この記事の結論(経営者が押さえるべき点)

■ パート・アルバイトにも有給付与は「法的義務」

正社員との違いは日数(比例付与)だけであり、付与そのものは必須です。「パートには有給がない」という運用は即座に是正が必要です。

■ 週の労働日数に応じた正確な日数管理が不可欠

週1日勤務であっても有給は発生します。比例付与表に基づき、雇い入れ時期や出勤率に応じた適正な日数を管理することがリスク回避の第一歩です。

■ 時季変更権の行使には「高いハードル」がある

会社には時季変更権が認められていますが、裁判例では厳格に解釈されます。安易な拒否は避け、事前の調整ルールを整備することが重要です。

1. パートタイム労働者に対する有給休暇の付与要件

 実務において「パートやアルバイトに有給休暇は不要」と考えている経営者が稀にいらっしゃいますが、これは明確な誤りです。労働基準法上、パートタイム労働者であっても、以下の2つの要件を満たせば当然に有給休暇が発生します。

  • 継続勤務要件:雇い入れの日から6か月が経過していること
  • 出勤率要件:算定期間の全労働日の8割以上出勤していること

 この要件自体は正社員と全く同じです。会社側弁護士として強調したいのは、この「全労働日」の計算です。シフト制の場合、あらかじめ契約やシフト表で定められた労働日を基準に8割の出勤を判定します。この管理を怠ると、付与すべき時期に付与していないという法令違反を招くことになります。

2. 比例付与による付与日数の算出ルール

 パートタイム労働者の場合、労働時間や日数が正社員より少ないため、その日数に応じて有給休暇を付与する「比例付与」という仕組みが適用されます。

 具体的には、以下の表の通り、週所定労働日数や年間の労働日数に応じて付与されます。経営者は、自社のスタッフがどの区分に該当するかを正確に把握しなければなりません。

週所定日数 0.5年 1.5年 2.5年 3.5年 4.5年 5.5年 6.5年〜
4日 7日 8日 9日 10日 12日 13日 15日
3日 5日 6日 6日 8日 9日 10日 11日
2日 3日 4日 4日 5日 6日 6日 7日
1日 1日 2日 2日 2日 3日 3日 3日

※週所定労働時間が30時間以上、または週所定労働日数が5日以上の場合は、正社員と同じ付与日数となります。

3. 会社側が知っておくべき「取得方法」と「時季変更権」

 有給休暇は、労働者が請求した時季に与えるのが原則です。会社側が「今は忙しいからダメだ」と安易に拒否することはできません。しかし、会社には「時季変更権」(労働基準法第39条第5項)が認められています。

 これは、請求された時季に休暇を与えることが「事業の正常な運営を妨げる場合」に限り、他の時季に振り替えることができる権利です。ただし、裁判例ではこの「事業の正常な運営を妨げる」という要件はかなり厳格に判断されます。単に「代わりの人がいない」「人手不足である」というだけでは認められないケースが多い点に注意が必要です。

 会社経営者としての防御策は、就業規則に「有給休暇取得の際は〇日前までに申し出ること」といった事前の申請ルールを明記し、業務の調整が可能な体制を整えておくことです。適法な時季変更権の行使には、会社側が代替要員の確保などに最善を尽くしているという事実が必要となります。

4. まとめ―トラブルを未然に防ぐために

 パートタイム労働者の有給休暇管理を疎かにすると、未払賃金の問題だけでなく、労働局からの是正勧告やSNSでのレピュテーションリスクを招くおそれがあります。特に昨今は、パート労働者であっても自身の権利を正確に把握しているケースが増えています。

 「比例付与の正確な把握」と「取得ルールの明確化」は、安定した企業経営に欠かせない要素です。自社の有給管理体制に不安がある、あるいは具体的な時季変更権の行使を検討しているといった場合には、紛争化する前に専門家である弁護士への相談をお勧めいたします。

 

弁護士 藤田 進太郎
監修者

弁護士法人四谷麹町法律事務所 代表弁護士 藤田 進太郎

東京大学法学部卒業。2003年弁護士登録。日本弁護士連合会会員労働法制委員会委員・事務局次長・最高裁行政局との労働審判制度に関する協議会協議員、第一東京弁護士会労働法制委員会委員・研修部会副部会長、経営法曹会議会員・第112回経団連労働法フォーラム報告担当者、労働審判員連絡協議会特別会員、日本労働法学会会員、東京麹町ロータリークラブ会員・2023-24年度幹事。
講演・著作 /  「会社経営者のための問題社員対応講座」(YouTube)

日本全国各地の会社経営者の皆様へ

弁護士法人四谷麹町法律事務所代表弁護士の藤田進太郎です。私は、労働問題のストレスから会社経営者の皆様を解放したいという強い思いを持っており、日本全国各地の会社経営者のために、問題社員、労働審判、残業代トラブルなどの労働問題の予防解決に当たっています。問題社員、労働審判、残業代トラブルでお悩みでしたら、弁護士法人四谷麹町法律事務所にご相談ください。事務所会議室での経営労働相談のほか、ZoomやTeamsでのオンライン経営労働相談を実施しています。

最終更新日:2026年3月1日

パートの有給休暇に関するよくある質問(Q&A)

Q1. パートやアルバイトにも有給休暇を与える義務はありますか?

A1. はい、あります。週1日勤務であっても、6か月以上継続して勤務し、全労働日の8割以上出勤していれば、法律に基づいた日数の有給休暇を付与しなければなりません。

Q2. シフト制で勤務日が一定でない場合、付与日数はどう決まりますか?

A2. 週所定労働日数が定まっていない場合は、直近1年間の実績(年間所定労働日数)に基づいて付与日数を決定します。例えば年間の労働日数が73日〜120日の場合は、週2日勤務の区分が適用されます。

Q3. 有給休暇取得日の賃金はいくら支払えばよいですか?

A3. 原則として「その日に勤務した場合に支払われるべき通常の賃金」を支払います。パートの方であれば、「その日の契約時間 × 時給」で算出するのが一般的です。