弾力的な労働時間制度にはどのようなものがありますか?
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弾力的な労働時間制度には大きく3種類がある ①変形労働時間制、②フレックスタイム制、③みなし労働時間制(裁量労働制・事業場外みなし労働時間制)の3種類が主な弾力的労働時間制度です。 |
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変形労働時間制は繁閑差のある業種で特に有効 変形労働時間制は、一定期間の平均として1週40時間を超えない範囲で、繁忙期に長く・閑散期に短く労働時間を配分することができます。1週間・1か月・1年の単位があります。 |
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みなし労働時間制は実労働時間の把握が困難な業務に対応する制度 裁量労働制(専門業務型・企画業務型)と事業場外みなし労働時間制は、使用者による厳格な労働時間管理になじまない業務・状況に対応するために設けられた制度です。いずれも適用要件を満たすことが必要です。 |
目次
01弾力的な労働時間制度とは
労基法は、1日8時間・1週40時間を法定労働時間として定めています(労基法32条)。これを超えて労働させる場合は、36協定の締結・届出と時間外割増賃金の支払いが必要となります。
ただし、業種・業務の特性に応じて、法定労働時間を弾力的に運用することを認める制度が設けられています。これが「弾力的な労働時間制度」です。主な制度として、変形労働時間制・フレックスタイム制・みなし労働時間制の3種類があります。
いずれも適切な要件を満たして導入・運用することが必要であり、名称だけ整えて実態が伴わない場合には無効・違法となるリスクがあります。
02変形労働時間制
変形労働時間制とは、一定の期間につき1週間当たりの平均所定労働時間が法定労働時間(1週40時間)を超えない範囲内で、特定の週や日について1週40時間または1日8時間の法定労働時間を超えて労働させることを可能とする制度です(労基法32条の2〜4)。
繁忙期と閑散期のある事業において、繁閑の時期がおおむね特定されている場合に利用される制度です。変形の単位期間として、以下の3種類があります。
変形労働時間制の種類
1週間単位の変形労働時間制(労基法32条の5)
小売業・旅館・料理店・飲食店など、常時30人未満の労働者を使用する事業に限定して適用される。
1か月単位の変形労働時間制(労基法32条の2)
1か月以内の一定期間を平均して1週40時間以内となるよう、就業規則等で労働時間を設定する。就業規則または労使協定が必要。
1年単位の変形労働時間制(労基法32条の4)
1か月超1年以内の期間を平均して1週40時間以内となるよう設定する。労使協定の締結と労基署への届出が必要。
03フレックスタイム制
フレックスタイム制とは、労働者が一定の単位期間(清算期間。最長3か月)の中で一定時間数の労働をすることを条件として、1日の始業・終業時刻を労働者の自由な決定に委ねる制度です(労基法32条の3)。
例えば、コアタイム(必ず出勤する時間帯)とフレキシブルタイム(出退勤を自由に選べる時間帯)を設け、清算期間内の総労働時間を満たす範囲で働き方を柔軟に設定できます。労使協定の締結が必要であり、清算期間が1か月を超える場合は労基署への届出も必要です。
清算期間内の実労働時間が不足した場合は賃金控除が生じ、超過した場合は残業代の支払いが必要となります。フレックスタイム制の導入によって残業代が一切不要になるわけではありません。
04みなし労働時間制(裁量労働制)
裁量労働制とは、業務の性質上、使用者による厳格な労働時間管理になじまないことを理由に、労働時間の具体的配分を労働者に委ね、実際の労働時間については労使協定等で定めた時間を労働したものとみなす制度です(労基法38条の3・38条の4)。
裁量労働制には2種類あります。
裁量労働制の2種類
専門業務型裁量労働制(労基法38条の3)
研究開発・情報処理・デザイン・アナリスト等の特定の専門業務(省令で限定列挙)に適用できる。労使協定の締結・届出が必要。
企画業務型裁量労働制(労基法38条の4)
事業の運営に関する事項についての企画・立案・調査・分析の業務に適用できる。対象は本社・本店等の中枢部門に限られる。労使委員会の決議・届出が必要。
みなし時間に対する残業代は不要ですが、深夜・休日労働は別途割増賃金の支払いが必要です。また、健康確保措置・苦情処理措置の整備が義務付けられています。
