されません。
05認識していた非違行為の追加主張(富士見交通事件)
もっとも、懲戒当時に使用者が認識していた非違行為については、告知された非違行為と実質的に同一性を有するものや、同種・同類型、密接に関連するものと認められる場合には、当該懲戒処分の有効性を根拠付けることができるとされています。解雇時に認識はしていたものの、多岐にわたるために通告しなかった事実を理由とする懲戒解雇が有効とされた例があります(富士見交通事件、東京高裁平成13年9月12日判決)。「知らなかった」場合と「知っていたが告知しなかった」場合とで、扱いが異なる点がポイントです。
06会社側が押さえておくべき視点
会社側としては、懲戒処分を検討する際に、懲戒処分前の事実調査を徹底し、把握している非違行為はできる限り懲戒理由として明示しておくことが重要です。後から新たな非違行為が判明した場合、山口観光事件の判断枠組みにより、これを当初の懲戒の理由として追加主張することは原則としてできません。
「懲戒処分後に別の問題行動が発覚したので、それも懲戒理由に加えられる」という理解は、原則として誤りです。事実調査が不十分なまま処分を急ぐと、後になって重要な事情を主張できなくなるリスクがあることを認識しておく必要があります。
07よくある質問(FAQ)
Q. 懲戒解雇した後に、別の非違行為が発覚しました。それも解雇理由に加えられますか。
原則として加えられません。懲戒当時に使用者が認識していなかった非違行為は、特段の事情がない限り、当該懲戒の有効性を根拠付けることはできません(山口観光事件)。
Q. 認識していたが通告しなかった事実は、後から主張できますか。
告知した非違行為と実質的に同一性を有するもの、同種・同類型、密接に関連するものと認められれば、主張できる場合があります(富士見交通事件)。認識の有無が決定的な違いです。
Q. 非違行為の発覚から時間が経ってから懲戒処分をしても問題ありませんか。
問題があり得ます。時間の経過により企業秩序が回復していたり、懲戒処分を行わないという期待権を侵害する場合には、処分の社会的相当性を欠くとして無効とされることがあります。
監修者
弁護士法人四谷麹町法律事務所 代表弁護士 藤田 進太郎
東京大学法学部卒業。2003年弁護士登録。日本弁護士連合会会員労働法制委員会委員・事務局次長・最高裁行政局との労働審判制度に関する協議会協議員、第一東京弁護士会労働法制委員会委員・研修部会副部会長、経営法曹会議会員・第112回経団連労働法フォーラム報告担当者、労働審判員連絡協議会特別会員、日本労働法学会会員、東京麹町ロータリークラブ会員・2023-24年度幹事。
講演・著作 / 「会社経営者のための問題社員対応講座」(YouTube)
日本全国各地の会社経営者の皆様へ
弁護士法人四谷麹町法律事務所代表弁護士の藤田進太郎です。私は、労働問題のストレスから会社経営者の皆様を解放したいという強い思いを持っており、日本全国各地の会社経営者のために、問題社員、退職勧奨、労働審判、残業代トラブルなどの労働問題の予防解決に当たっています。懲戒処分の実施でお困りでしたら、弁護士法人四谷麹町法律事務所にご相談ください。事務所会議室での経営労働相談のほか、ZoomやTeamsでのオンライン経営労働相談を実施しています。
最終更新日:2026年7月13日