05みなし労働時間制(事業場外みなし労働時間制)
事業場外みなし労働時間制とは、労働者が労働時間の全部または一部について事業場外で業務に従事した場合において、労働時間を算定することが困難なときは、所定労働時間(または通常必要とされる時間)を労働したものとみなす制度です(労基法38条の2)。
外回り営業など、会社の管理が及ばない場所で業務を行い、労働時間を正確に把握できないケースで活用されます。ただし、スマートフォンのGPS・頻繁な報告義務・細かな業務指示等によって実質的に労働時間が管理されている場合は適用されません。
また、在宅勤務(テレワーク)については、事業場外に該当するものの、通常は使用者が労働時間を把握・管理できる状態にあるとして、みなし労働時間制の適用が認められないケースが多いため、注意が必要です(511番参照)。
06各制度の比較と選択のポイント
各制度はそれぞれ異なる業務・状況に対応しています。どの制度を選択すべきかは、自社の業態・業務内容・労働時間の実態によって異なります。
各制度の主な特徴と適した業種・状況
変形労働時間制:繁閑差がある業種(小売・サービス・製造等)で、繁忙期に多く・閑散期に少なく労働時間を配分したい場合に有効。
フレックスタイム制:始業・終業時刻を柔軟にしたい場合(開発・研究・事務職等)に有効。清算期間内の総労働時間を満たせばよい。
裁量労働制:業務の遂行方法・時間配分を労働者の裁量に委ねることが適した専門業務・企画業務に限定して利用できる。
事業場外みなし労働時間制:会社の管理が及ばない場所での業務(外回り営業等)で労働時間の算定が困難な場合に利用できる。
どの制度も、法令上の要件を満たした正しい設計と運用が前提です。制度の名称だけを形式的に整えても、実態が伴わない場合は無効と判断されるリスクがあります。導入・運用に不安がある場合は、使用者側弁護士または社会保険労務士に相談することをお勧めします。
監修者
弁護士法人四谷麹町法律事務所 代表弁護士 藤田 進太郎
東京大学法学部卒業。2003年弁護士登録。日本弁護士連合会会員労働法制委員会委員・事務局次長・最高裁行政局との労働審判制度に関する協議会協議員、第一東京弁護士会労働法制委員会委員・研修部会副部会長、経営法曹会議会員・第112回経団連労働法フォーラム報告担当者、労働審判員連絡協議会特別会員、日本労働法学会会員、東京麹町ロータリークラブ会員・2023-24年度幹事。
講演・著作 / 「会社経営者のための問題社員対応講座」(YouTube)
日本全国各地の会社経営者の皆様へ
弁護士法人四谷麹町法律事務所代表弁護士の藤田進太郎です。私は、労働問題のストレスから会社経営者の皆様を解放したいという強い思いを持っており、日本全国各地の会社経営者のために、問題社員、労働審判、残業代トラブルなどの労働問題の予防解決に当たっています。問題社員、労働審判、残業代トラブルでお悩みでしたら、弁護士法人四谷麹町法律事務所にご相談ください。事務所会議室での経営労働相談のほか、ZoomやTeamsでのオンライン経営労働相談を実施しています。
Q&Aよくある質問
Q1. 弾力的な労働時間制度を導入すれば残業代が不要になりますか。
A. なりません。変形労働時間制の場合、対象期間を平均して1週40時間を超える部分は時間外労働となり割増賃金が発生します。フレックスタイム制でも清算期間内の実労働時間が総枠を超えた部分は残業代が必要です。みなし労働時間制でも、みなし時間を超えて実際に働かせた場合(深夜・休日労働等)は別途割増賃金が必要です。「制度を入れれば残業代ゼロ」という理解は誤りであり、この誤解が残業代未払い請求の原因になるケースが多いです。
Q2. 複数の制度を組み合わせることはできますか。
A. 一定の範囲で組み合わせることはできます。例えば、部門によって制度を分けたり、一般社員には1か月単位の変形労働時間制、研究開発部門には専門業務型裁量労働制を適用するといったことが可能です。ただし、個々の制度の要件をそれぞれ満たすことが必要であり、制度の選択と適用対象の範囲を就業規則に明確に定めておくことが重要です。
Q3. 制度を導入した後に実態と合わなくなった場合、どうすればよいですか。
A. 実態と書面が乖離している状態は、制度が無効と判断されたり、労基署の是正指導を受けるリスクがあります。制度を変更する場合は、就業規則の改定・労使協定の再締結・届出の手続きを経ることが必要です。実態に合わせた制度の見直しを定期的に行うことをお勧めします。弁護士または社会保険労務士に相談して、現行の運用を点検することも重要です。
最終更新日:2026年2月25日